涙の?違う!狂い咲きサンダーロード(永野)

『狂い咲きサンダーロード』を初めて観たのは上京したてでサブカルチャーに興味津々だった頃に高円寺の個人レンタルビデオ店の『カルト』という欄で見つけた本作のタイトルに惹かれてレンタルしたのがきっかけでした。胸躍らせて観たのですが、残念ながら世界観に入れませんでした。
それから様々な著名人の方が本作を絶賛されてるのを知る度に何か取り残されたような感覚になっていたのですが、自分の心には嘘がつけずになんとも言えない気持ちでいました。

それから芸人を始めて落ちぶれてギターウルフに勝手に支えられている時期がありまして『ギターウルフ』と名がつくものは全てチェックしていたのですが、そこでギターボーカルのセイジさんが「大事なライブの前には気合いを入れるために『燃えよドラゴン』か『狂い咲きサンダーロード』を観る」と語っているのを目にします。
正直「またか」と思いました。凄みのある著名人は皆必ず『狂い咲きサンダーロード』を肝にしているのです。自分は「あのセイジさんが言うのならまた観てみるか」と十数年ぶりに『狂い咲きサンダーロード』をレンタルしました。「これでまたハマらなかったらどうしよう」という不安を抱えつつ「でもハマらなかったらそこで嘘をついてハマったふりをせずハマらない事を受け止めよう」と思いました。
鑑賞中の自分はずっとテレビを睨みつけていたと思います。すると最初観た時と違って精神が鼓舞されて、一種のドーピング映像のようなものが目の前で展開されました。ハマりました。

2016年に石井聰亙(現・石井岳龍)監督とお話出来る機会があり、そこで聞いたのですが、監督は当時ブルース・スプリングスティーン(ボス)の『涙のサンダーロード』という曲を聴いて「俺の青春は涙なんてもんじゃない!狂い咲きだ!」と、タイトルだけ作って1人興奮していたとの事です。これぞ純情。ちなみにボスのデビューアルバムに『成長するってこと』という曲がありますが、この映画の主人公・仁さんは「成長しないってこと」と言わんばかりに孤軍奮闘で大暴れします。わがままや独りよがりもここまで来たら天晴れです。その姿を今の人たちが見れば「成長しなよ」の一言で片付けられるかもしれません。恐ろしいです。あと、今思うと自分が上京して高円寺で借りたのは『狂い咲きサンダーロード』ではなかった気がするんです。恐ろしいです。

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文・永野

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