失神KO負けより残酷な王座陥落 大晦日は何が起こるか分からない

大会前の不安を掻き消す様な神試合連発で地味な”狭間の大会”と言われたRIZIN.31はいわゆる神興行となった。
しかし…そんな神興行で最後に微笑んだのは死神だった。RIZINフェザー級王者・斎藤裕、まさかの王座陥落… しかも、ヒザによるカットで… 正直に言えば、ショックで一週間以上記事にする事ができなかった。

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もちろん、バッティングによるカットではないので牛久絢太郎という新チャンピオンに何の異議も無い。急なオファーにも関わらず素晴らしい戦いだったし、謙虚で好感の持てる純朴さはRIZINの新たな王者像を生むだろう。あのヒザも作戦通りなのでアッパレと言うしかない。

…ただね、斎藤裕が不憫過ぎてさ…
いまだに耳に残ってるんだよ「まだできるよ!」が…
漢気の結末が、不完全燃焼での敗北でベルトを失う…

格闘技は本当に残酷で何が起こるかわからないし、一瞬で人生が変わってしまう。一寸先は光であり、一寸先は闇なのだ。

“ガチ”
全てはガチなんだ、ファンは現実を受け止めるしか無い。

失神KO負けより残酷な負け方だったかも知れない。ただこれが現実なんだ。長く、格闘技を見ていると、何とも言えない喪失感に襲われる事は何度とある。
桜庭 vs シウバやミルコや五味やヒョードルの敗北など何度も喪失感を味わってきた。ただ、今回の喪失感はリング外のゴタゴタや斎藤裕の人柄や置かれている状況も相まって特殊な喪失感だ。

最初はただの”朝倉未来の相手役”だった斎藤裕にどんどん感情移入する様になったファンも多い。控えめで真面目な王者は格闘技という過激で刺激的なスポーツにおいて批判や挑発を受ける事も多かったが不動心は全て受け流し我を貫いている。

華が無いと言われ続けてきたが今回、解説席に座った斎藤裕と同じ階級の新星で不良なのになぜか言葉のセンスが鋭過ぎる”RIZIN一のイケボ”萩原京平が見事に斎藤裕を表現してみせたのが印象深かった。

「華が無いと言われ続けている事が華になってきている」

まさにそうだ。斎藤裕の説明できない不思議な魅力はまさにその表現がしっくりくる。格闘技ファンはボディブローの様にゆっくりと彼の世界観に引き込まれるのだ。だからこそ、この”一生逆境男”が神興行の流れで最後に歓喜して、大晦日のビッグマッチに帆を進める瞬間を待ち望んでいたファンも多い。

最大のリスクを背負った戦いだからこそ、負けた時はなんとも言えない状況になる。二転三転した王座戦の相手が決まった時のリスクを感じさせない不動心の頼もしさに今回は豪快な勝ち方が観れるんじゃないかと誰もが期待した。

ただ、結果は何度も言うが残酷だった…
この世にカオス以上の表現は無いのか?

フェザー級ぐちゃぐちゃ… 積み重ねたストーリーは全て白紙…
大晦日のマッチメイクはどうなる?怪我の具合はどうなのか?クレベルは戻ってくるのか?
大晦日の格闘技に夢を見てきた日本の格闘技ファンの悪病である”大晦日依存症”が漢気を見せた漢を更に追い詰める…大晦日が基準なのだ、日本の格闘技は…仕方がない事だ。

…しかし、一週間以上噛み締めて現実を受け止めて考えは変わった!引退するわけじゃ無い!元から挑戦者と言われ続けた王者が正式に挑戦者に戻っただけだ。

フェザー級ぐちゃぐちゃ?

むしろ面白い!選手達にとっては地獄の様な状況だがファンにとっては天国だ。先の読めない極上の海外ドラマ以上の展開は格闘技にしか表現できない最高の人間ドラマだ!
そう… ファンはいつだって気楽だ。”混沌”を受け入れて楽しめばいい。
バンタム級の様に皆が堀口恭司を目指す戦いがあってもいいし、フェザー級の様に誰がトップに就くのか分からない群雄割拠の戦いもいい。

全て格闘技の魅力だ。格闘技の魅力は多面的なのだ。そう言った意味ではRIZIN.31は狭間の地味な大会を選手達が意地で盛り上げた神興行という事だけでなく、新たなシン・RIZINの始まりの大会だったのかもしれない。

斎藤裕がまさかの敗北を喫した事で”一生逆境男”は更に修羅の道を義務付けられて色気が増した。彼の次の戦いは絶対に負けられないし、絶対に見逃せないものとなった。こういう状況の漢の姿は人々を惹きつける。

新王者・牛久も次に誰と戦うのか?考えるだけで面白い。混沌の中、ベルトを掴んだがまだまだ天下統一などできてない。三日天下で終わるのか?RIZINの若獅子として頂点を極めるのか?全ては次戦の戦い次第だ。奇しくもウシクと牛久が同時期に番狂わせを起こしたのだ。これは、ただ事じゃない。

大晦日でのvs斎藤裕が濃厚だった”RIZINのアイコン”朝倉未来も宙に浮いてしまったと思いきや、「ファンが望む相手なら誰とでも戦う」と大晦日への決意を呟いていたのでRIZINは絶対に魅力的なカードをアイコンに用意するだろう。大晦日の朝倉未来も最注目だ。

そして、まだまだ、フェザー級は面白い事だらけだ。

最強で最高のおっさん達がMMAトップ戦線に帰って来たのだ!

