ボクシング界に颯爽と現れ、格闘技ファン、スポーツファンだけにとどまらない、国民的知名度を誇る圧倒的存在となった井上尚弥。“モンスター”“日本ボクシング史上最高傑作”とも呼ばれるこの若者は、間違いなくボクシングの歴史を更新することになるというより、今まさに現在進行形で更新し続けている。そんな井上が常人とは懸け離れた、計り知れないマインドを限りなく細かくリアルに綴ったのが本著『勝ちスイッチ』(井上尚弥 著/秀和システム 刊)だ。

ただただ強く、ベストの自分であろうとする姿勢と、数々の試合、未来のことについて語る井上の言葉には、体験記やエッセイの軽妙さに加えて、もはや哲学者による指南書のような趣まで感じられるのが面白い。井上の思考から流れ出る言葉は、有益さと、うなずきと共感の連続なはずだ。
例えば、井上は規格外の強さ、周囲からの評価の高さに反して、自分はあっさりと“天才ではない”と言う。天才と呼ばれるほどのセンスなどないことを「かなり早い段階から分かっていた」と説明するのだ。それゆえ次の戦いのため、必要な作業にひたすら打ち込むのだろうが、読み進めて行くと、それはいわゆる“謙虚”さや“謙遜”とは全く違う姿勢であることが分かる。
“自分はまだまだです”などと、その場の謙譲のために口走ることは誰にでもできる。だが、優れた求道者が皆そうであるように、井上はただ、自分にはやらなければならないことがまだまだある、と冷静に前を見据えているだけなのだ。そこには慢心も謙遜もない。
本著でとにかく一貫しているのは、井上の“最高の状態で試合に臨みたい”という姿勢である。練習だけでなく、グローブやブーツといった装備、会見時に着用するスーツについてのことを細やかに説明する場面があるのだが、一瞬何かのフェティッシュなのかと思ってしまうほどのこだわりようだ。しかし趣味とエゴでやっているのではない。井上はただ、最高の状態で相手と拳を交わすために追求しているだけなのである。
“他人に興味がない”とまで言い切ってしまう井上だが、彼のメンタリティには、ボクシング一家に育ち、親兄弟と仲良くしっかりと歩んできたこと、多くの友人たちとの絆が貢献している。そして対戦相手には最大の敬意を持って研究し、対策して挑む。とても他人に興味がないとは思えないのだが、その真意とは。
他者への敬意や愛は、自分を最良の状態にしていることで初めて生まれるのだろうか? 他人からの評価や他人との比較は、自分がベストを尽くしていないことへのエクスキューズでしかないのではないか? 本著での井上の言葉を読んでいると、井上の思考を辿るうちに自らの内面を覗き込むことになる。
できる限りの努力と注意をこだわりを持ってリングに上がったとき、ゴングが鳴ったときの自分がどれほどなのかが楽しみだと彼は言う。そしてそこには、そこまでしなければ勝てない、相手への敬意と自分への期待がある。やはり慢心や力への欲望とは別次元の“何か”に彼は従っているのだ。その“何か”の正体も本著では次第に語られていく。
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