「ホイス・グレイシーと107分の死闘」その後 桜庭和志、驚愕の行動の真意とは?

UFC殿堂入りという称号を持つ日本人唯一の総合格闘家にしてプロレスラーの桜庭和志。“IQレスラー”と呼ばれ、UFC-J王者となった際には「プロレスラーは本当は強いんです」と発言。“グレイシー・ハンター”として、当時隆盛を極めていたグレイシー一族を次々と倒す姿は日本の格闘技ファンを熱狂させた。

そんな桜庭の軌跡について書かれたのが柳澤健の著書『2000年の桜庭和志』(文藝春秋)だ。2020年2月に刊行した同著では、2000年5月に開催した「PRIDE GRANDPRIX 2000」の準々決勝でホイス・グレイシーと107分にもおよぶ死闘を繰り広げたその後に取った驚くべき行動の真意について語っている。

同著ではもはや伝説として語り継がれる一戦を「107分の死闘」と題して、両者の入場から、ホリオン・グレイシーがタオルを投げるまでを40ページ以上にわたって詳細に綴っている。

トーナメントの1試合として実施するにはあまりにもヘビーで、桜庭がこの戦いで披露困ぱいであることは誰が見ても明らかだった。しかし、試合前から「ホイスに勝ってもトーナメントの準決勝には出場しない」と公言をしていたにも関わらず、死闘からおよそ1時間後に再びリングへと上がった桜庭に観客は驚愕した。

桜庭はこの出来事を「他人の予想を覆すのってじつに気持ちがいい」と振り返っている。ホイス戦直後の試合を「棄権します」と触れ回っていたのは、実は「一種のネタ振り」で、体重差20kgというハンデも背負って“北の最終兵器”イゴール・ボブチャンチンと戦うために再度会場に姿を現したのは「世界一体を張ったギャグ」だというのだ。

まさに「してやったり」という桜庭だが、柳澤は「桜庭和志は常に本音を語るわけではない」と深堀り。「力尽きて敗れるなら仕方がないが、自分にはまだ少々の余力がある。優勝の可能性が少しでも残っている以上、リング上ですべての力を出し尽くして挑戦するべき」と考えていたのではないかと、胸中を推察した(試合はボブチャンチンの勝利。ラウンド終了時の判定はドロー。延長戦を前に桜庭陣営がタオルを投入してのTKO決着だった)。

本音と建て前のどちらも興味深い。世界の強豪と渡り合う実力に加え、プロレスラーとして生粋のエンターテインメント性を兼ね備えた“サクラバ”が世界のヒーローとなった理由を知ることができる、印象的なエピソードだと言えるだろう。

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