「金原正徳」と「中村大介」

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この2人は今大会で超ベテランにしか出来ない唸る様な戦いを見せてくれたし、マニアを黙らせる至高のテクニックは脱帽の一言だった。
打・投・極・経験とMMAに必要な全てを高次元で兼ね備えた2人のおっさんがRIZINフェザー級王者になる可能性は大いに有る。2人とも現役で戦ってる時点で日本MMAの誇りなのだ。
お笑いの世界でも第7世代ブームが終焉を迎えて、「錦鯉」や「おいでやすこが」らベテランが奮起して苦労人ブームを巻き起こし、世はまさに”おっさんずラブ”状態だ。

格闘技の世界でもその流れは来ている。”足関仙人”今成正和の世界が恐る悪魔的一本勝ち、”最後のU”中村大介の不思議で天才的な打撃と華麗なる腕十字、”日本MMA史上最高のトータルファイター”金原正徳のMMAレッスン「完璧な勝ち方」実戦編、3人のベテランがRIZINにおっさんずラブ旋風を起こし始めた。

3人の活躍でRIZINは戦国(戦極)時代に突入して、オールド格闘技ファンに夢(DREAM)を見せている。

そんな、おっさんが台頭して来た大乱世の中、若手も負けてはいない。今回、素晴らしい逆転勝ちを収めた白川陸斗をはじめ、萩原京平、堀江圭功が虎視眈々とフェザー級の覇権を狙っている。

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…まだまだいる!

揉めているがRIZIN無敗の”フェザー級実質最強男”クレベル・コイケ、斎藤裕以上の逆境を背負う”奇跡のグラップラー”摩嶋一整、海外勢だとケラモフ、グスタボやベラトールからも強豪を呼べるかもしれないし、RIZIN未参戦の国内王者や日本人選手もまだまだいる。

…あれ?RIZINフェザー級ってこんなに面白かったっけ?
元々、朝倉未来しかいなかったよね?
1年でこんなに変わる?1年でこんなにドラマティックになる?
ほんの数試合でこんなにカオスになる?誰がこんな予想できた?

ほんと格闘技って何が起こるかわからないし、めちゃくちゃ面白いよね!

“RIZINを創った男”堀口恭司。彼の帰還からRIZINは熱を持った。彼が全てを手にして、全てを奪われて、全てを懸けて復活して、全てを奪い返して新たな世界に旅立ってRIZIN第一章は幕を閉じた。

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そして、RIZIN第二章は、全員主人公である混沌から始まり、王が負けて只今、戦乱のど真ん中だ。

リング上もリング外も何が起こるか分からないので今が一番面白い!

バンタム級一強時代は終わり、フェザー級がバンタム級を喰うほど魅力的になり、バンタム級も未だに輝き続けている。ライト級もバンタムとフェザーを追い越そうと続々と強者が集まって来ている。

そして、この戦乱に渦に巻き込まれた悲運の王者・斎藤裕は絶対に強くなって帰ってくる。
太陽の様に輝く”華”もあれば、雑草の様に陰日向に咲く”華”もある。努力と直向きさで格闘技と向き合って来た斎藤裕は彼にしかない”華”を纏っている。
朝倉未来の逆襲の物語だけじゃなく、斎藤裕の逆襲の物語も加わったRIZINフェザー級が今、断トツで目が離せない!

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果たして日本格闘技の一年の総決算であり、夢の祭典である大晦日でフェザー級の混沌のパズルはどう揃うのか?

楽しみで仕方がない!大晦日はあり得ない事も起こる…震えて待つぞ!
最後に斎藤裕よ、敗北を恥じず胸を張れ!RIZIN.31が神興行になったのは貴方がタイトルマッチを行ったからだ!ここから、一生逆境男の逆襲劇が始まるんだ。

“華”の香りしかしないよ。混沌のフェザー級大河ドラマ、俺は楽しむぞ!!!

御後が宜しいようで。


PS.
RIZIN.31はフェザー級の試合は勿論、他の試合も最高で正真正銘の神興行だった。
信じられない程、強かった吉成名高は(那須川天心と戦わせたい…)と誰しもに思わせ、アキラの番狂わせは元師匠・五味隆典と現師匠・石渡伸太郎の関係を含めて感動的なドラマがあった。
RIZINフライ級の伊藤 vs 橋本はMMAの魅力とテクニックと根性とスピードをミックスした最軽量級ならではの心躍る試合を見せてくれたし、女子では大島沙緒里というニュースターが生まれて、問題児スダリオ剛は敗戦を糧に驚くべき打撃センスを見せつけた… いやぁ…改めて神興行だったねぇ


文・鬼越トマホーク・坂井良多

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