ブルース・リーを守れ (永野)

自分の世代を代表する香港スターはジャッキー・チェンですが、6歳上の兄貴がいるので小学生の頃はテレビでやっていたのを録ったブルース・リー映画を繰り返し観させられていました。

何故か自分の部屋に『燃えよドラゴン』のポスターを貼られた時はあのタッチが怖かったです。その隣にレッド・ツェッペリンのポスターも貼られたのですが、ブルース・リーのことは知ってるからまだしも知らない長髪の白人4人がこっちを見てる写真は気持ち悪くてたまらなかったです。

ブルース・リーの映画では『ドラゴンへの道』が1番コミカルで好きでした。『燃えよドラゴン』はポスター同様「怖い」というイメージでした。木材と鎖で作った兄貴オリジナルのヌンチャクを渡されてひたすら練習させられたあの日々はなんだったんでしょうか。自分の中でのブルース・リーは「自分はジャッキー・チェンが好きだけどジャッキーより偉大な人だから尊敬しなければならない」という存在で、今考えると完全なる洗脳でした。周りの友達はみんなジャッキー・チェンが好きでブルース・リーには興味がなかったのを覚えています。

それから時は90年代。東京にいる自分は衝撃的な現象を目撃します。食が細そうな服屋通いの連中がブルース・リーを褒めだしたのです。ブルース・リー=オシャレ?気がつけば昔ブルース・リーに興味がなかったはずの友達までもがブルース・リーの写真をアレンジしたTシャツを着ています(のちにビースティ・ボーイズにかぶれての事だと判明します)。
「これはブルース・リー直撃世代の人たちが怒るぞ」と予想していたらまさかの「ブルース・リーが若い人に広まるなら」みたいなヤワな反応で、中には「ブルース・リーについて教えてあげようか?」みたいにすっかり気を良くした人まで出て来る始末。「違いますよ!食が細そうな服屋通いの連中が今だけ面白がってるだけですよ」と伝えたくても無名の自分にはどうする事も出来ず、自分に出来る事と言えば当時住んでいた三軒茶屋のレンタルビデオ屋にあるブルース・リーの作品を全て1週間レンタルするという活動で食が細そうな服屋通いの連中からブルース・リーを守るしかなく、せっかく借りたんだからと改めて全作品を観たらブルース・リーの虜になり、食が細そうな服屋通いの連中のおかげですありがとう。ということわざみたいな結末になりました。おしまい。

文・永野

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