大コケした“史上最悪のSF映画”から、ピクサーが生まれた

『スパイダーマン』『アイアンマン』『アベンジャーズ』をはじめ、数々の人気ヒーローを世に送り出してきたアメコミの老舗「MARVEL(マーベル)」。

Marvel Entertainment/YouTube

いまや興行収入2兆3000億ドルを稼ぎ出す映画会社を作り上げた彼らだが、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)が確立する以前、手痛すぎる大失敗に終わった作品があるのをご存じだろうか。

マーベルの人気コミックを実写化した『ハワード・ザ・ダック 暗黒魔王の陰謀』(1986年)は、巨匠ジョージ・ルーカスが製作総指揮を務めたSF映画だ。1970年代からこのキャラクターの映画を作りたいと考えていたルーカスの念願叶った作品でもある。しかし、地球に紛れ込んだアヒルの姿をしたハワードが宇宙の魔王と対決する活躍を描いたこの映画は、原作とは世界観がだいぶ異なっており、のちに「史上最悪のSF映画」の1つとして名を残すこととなる。

『MARVEL 倒産から逆転no.1となった映画会社の知られざる秘密』(著:チャーリー・ウェッツェル、ステファニー・ウェッツェル 訳:上杉隼人/すばる舎)によれば、同作の制作費3700万ドルに対し、興行成績はアメリカとカナダで1680万ドル、全世界で3797万ドルだったという。配給元のユニバーサルがプロモーションに費やした800万ドルを合わせると、見事なまでの大コケだ。

これにより、ジョージ・ルーカスも経済的に苦しい状況に追い込まれた。当時の彼は5000万ドルをかけてスカイウォーカー・ランチ(ルーカスフィルム本社のある広大な仕事場)を作り上げたばかりで、その建設費用に『ハワード・ザ・ダック』の興行収入を充てるつもりだったのだ。目論見が外れたルーカスは、別の手段で金銭の工面をせねばならなくなった。

そして彼は所有財産の一部を売却し、立ち上げたばかりのコンピューター・グラフィック会社も手放した。それを買い上げたのが、当時アップルを退社して間もないあのスティーブ・ジョブズだった。そして、その小さな会社の現在の姿こそ「Pixar(ピクサー・アニメーション・スタジオ)」である。

Pixar/YouTube

つまり、ジョージ・ルーカスと共倒れしたマーベルが、それからしばらく苦難の道を歩む羽目になる悪夢のような出来事も、映画史全体として見れば、世界一のアニメーション企業・ピクサー誕生につながるターニングポイントだったのだ。「事実は小説より奇なり」である。

TAGS