格闘技ファンの夢「武尊 vs 那須川天心」 ゴングがなる瞬間を夢見て待とう

悪魔の2020年最後の日である大晦日、激闘と激動のRIZIN.26を終え、少し時が経った。今、改めてRIZIN.26を思い返すと色んな事が起こり過ぎてリアルタイムでは整理する事が難しかったが幾許かの時が経ち、落ち着きを取り戻し思い返して思いに耽ると改めて凄い大会だったと噛み締める。

あの日、ついに山が動いたのだ… そして、その山は富士山だ。

「武尊vs那須川天心」

“立ち技”を愛する令和格闘ファンの幻の夢物語… その夢は何度、悪夢になりかけただろうか?
本人達の思いは虚しく、実現しない可能性の方が高かった。団体間のデリケートな問題は長年、格闘技ファンを悩ませるがいつしかそんな事に慣れてしまい夢じゃなく現実を見る事が普通になってしまった。諦める事を受け入れる体勢がとうの昔に整う程、格闘技ファンは「武尊vs天心」に対して達観している。

コロナ禍の慣れにも似ている… もうマスクをしないで人と接触していた日々を懐かしいとすら思っていない。

「武尊と天心は実現しない」そう思う事に慣れてしまった。

“那須川天心はあと何試合かしてボクシングに旅立つ”

ボクシングは大好きだし、呆れる程の才能と無限の未来しかない天心の挑戦は応援するしかない。天心も未来を掴む為に足踏みは一切しない人間だ。決心は堅い。那須川決心と言っても過言では無い。ただキックボクシングに大きな忘れ物を置いていってしまう寂しさは立ち技を愛する全ての人に何とも言えない深いため息をつかせていた。

コロナも相まって絶望感というより憂い…憂愁感とでも言うのだろうか?

決着をつけ有終の美を飾ってからボクシング挑戦するのではなく他の事情に構わず天心はボクシングの道に進む。我々はそれを受け入れるしか無い。そう思ってた。そう言うもんなんだと…

しかし…

2020年12月31日。

新生K-1の絶対的エースであり象徴「武尊」

RIZIN.26に現る…

まさかの流れだった。そして、那須川天心の試合を観戦する為に堂々とRIZINのリングサイドに座ったのだ。

K-1とRIZINの今までの関係を鑑みるとあり得ない事だ。この歴史的瞬間で一瞬時が止まり、再び時が動き出し始めると共にじんわりと感動し満足したファンは多い。

(いや…そうだよ!そうこなくっちゃ!)

ファンが団体間の事情に忖度し過ぎてどうする?ファンなんていつだってあり得ない夢を語り、ワガママな無理難題を人海戦術で団体に押し付け、偉そうな蘊蓄を語り、こっそりと勝った方に掌を返す無責任な生き物な事を忘れていたよ!

失礼過ぎるが天心の試合がどうでもよくなったのは筆者だけじゃないはずだ。

“招かれざる客だと思っていた”
“対岸の火事だと思っていた”
“RIZINとK-1の関係に憤りを抱いていた”

長い時間をかけて憂愁させられた格闘技ファンのゆったりとした悲哀は武尊のツンツン頭がカメラに写った瞬間に一瞬で鋭利な希望に変わった。そしてRIZINのカメラが姿を捉えて改めて確信した。武尊は華あるわ…K-1のカメラでも勿論、華はあるがRIZINのカメラに映る武尊の華は格別だった。

武尊と天心が同じ空間にいる感覚は年寄りからしたら猪木と馬場が同じ空間にいて同じカメラで映像に映し出されてる素敵過ぎる違和感に近い。ミュージシャンで言ったら長渕剛と桑田佳祐が近くにいる感覚だ。この2人は1度も拳を交えてないがやはり最高のライバルなのだ。

武尊が来場した事に驚愕し過ぎてしまったが、天心の相手であるクマンドーイ・ペットジャルーンウィットは強豪だ。ただ皆、あり得ないと思っていた武尊の来場でクマンドーイ・ペットジャルーンウィットの事などどうでもよくなっていたのは紛れもない事実だ。
ただクマンドーイ・ペットジャルー…長いな…クマンドーイは強い。あの天心を1番追い詰めたロッタンに勝っているムエタイの超強豪だ。「那須川天心vsムエタイ」の最終章。このキャッチフレーズの通りの一戦だ。

