宮崎駿の企画につながる情報源は“半径3メートル以内”

Netflixが、スタジオジブリの21作品の配信権の獲得(日本、米国、カナダを除く)を発表し、大きな話題を呼んでいる。その世界中で愛されているスタジオジブリ作品を手掛けてきた敏腕プロデューサーが鈴木敏夫。 世界中で愛される名作達を高畑勲、宮崎駿両監督とともに生み出してきたスタジオジブリ成功の立役者だ。

彼の映画の作り方やその哲学、思想をつづった『ジブリの哲学ー変わるものと変わらないものー』(岩波書店)には、天才・宮崎駿について興味深いエピソードが記されている。

あれだけの巨匠でありながら、宮崎駿は食にはそれほどこだわりがないようだ。鈴木が宮崎と付き合いだすようになって数十年の間、宮崎の食事はご飯がぎゅうぎゅうに詰め込まれた奥さんの手作り弁当だという。しかもそれを箸で二つに分けて昼飯と夜飯に分けて食べるのだというから驚きだ。

毎日、おかずも大して変わらない素朴な食事を続ける宮崎のたまのご馳走が、駅前にある牛丼屋のすき焼き定食だというから親近感がわく。そんな彼は年に一度ぐらい、偉い人に誘われて食事をすると「美味しい!」を連発して本当に幸せそうな顔をするらしい。毎日美味しいものを食べて舌を麻痺させず、本当に美味しいものを感じる感性を研ぎ澄ましている。こういったところに宮崎が五感を鈍らせないコツがあるのではないかと鈴木は観察している。

ファミコンの登場を「アニメの敵だ!」と一刀両断した宮崎は、ジブリへのパソコン導入も頑なに拒んだそうだ。ワープロについては事務文書を読みやすくするという点から受け入れたのだが、パソコンについては“かちゃかちゃ”やっているだけで仕事をしている気分になるから駄目だと断じた。そんな彼にいかにして導入を了承させたのか?

宮崎は当初、デスクトップがパソコンで、ノートパソコンはワープロだという認識だったので、鈴木はジブリに投入するパソコンはすべてノート型にして宮崎にはパソコンであることを黙っていたという。異彩を放つ天才との付き合い方に鈴木の苦労が垣間見えるエピソードだ。

インターネットに関しても「くだらない」と切り捨てた宮崎駿だが、情報について無頓着なわけではない。鈴木が語るには彼が「一般教養」の入り口として大事にしている情報源は①新聞、②テレビ、③本、④ジブリを訪ねてくる旅人。

ただ、企画につながる情報源は“友人の話”と“日常のスタッフとの何気ない会話”の2つだというから面白い。「企画は半径3メートル以内にいっぱい転がっている」が口癖の宮崎は実際、『千と千尋の神隠し』のキャンペーンで鈴木とともに訪れた米国での出会いを通じて、『ハウルの動く城』のストーリーを練り上げたという。

常にアンテナを張り続け、取り込んだ情報を素晴らしい作品として描き出す宮崎駿。彼の横にいる“友人”鈴木敏夫の存在があの数々の名作を生み出したのかもしれない。

TAGS