『MICHAEL』という怪作 (永野)

マイケル・ジャクソンの死後にリリースされたアルバム『MICHAEL』ですが、なんとその中の3曲が本人によって歌われたものではないという噂が数年前に出ました。その時自分はマイケルの死後最初の春に近所の花見会場を通りかかった時に見た地獄絵図を思い出しました。それまでマイケルのマの字も口にしなかったであろうオシャレな若者がステレオからマイケルを流してムーンウォークをしていたのです。

自分はその日を境にマイケルを聴かなくなったのですが、ある日無性にマイケルの新しい音源が聴きたくなって例の『MICHAEL』を買いました。何しろマイケルの死後に急ピッチで仕上げたアルバムですので天国のマイケルは納得してないと思うのですが、それでも未発表だったマイケルの歌声を聴けて幸せな気持ちになりました。その中でも50セントとコラボした『モンスター』は『ハッ!』『フォー!』などといったマイケル節が炸裂していて、「後期のマイケルってしっとり歌ってたのに全盛期を彷彿とさせる歌も残してたのか!」と感動したのを覚えています。

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その曲を歌ってたのがマイケルのモノマネ芸人、ジェイソン・マラチさんなのでは?という噂があったのですが、それが真実だったら自分はジェイソン・マラチさんの歌に感動していた事になります。でも正直なところ腹が立ちませんでした。例えればブルース・リーの死後に足りない部分を偽者に演じさせて撮った『死亡遊戯』もそれはそれで味わいがあって、映画の終盤までほぼほぼ複数の偽者が演じてるのですが、急に本人が出て来た時のカタルシスに通常の映画では味わえない興奮があるのです。

『MICHAEL』もそういうアルバムで、ジェイソン・マラチさんがいるからこそ「やっぱり本人は違うなあ!」となれますし、更には「この曲も本当にマイケルなのかな?」と変な勘繰りも含め通常のアルバムにはない楽しさがありますと話したところお利口さんに「なるほどあえて『MICHAEL』を選んで逆張りをしてる俺って人と違うセンスしててカッコいいって事ですね。あのー、こんなこと言うと正論うぜー!とか仰りそうですがそれじゃ響かないですよ」と完膚なきまでに論破されました。

文・永野

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