“最高のライバル”武尊が見守る中、みっともない姿は見せれない。

そして、天心は武尊が見守る中、クマンドーイ・ペットジャルーンウィットを圧倒してフルマーク判定勝ちを収めた。KOして欲しかったのは正直な気持ちだがノーミス、ノーダメージで超人的反応とテクを見せつけた天心らしい完全試合だった。武尊もむしろ長い時間天心の試合を間近で見て秒殺でKO勝利するより天心のスピードやテクニックを3R目の当たりにして気を引き締めた部分はあると思う。
破壊的で独創的な攻撃力に目がいきがちだが、天心はおそらく日本のキックボクシングの歴史で1番ディフェンスが上手い。ディフェンス能力はズバ抜けているしまだ対戦してないが武尊より明確に上回っている天心のストロングポイントだ。

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それを今回、リングサイドにいる武尊にまざまざ見せつけた形だ。被弾上等で打ち合いにくる武尊と有効打を1発ももらわない天心。果たしてどちらに軍配が上がるのだろうか…

そして、試合後の天心のマイクでまた現実に戻される。試合後と思えないほどハキハキとした声でコロナ禍の状況を元気づける完璧なマイクをした後に遂に神童が会場に来ている新生K-1のカリスマに触れたのだ。今まで触れる事すらタブーとされてきた。触れた瞬間、日本の立ち技格闘技の富士山が動いたのだ!

「今日、会場に…武尊選手来てくれてるので、ありがとうございます。…まぁまだ何も決まってないんですけど」

…いや。

…いや。

そーなのよ…まだ何も決まってないのよ。

よくよく考えたら天心の試合を武尊が観に来ただけでまだ何も決まってないのよ…

…でも。

…でも。

…でも、いいのよ!!

実現しないと覚悟してたんだから1ミリでも山が動くだけで白飯何杯でもかっこめるよ!散々、期待させておいてマイナスの事を言うのは野暮だが「武尊vs天心」を何年も待ち望み、待ち続け、絶望し翻弄された一格闘技ファンとして言わせて頂く。

“2021年に「武尊vs天心」が実現しなかったらもう無い。”

そして、コロナ禍という最低な状況や怪我やタイミングを含めれば未だ実現は予断を許さない。フィフティーフィフティーだ。ただ団体間のデリケートな問題や一度冷めた両者の対戦への熱意はクリアした様に思える。あとは最高の状態で「武尊vs天心」を迎える為に共に難敵に完全勝利しなければならない最大のミッションを抱えている。

武尊は延期になってしまったが超難敵レオナ・ペタス。

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天心はこちらも静かなる超実力者、志朗との一戦を控えている。

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日本中の格闘技ファンの夢である何年も待たされた「武尊vs天心」を最高の形で実現するには2人して超難敵との対戦をクリアしなければならない。天心のタイムリミット、武尊のキャリア、ぶつかり合う2つの団体、絶望的社会情勢、絶対に落とせない”前哨戦”

「武尊vs天心」は組まれる前から映画なのだ。漫画なのだ。大河ドラマなのだ。そして、ファンはもう我慢できないのだ!

天心が試合後、武尊の元まで行き抱擁を交わした。なんだろう…35歳のハゲたおっさんはスラムダンクの最終話で桜木と流川が交わる瞬間を思い浮かべて目頭を熱くしてしまった。

格闘技は素晴らしい。まだ何も決まってないのにこんなに感動させてくれるんだ。この2人の歴史とこの一戦の重み、もしかしたら2021年までもつれたのは必然なのかもしれない。
運命の一戦。歴史的決戦。ファンからしたらリングなんてどこでもいい。待つ… ただただ待つ。一緒にゴングがなる瞬間を夢見て待とう。

最後に2人の入場曲から一節とって悦に浸ってもいいかい?

武尊の入場曲、3OH!3 の「Touchin On My」

“君のことが頭から離れない
そんな歩き方するから
ベイビー、君が示してくれないと
俺をストップさせる方法を”

天心へのメッセージの様に聞こえる。

“君の事が頭から離れない。素晴らしい戦い方をするね。ただ俺は殴り合いに行くよ。俺をストップできるかい?”

対して天心の入場曲、矢沢永吉の「止まらないHa〜Ha」の最後の歌詞。

“絡みつくような 鎖なんて すてちまえ”

“団体や競技の壁や常識なんて俺には関係ない。貴方を倒してボクシングに行く”

互いの入場曲が流れた時、日本格闘技界の歴史が変わる時…

「武尊vs那須川天心」

震えて待つのみ!

御後が宜しいようで。

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文・鬼越トマホーク・坂井良多

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