女の子 vs 殺人鬼 80〜90年代に量産されたスラッシャー映画をオマージュ『ホーンテッド』

ホラー映画を上映している映画館というのは、もうそれだけで一種の“お化け屋敷”なわけです。『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』はまさに映画館そのものがお化け屋敷となる、怖いけどちょっと懐かしいスラッシャー(殺人鬼)ホラー映画です。

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物語はハロウィンの夜。男2人と女4人の若者がお化け屋敷アトラクションを訪れます。アメリカではハロウィンの夜にこうした仮設のお化け屋敷アトラクションが作られるみたいです。ユニバーサル・スタジオとかのテーマパークもハロウィン期間は、夜、ホラーイベントやるでしょう?こういうお化け屋敷のことをホーンテッドハウスと言います。この映画のタイトルはまさにここから来ているわけですね。

さて主人公たちが足を踏み入れたこのお化け屋敷ですが、実は本物の殺人鬼たちが若者たちを虐殺するために作った恐怖の館でした。肝試しは一転して恐怖のサバイバル・ゲームと化します。
シンプルなプロットですが、あとは殺人鬼たちの攻撃や罠をハラハラしながら楽しむ映画です。殺人鬼たちがゾンビやゴブリン、魔女、ゴースト(ちょっと『スクリーム』っぽい)電動ノコギリ男(『悪魔のいえにえ』以降、このキャラは定番ですね)、そして、もうホラー界の定番と言えばピエロらに扮して襲ってくるので、ノリはホラー版「ジュラシック・ワールド」です(笑)殺人鬼たちの行動(若者たちを襲う)はハッキリしていますが、その動機や正体はわからず。この映画で唯一キャラ設定が深堀されているのは主人公の女の子。彼女はトラウマをかかえて生きています。というわけで一人また一人と殺人鬼たちの毒牙がかかっていき、クライマックスはこの女の子対殺人鬼たちです。

僕が冒頭“ちょっと懐かしい”と書いたのは。80-90年代にかけて量産された殺人鬼映画のパターンを踏襲しているからです。こういう殺人鬼映画はホラー映画の中でもスラッシャー(刃物を持つ人みたいな意味)映画と言われます。「悪魔のいけにえ」「ハロウィン」「13日の金曜日」「血のバレンタイン」「バーニング」「ローズマリー」「マニアック」「スクリーム」等いっぱいありました。こうした映画へのオマージュです。このところ本当に素晴らしいホラー映画が続々と公開されてホラー映画のあらたな全盛期だと思うのですが、例えば『へレディタリー/継承』『ミッドサマー』ほどトラウマにはならないし、『ゲット・アウト』『US』ほどメッセージ性があるわけではない。映画館でポッポコーンとコーラ片手に気楽に楽しむのちょうどいいホラーです。
結構残酷なシーンもありますが、思ったほどえげつなくない。スラッシャー映画ではあるけれどスプラッター(血しぶき)映画ではないです。

ところで最近のホラー映画はなんらかの理由で主人公たちがスマホを使えない、という設定を作ることがポイントです(笑)スマホが使えちゃったら助けをどこからでも呼んだりできますからね。本作も“このお化け屋敷に入るにはスマホを預けてから”ということになっており、主人公たちもスマホがない、という現代人とって非常にサスペンスな状況で殺人鬼たちと対峙することになるのです。

本作の監督コンビ(スコット・ベックとブライアン・ウッズ)は『クワイエット・プレイス』の脚本を書いた人であり、またプロデューサーのイーライ・ロスは『ホステル』『グリーン・インフェルノ』の人です。圧倒的な敵が有利な状況に閉じこめられた若者たちの脱出劇、ということではこれらの作品に通じるものがありますね。

お化け屋敷というただでさえハラハラするところをうまく使って、とても怖がらせてくれます。本作はやっぱりイベント感があるところで観た方が楽しいので、映画館で楽しんでみてください。

文・杉山すぴ豊

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