RYKEY DADDY DIRTYが究極のリアルを綴る『TELL ME BAD BABYLON』

1年の服役を経て出所し、いよいよ自身の名前を冠したアルバム『RYKEY DADDY DIRTY』をリリースしたばかりのRYKEY DADDY DIRTY。今最も注目されているラッパーの一人である彼は人を傷つけたこと、親になったこと、パートナーをシングルマザーにしてしまったことなどついて、正直に心のうちを明かしている。シャバへ戻り、RYKEYから改名し、「次の次元に行ったと思う」と自負しているが、彼は本当に変わってしまったのか?

変わったかどうかはともかく、中2で地元八王子のギャング“クリップス”のメンバーとなって以来ハードな半生を送ってきたRYKEY DADDY DIRTYにとって、このアルバムに至るまでの間はとりわけ濃かったようだ。

RYKEY - MZEE FILE/YouTube

アルバム中、そのことが最も端的に率直に表現されているトラックがこの「TELL ME BAD BABYLON」かもしれない。

“死んだ者たちの分も生きなければ”、と自ら言い聞かせ、ストレートに聴く者の心をえぐるラップ。地元と仲間たち、そして自分の半生への優しさと厳しさが入り混じったレクイエム(鎮魂歌)だ。

中でも聞く者の胸を最も打つのは“神が見てるなら俺だけは救わないでくれ”というラインだろう。自らの苦境を知りながらも、救いを求めるのではなく拒むのはなぜか?

“俺だけは救わないでくれ”は、翻せば“俺以外の仲間に救いを”とも取れる。仲間には幸せになってほしいが、自分だけは苦しくとも背負った人生と業を最後まで全うさせてほしい、ということだろう。独白のようなその決意はシンプルで深く、普遍的だ。

コメント欄には「深い」「感謝」「救われた」といった言葉が並んでおり、いかに多くのヘッズに刺さり、救いとなっているのかがわかる。愛する者の幸せを願い、そのために自分の使命を最後まで全うしたい。途中で降りるわけにはいかない。それは誰にとっても普遍的なテーマである。

このアルバムをリリースするにあたって「刑務所はラッパーにとって一番仕事が捗る精神と時の部屋である 本当に大事な物は音源だ」という名言を話していたRYKEY DADDY DIRTY。刑務所での出会いも、不在の間のシャバでの出来事も、自身や社会の変化も、家族や仲間たちとの日々も、すべてをこのアルバムに昇華した必聴の作品として仕上げてきたのはさすがのひと言。リアルなヒップホップとはRYKEY DADDY DIRTY自身のことなのかもしれない。

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