拝啓、あの頃の裏原宿様 (シソンヌ 長谷川忍)

拝啓、裏原宿様

暑い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。
私は今年で43歳を迎えます。貴方様とはかれこれ25年以上のお付合いになりますね。よくもまぁ飽きずに通い続けているなと、自分でも感心しています。

初めて貴方に会いに行ったのは高校3年生の春休みでした。事前に数多ある雑誌のショップマップを穴が開くほど読み込んでいたため、通い慣れた道のように順調に貴方へ歩いて行けました。いつもは誌面上の世界だった場所を歩いていると興奮と緊張を往復しているようで楽しかったのを覚えています。顔もニヤけていたでしょう。
しかし田舎からやってきた私には道行く人全員が、お洒落スナップ常連に見えてしまい勝手に怯えていました。怯えつつ周りを眺めれば「あ、◯◯のパンツだ!あれは◯◯の限定だ!」と目に飛び込んで来る物が超ド級すぎて気づけばガン見しながら店に向かってました。そして裏原の住人とも言える方々が道を歩いているのにも感動して、本当はしっかりと見たいのに、自分もこの辺りの住人なんで的な顔してたのもダサかったなぁと。確実に佇まいや目の泳ぎっぷりでバレてるから、どう見たってお芋くんだからお前は、ってあの頃の俺に伝えてあげたいです。

当時はAPEやundercoverが、とにかく欲しくてNOWHEREという店に足繁く通いました。しかしいつ行っても強盗にあったかのように店内は何も商品が無く、お目当ての商品など跡形も無いのです。遠方から遥々やって来たからには何か欲しいと思うのが地方住みの弱み、当初は予定すらしていなかったステッカーやピンバッチを購入するのがやっとでした。未だに当時のステッカーやピンバッジは多少ですが手元に残っております。あの頃のステッカーやピンバッジなどは地方にいた人がほぼ所有していたのではないでしょうか。

ちなみに裏原では無い原宿エリアで貴方の学区内ブランドの偽物も掴まされたのも今となっては良い思い出だし、悔しさと恥ずかしさで悶え苦しみましたが、勉強代を払ったんだと思い込ませて、平常心を保つという妙技まで習得させていただき今は感謝しております。

いざ入店すればそこは魔法の国です。気になるアイテムを手に張り切って店員さんに「これのLサイズありますか?」これ以上ない笑顔で聞くと「そこに無いならねぇーよ」と。一瞬何が起きたのか理解するのに数秒、体感は10分ぐらいが流れ自分が発したのは「す、すみません」何で?とっさにしても何で俺が謝るの、と今なら思うかもしれませんが当時は田舎の小僧だった自分が出した答えは、俺が悪いんだサイズ確認した俺が悪いぞ、だって店員さんはお友達らしき人と談笑していたじゃないか仕事そっちのけで。それなのに俺はサイズ確認をするなんて失礼きわまりないだろ、と自分を恥じました。嘘みたいな話ですが本当にそう思っていたのです。
この経験は私だけでは無いでしょう。地方お芋は全員そう躾けされていたのです。あの頃の店員さん達は今どこにいらっしゃるんでしょうかね。同窓会的な感じで集まれたらと今でもおもっていますよ。(真顔)

今までもこれからもお世話になります。ますますのご飛躍願っております。

文・シソンヌ 長谷川忍

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