ブラッド・ピットの“一人ファイトクラブ”は必見 くすぶった野郎二人の放課後ムービー

タランティーノくらいレンタルしとかなきゃなあ…殴られた記憶もロクにないけども!
そんな風にT.M.Revolutionの楽曲『ホワイトブレス』を聞いて自戒した人はいるだろうか?

あれから俺も物理的にも精神的にも随分殴られたなあ…と思わず遠い目になってしまうが、今なら見る権利はあるだろう!充分!

…と思っていたら、タランティーノ監督の最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が公開された!

面倒臭いを絵に描いたような落ち目の俳優ダルトンと、そんな彼の恋女房で雑用もこなす、タフなスタントマンのクリフ。  微妙に冴えない日々を送る2人の隣に、イケイケの女優シャロン・テートが越してきた!というのが主なあらすじである。

1960年代のハリウッドを舞台にした実録ベースの本作。もし隣に売り出し中の美人女優が越してきたなら、逆にこっちが洗剤を持って挨拶に行きたくなるが、劇中では最後の最後まで面識はないまま話が進む。

公私共に成功の階段を順調に進むシャロンとは対照的に、今一度成功を掴むべくもがく2人が何とも切ない。

まさに、くすぶった野郎二人の放課後ムービーの様相を呈する。

ディカプリオとブラピがカッコいいのは、もう太陽が毎日昇る位に当たり前の話だが、そんな二人がくすぶった役柄を演じると聞くと嫌味さを感じる方もいるかもしれない。

だが安心してほしい。嫌味さを感じさせない切実な演技を見せてくれる。

テレビの西部劇ドラマで主役としてブイブイ言わせていたディカプリオ扮する映画俳優ダルトン。今じゃ若手のドラマに悪役としてゲスト出演するなど、落ち目になりつつあるのを実感しつつ中々キャリアアップが出来ない男を好演している。

特に前日に痛飲して二日酔いの状態で現場へ出勤、現場で子役に励まされ急に泣き出したかと思いきや、いざ本番でセリフをトチってしまい酒瓶を相手に控室で一人ブチギレる演技は必見だ。

そして、ひとしきりブチギレてからスッキリし、ガラスの仮面のマヤばりに気合の入りまくった憑依演技を披露!

自他ともに認めるベストアクトを果たし、結果感極まって泣くのであった。
タフなイメージを売りにしながら、リアルでは泣きっぱなしという、この振り幅。カッコよさとは程遠いが、実に人間臭く、なんだか嫌いになれない。

一方のダルトンの恋女房ことブラピ扮するタフなスタントマンのクリフ。ダルトンの専属スタントマンだが、

ブルース・リーの喧嘩を買いタイマンを張る、
アンテナを直すために無駄に半裸になる、
簡単に女になびかない、
カルト教団の根城へ単独で突撃、タイヤをパンクさせられる嫌がらせを食らえば、ぶん殴ってタイヤを直させる、
一人ファイトクラブのような男の中の男。

ハリウッドに収まらない漢っぷりだが、おかげさまで業界から干され今ではダルトンの雑用に身をやつしている。

こう聞くと卑屈にでもなりそうなもんだが、それはそれとしてオールディーズを爆音で流しハリウッドを車で爆走、トレーラーハウスの同棲相手は犬、という成功からは程遠い計画性のない男として描かれる。

だが、この計画性のなさが逆に潔い、「とりあえず今を楽しむ」という理想の独身男ぶりを見せてくれる。

更に対照的に現実を受け入れられないディカプリオに対して「お前はやれる!」と自分を差し置いて激励するのだが、利害関係以上の友情を感じさせてくれるのであった。

タランティーノ特有の与太話や小さなエピソードが散文的に語られる本作。

タラといえば「もうオマエの趣味じゃねえか!」と言いたくなるほど映画の小ネタを自作に大量にはさむのが定番だ。

ともすれば1960年代に思いを馳せるだけの映画に思えるかもしれんが、ラストはタラにしか出来ないであろう、強引な映画式バックドロップが極まる。

ブラピのファイトクラブぶりが最高潮に達し、ディカプリオの「え?あの伏線ここで活きるの?」と言いたくなる身も蓋もない結末は爆笑するか呆気にとられるかで分かれるだろう。

小ネタさがしだけで済ますのは勿体ない。

シャロン・テートの天真爛漫さにときめき、ダルトンとクリフの悲喜こもごもに笑い、最後は「タラの野郎!やりやがった!」と思わず声が出る映画ですよ。

SonyPicturesJapan/YouTube

文・DIEsuke(@eroerorocknroll)/ステイサムの悩み相談bot狂犬映画ライター・映画タッグ:ビーパワーハードボイルド

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