“リアル・ワンパンマン”の奇跡を生温かく見守る 格闘技界のパズルは思い描いた様にはハマらない

天心vs武尊はこうなって欲しくない…
格闘技のドリームマッチは往々にして(あの時、実現しておけばよかったのに…)が横行している。金、団体、しがらみ、両者の思惑… まぁしょうがないのかもしれないがそのドリームマッチの規模がデカければデカいだけファンの思いとは裏腹に実現は困難だ。

そして、格闘技はガチなので選手の価値もそれに伴う利益も影で支配する大人達の思惑通りいかないものだ。

(実現できる時にしておけばこんな事には…)

もう一度言うが格闘技界はその繰り返しだ。だからこそ実現した時に昂るので完全に否定できないが…いや!すんなり実現した方が絶対良い!

「アンソニー・ジョシュア vs デオンテイ・ワイルダー」

長らくスター不足に悩んだボクシングヘビー級に現れた2つの巨星。ヘビー級=最強であり、2人は現ボクシング界最強を懸けて雌雄を決する…はずだった。

まさかこんな事になるとは…

アンソニー・ジョシュア。英国出身であり、ロンドン五輪スーパーヘビー級金メダリストにしてプロデビューから20戦連続KO勝利を記録した元3団体統一ヘビー級世界王者だ。完全無欠のスーパースターであり、長らくヘビー級に君臨したウラジミール・クリチコを激闘の末、KOで引導を渡し、ボクシング界最強であるヘビー級の次代の主人公は完全に彼になった。

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そんな完全無欠の主人公のライバルとされて長らく対戦を望まれていたのがヘビー級史上最強のパンチを誇る”リアル・ワンパンマン” デオンテイ・ワイルダーだ。
アリやタイソンを生んだボクシング大国であるアメリカだが、近年は他の国にヘビー級の覇権を完全に奪われていた。そんな中、ヘビー級世界王座を獲得してヘビー級の覇権をアメリカに取り戻した救世主がワイルダーであり、ヘビー級の長い歴史において歴代最強の一発を誇る怪物だ。ワイルダーの一撃を喰らった選手の倒れ方は異常であり、彼のハイライトは全世界のボクシングファンを戦慄させている。なんと42勝のうち41KOしているのだ。

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ジョシュアとワイルダーは戦った事はないが、その華や人気や母国の期待度、ファイトスタイルを含めていつか雌雄を決する「最強の階級ヘビー級のドリームマッチ」として全世界のボクシングファンは待望していた。

まさに天心 vs 武尊の状態に等しい。ただ、「ジョシュア vs ワイルダー」はファンの期待も虚しく、両陣営の思惑もあり中々決まらなかった…
そうしてる間にもボクシングファンにとって現実はどんどんあらぬ方向に向かっていった…

まず完全無欠のパーフェクト男であるヘビー級の主人公アンソニー・ジョシュアが対戦相手のドーピング違反により急遽決まった代役の”世界最強のピザデブ”ことアンディ・ルイス・ジュニアにボクシング史上最大級の番狂わせを起こされてKOで敗北する。
この敗北でジョシュアは大きく評価を落とし、再戦してルイスに判定でリベンジするもファイトスタイルはKO負けを恐れて縮こまってしまった… 皮肉にも完全無欠の筋骨隆々男はピザデブにメッキを剥がされてトラウマを植え付けられてしまったのだ。

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対するジョシュアの最強のライバルであったワイルダーも”ヘビー級のジョーカー”を引いてしまう… ジョシュアとワイルダーより華はないが、実は一番強いんじゃないか?とずっと言われていたヘビー級の裏番長”不人気メンヘラ問題児試合つまらない最強巨人” タイソン・フューリーとの第1戦でワイルダーはキャリアで初めて引き分けてしまい、迎えた第二戦でディフェンス能力やボクシングセンスで大きく勝るフューリーに滅多打ちにされてTKO負けして、今まで積み上げたものが全て崩れるキャリア初敗北を喫する。

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ジョシュアの情け無い敗北と再起後の期待外れなファイトスタイルとワイルダーの底が見えてしまったフューリーとの2連戦…
この2つの事柄でヘビー級の主役は誰も望まない形で「いまいち感情移入できない変人」タイソン・フューリーとなった。ジョシュアとワイルダーは戦わずして両者共に失脚してしまったのだ…

そして、追い討ちとばかりに元完全無欠男アンソニー・ジョシュアは直近の2021年9月25日に元4団体世界クルーザー級統一王者でヘビーに階級を上げてきたオレクサンドル・ウシクの超絶テクニックの前に判定3-0で完敗を喫して、完全にヘビー級の主人公の座から降ろされてしまった…
最重量級であるヘビー級王者はボクシング界最強を担っているので下の階級から上げてきた選手に負けた場合、信じられない程、評価を落とす…それはもう立ち直れない程に…

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ウシクはジョシュアと同じロンドン五輪の金メダリストであり、”現ボクシング界No. 1テクニシャン”ワシル・ロマチェンコと同じウクライナ人でロマチェンコの父のいわゆるパパチェンコがトレーナーの同門でもある。サウスポーの超テクニシャンで「重量級版ロマチェンコ」と形容すれば分かり易い。
そんな元階級下のウシクが完全無欠のヘビー級王者ジョシュアを終始テクニックで完封してしまうとは…ジョシュアの歴史を考えると一番残酷な負け方だ。再戦を望んでいるがルイスの時と違い、12R通してボクシングテクニックで上回られての判定負けなので再戦で勝つのは相当難しい…

皆が期待したジョシュアの完全無欠の王者像と幻想は地に堕ちた…

そんな地の底に堕ちたジョシュアと並行する様にワイルダーの運命の一戦も2021年10月10日に控えている… 宿敵タイソン・フューリーとの第3戦だ。

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この試合もワイルダーには厳しい展開になる。フューリーのディフェンス能力は天才的でワンパンを当てないと勝てない不器用なワイルダーにとって天敵だ。第2戦と全く同じ内容で負ける可能性がある…
まさか誰もが望んだ「アンソニー・ジョシュア vs デオンテイ・ワイルダー」のヘビー級ドリームマッチが「タイソン・フューリー vs オレクサンドル・ウシク」にとって代わるとは夢にも思わなんだ…

まだワイルダーが負けたわけじゃないし、奇跡を起こすのを期待しているがフューリーは信じられないくらい巧くて、デカくて、強いんだ。
3年前にやっとけばよかったのに…ジョシュア vs ワイルダー…スーパードリームマッチだったのに…

天心武尊はこうなるなよ…頼むぜ…

兎に角、期待するとガッカリするので10月10日午前11時からWOWOWエキサイトマッチで生中継するタイソン・フューリー vs デオンテイ・ワイルダー第3戦でのワンパンマンの奇跡を生温かく見守ろう。

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はぁ…なかなか格闘技界のパズルは思い描いた様にハマらないね〜。だからドラマティックなんだけどさ。

兎に角、ワイルダー、頼んだぞ!!!

御後が宜しいようで。


文・鬼越トマホーク・坂井良多

sakai
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