ルール無視のガチンコファイトの結末は? 柔術達人 vs プロボディビルダー

1994年、Lance Batchelorというプロボディビルダーと、黒帯柔術家Pedro Sauerがルール無用のガチンコファイトを繰り広げた。

地元ラジオ番組のキャスターでもあったBatchelorは、“体格と筋力がすべてであり、強さに技は関係ない”という説を耳にし、それを信じた友人たちにけしかけられて、オンエア上でブラジリアン柔術の達人Sauerに挑戦状を送りつけたのだ。経緯をまったく知らないSauerだったが、躊躇することなく挑戦を受け、速攻で試合が組まれたという。

/YouTube

会場は地元の道場。目への攻撃と噛みつきは禁止、どちらかが“回復不可能なダメージ”を負いそうになった時点でレフェリーが止めるということだけが決められた、ほぼなんでもありのルールだった。剛か柔か、力か技か、格闘技における永遠のテーマを検証するための試合である。

Batchelorは典型的なゴリマッチョ。一方のSauerは知的な雰囲気漂う武道家という対比もおもしろい。どういう試合展開になるか期待も高まるが、ふたを開けてみると格闘技の達人による一方的な展開となってしまった。

Sauerの繰り出した打撃の要所へのヒット回数が、圧倒的にBatchelorよりも多かったのである。急所にクリティカルな打撃を入れる技術に大きな差があったのだ。途中でつかまりSauerが不利と思われた寝技中心の攻防になっても、Batchelorの打撃はうまく入らない。一方のSauerはマウントを取られながらも効果的に体を入れ替え、鮮やかに腕ひしぎを決める。その時点でこれ以上は危険と判断したレフェリーに試合は止められ、Sauerが勝利したのである。

“筋肉の前に技術など意味なし”と証明したかったBatchelorにとって、腕を心配されてレフェリーに止められたのは屈辱的だったのだろう。直後、格闘雑誌<Black Belt Magazine>に手書きの文章を送り、「自分は実は弱視だった上に、途中でSauerの腕を取ったのに彼の生徒が飛び込んできて試合を中断させられた」と、自身の勝利を訴えた。

Batchelorの直訴の真偽について意見はあるが、やはり彼が負け惜しみを言っていると見る向きが多い。しかも、掴まれにくくするために体にワセリンを塗っていたという話もあり、なんともお粗末な結果になってしまったと言うしかない。

勝利したSauerは5歳からボクシングを始めており、15歳で友人のヒクソン・グレイシーに誘われ柔術の道へ入った。当時、アメリカでブラジリアン柔術が流行しはじめたこともあり、1990年に株式仲買人の職を辞してヒクソン兄弟とともにカリフォルニア州へ移住した。同年の暮れにはユタ州へ移り、それ以降は長きにわたってアメリカ南西部での柔術普及に貢献。現在も<The Pedro Sauer Brazilian Jiu-Jitsu Association>の指導者として活躍中の紛れもない達人である。

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