映画制作を革新 常識を破壊した「キャプテン・マーベル」と「ブラックパンサー」

『アバター』(2009年)の記録を破り、映画興行収入歴代1位となった『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)。マーベル映画の興行収入は累計279億ドルを超えて世界で最も稼ぎ出すシリーズとなり、マーベルとマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の快進撃は目下とどまることを知らない。

だが、彼らが今日の隆盛を極めるまでには苦難の歴史がある。1996年には一度倒産にも追い込まれた。同社はいかにしてドン底の状況を乗り越え、世界で最も成功した企業の1つにまでのぼりつめたのだろうか。それを記したのが『MARVEL 倒産から逆転no.1となった映画会社の知られざる秘密』(著:チャーリー・ウェッツェル、ステファニー・ウェッツェル 訳:上杉隼人/すばる舎)である。

マーベルが映画作りにおいて最も大切にしていることの1つとして、本書では「長年マーベルのスーパーヒーローに親しんできたコミック・ファンの思い入れを壊すことなく、同時にマーベルのキャラクターを知らない人たちも惹きつける魅力的な作品でなければならない」という考え方にフォーカスをあてている。

マーベルが目指すのは、脚本、キャスティング、撮影・編集技術といった側面だけでなく、映画制作そのものの革新だ。直近の作品に見るその顕著な例が『ブラックパンサー』(2018年)と『キャプテン・マーベル』(2019年)で実現させた“人種とジェンダーの壁の破壊”である。

『ブラックパンサー』はほぼ全員アフリカ系アメリカ人のキャストとスタッフによって制作されており、監督のライアン・クーグラーはマーベル史上最年少にして初のアフリカ系監督となった。アフリカのワカンダの理想的な社会を舞台に、キャラクターたちが社会的不公平に対し、孤独・革命・共感を持って対処していく様を描いたこの作品は、最終的に13億ドルの興行収入を突破。2019年のアカデミー賞では作品賞こそ逃したものの、衣装デザイン賞、美術賞、作曲賞を受賞している。

ディズニー・スタジオ公式/YouTube

そして『キャプテン・マーベル』はマーベル初の女性スーパーヒーロー映画である。主役にブリー・ラーソンを迎え、監督でもこれまたマーベル初となる女性監督としてアンナ・ボーデンが務めた。脚本家、プロデューサー、音楽と衣装と美術の責任者に至るまで女性陣が固めた同作品は、10億ドルを超える興行収入を上げた。キャプテン・マーベルの誕生物語も彼女の超人的パワーも映画ファンに受け入れられ、“新時代の女性ヒーロー”としてマーベル映画に欠かせない存在となった。

ディズニー・スタジオ公式/YouTube

マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギは言う。「誰もまったく予想できない、これまでのパターンや常識を壊すようなものを作ることで、多くのお客さんにこれからも映画館に足を運んでもらいたいんだ」と。マーベルがさらなる創造力を発揮し、今の映画制作を続けていく限り、彼らの可能性はどこまでも広がっていくだろう。

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