「殺しに来てると思った」 怪物・井上尚弥の驚異的な強さを元世界王者が語る

ボクシングの元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者・内山高志のYouTubeチャンネル「内山高志KOチャンネル」で、井上尚弥と10ラウンドの激闘を演じたボクシングの元WBA・IBF世界ライトフライ級王者・田口良一が肌で感じた井上の強さを解説した。

内山高志KOチャンネル/YouTube

内山が「まず、井上尚弥はどのくらい強い?」と直球の質問を投げかけると、田口は対戦をする1年ちょっと前にスパーリングのオファーを受けたことがあると振り返る。当時の井上は高校を卒業したばかりで、一方の田口は実質日本1位のランカーだったため、自信を持って引き受けたところ、その実力に驚愕したという。

もともとは4ラウンドのスパーリングが予定されていたが、田口いわく「1ラウンドでダウンを奪われて、2ラウンドも奪われて、結局3ラウンドで予定より早く(打ち切られた)」と、4ラウンド待たなかったことを明かす。そして「この人(井上)は、自分を殺しに来てるなと思ったんです」と当時の思いを吐露した。

スパーでは「1ラウンド目からガンガン来て、パンチも硬いですしスピードもあるし、隙を与えてくれないんですよ。ちょっと休みたいと思ったんですけれど……」と振り返った田口は、「早く終わっちゃって、それで裏でちょっと泣きました」と告白すると、内山は苦笑い。「こんな選手がプロに来るんだ」と衝撃を受けた田口は、「今後のボクシング人生をどうしよう」と絶望的な思いまで抱いたのだそう。

そんな“前哨戦”を経て、田口が日本チャンピオンのときに井上がランキング1位で挑戦してきたのは2013年。内山は「スパーリングでボコボコにされて、それでも対戦を受けるっていうのは格好いい」と、田口にリスペクトしつつ「挑戦が来たときに勝てると思ったの? それとも『来たからには逃げちゃいけない』みたいな?」と、当時の心境を尋ねる。

すると田口は「分が悪いのは分かっていた」と、周囲の井上君がKOして当たり前という空気は感じ取っていたものの「このままじゃ終われない」という気持ちがあり、試合でリングインしたときには「自分だったらいける」という自信を持って挑んだそう。試合が始まると、田口はスパーリングでの経験を活かしてさらにその上のパンチ力がくると想定して、攻撃を受けても、「そこまでのパンチ力じゃない」と自分に言い聞かせて、これが功を奏したという。

田口はこの試合に挑むうえで、井上の左フックに対してのカウンターを重点的に狙っていたそう。実際にそれが何度もヒットする場面があったことから「もしかしたら(行ける)」という思いもあったという。コンディションもよく、気が付けば8ラウンドが終わっていたそうだが、少し押され気味の印象を持っていたことから「倒さなきゃ勝てない」という思いで、終盤戦に挑んだそう。試合の後半では井上にたびたびパンチを当てていた田口だが、タイミングの合うパンチが当たっても井上がグラつくことがなかったことから、倒せる確信は持てなかったそう。結果、田口は井上からダウンを奪うまでには至らず、判定負けを喫している。

内山は、パンチが効いたようなそぶりを見せた井上の試合はノニト・ドネア戦ぐらいだったとして、「スピードもあるし、パンチもあるし、耐久力もあるし、スタミナもある、全部持っている」と絶賛。「そう考えたら、だから『誰が倒すんだろう?』っていうイメージが今のところ掴めないよね」と続けると、「スーパーバンタムもそのうちいくでしょう」と、今後多くの階級を掴んでいくことを予想していた。

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