15年の沈黙を破る 活動停止していたシステム・オブ・ア・ダウンが新曲を出した理由

システム・オブ・ア・ダウン(SOAD)が、実に15年ぶりとなる新曲「Protect the Land」「Genocidal Humanoidz」をリリースした。これは2005年に2枚のアルバム『Mezmerize』『Hypnotize』をリリースして以来となる待望の楽曲だ。

System Of A Down/YouTube

この新曲誕生の背景には、彼らのルーツ・アルツァフ共和国で起きた紛争の激化があった。アルツァフ共和国は、アルメニアとアゼルバイジャンの2国間で長い間紛争の舞台となってきた因縁の地。2020年に入ってこの紛争が突然激化すると、10月の停戦合意を経ても激しい戦闘は続き、ついにロシアが介入。11月10日にようやく完全停戦合意がなされたのである。

この結果により、彼の地を支配していたアルメニアが(国際法上はアゼルバイジャンの領土)、アルツァフ共和国を名前ごと失うことになる。アゼルバイジャンを支援するトルコとの連合軍が勝利したことによって、アルツァフ共和国(アルメニア表記)はロシア語由来のナゴルノ・カラバフ自治州としてひとまず統一された。

そしてすぐに多くのアルメニア系住民が土地を追われることになり、アゼルバイジャンがかつての自治州を取り戻すことになった。アルメニア系の住民たちが土地を去る前に「アゼルバイジャン人に家を取られることなど堪えられない」と、自分たちの家を焼き払ったニュースは日本国内でも報道されたように、憎しみの連鎖はこれからも続いていきそうだ。

シャヴォ・オダジアン(Ba)は「俺たち個人よりもっと大きな事柄なんだ。俺たち個人のエモーション、バンド内の感情やそれぞれのエゴなんかよりも大きい」と事態の深刻さをうかがわせる。SOADはまず、サージ・タンキアン(Vo)とジョン・ドルマヤン(Dr)がやりとりを繰り返すうち、「すぐにでも何かしら行動に移さなければ」と活動再開に至ったという。

ダロン・マラキアン(Gt/Key)もこの動きにすぐ同意し、新曲2曲の歌詞と曲を書き上げて、MVを完成させた。そして制作からわずか2週間でレコード会社を通すことなく、楽曲販売サイトBandcampから自分達の手でリリースされたのだ。

シャヴォは「俺たちはそもそも友達同士だからね。一緒にクリエイティブな場に居合わせてなかったってだけで。だから久しぶりに集まった最初は変な感じだったけど、すぐに笑いあい、曲について語り、どうやって人々を支援するべきか考えた。そして、『人々を助けること』が一番大事だと皆で話したんだ」と、リリースの経緯を告白する。

サージも「アゼルバイジャンとトルコによる非人道的行為について世界の関心を喚起すること、そして支援金を集めること。それがあくまでも一番の目的なのです」と、シャヴォに全面的に同意。

ここまでの流れでご推察のとおり、ロサンゼルスで結成されたSOADのメンバーはアルメニア系アメリカ人だ。実はロサンゼルスには世界最大のアルメニア系コミュニティがある(2000年時点で16万人以上)。バンドは新曲の売り上げの全てをアルメニアの基金に納めることを約束している。

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