クリエイティブ集団「SD JUNKSTA」が教えてくれたヒップホップ (カミナリたくみ)

人気漫才コンビ「カミナリ」の石田たくみ氏が<ヒップホップにまつわる諸々>を喋り倒す月イチ連載。今回のテーマは「神奈川県相模原市を代表するHIP HIPグループ<SD JUNKSTA>」。ラッパーやDJだけでなく、グラフィティライター、ダンサーなどを抱える巨大クルー<SDP(SAG DOWN POSSE)>と共に、地元を大いに盛りげてきた同グループに、たくみ氏は大いに影響を受けてきたという。

たくみ:今回は相模原のHIP HIPグループ<SD JUNKSTA>を紹介します!前回はSCARSの1stアルバムについてお話したんですが、2008年に出た2nd アルバム『NEXT EPISODE』に「One Way Love」というSD JUNKSTAのBRON-Kさんがフィーチャリングされてる曲が入ってます。これが良い曲なんです。

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ー「One Way Love」きっかけで、BRON-KやSD JUNKSTAを知った感じですか?

たくみ:実は違うんです。ちゃんとクレジットを見てなかったんでしょうね。最後の「K」だけが目に入ってきちゃって。恥ずかしながら、SCARSのbay4Kさんが歌ってると勘違いしてました。ラップだけじゃなく歌も上手いじゃないかって、勝手に感心しつつ(笑)。 

ーSD JUNKSTAを知ったのは?

たくみ:学生時代ですね。渋谷のManhattan Recordsの建物の横に壁画があるじゃないですか?当時はキャップをかぶった若い男が描かれてたんですが、とにかく雰囲気があってカッコイイ。友達に聞いてみたところ、NORIKIYOというラッパーだ、と教えてくれました。その流れで、彼が率いるSD JUNKSTA、メンバーであるBRON-Kさんのことも知って、そこでようやく「あれ?SCARS『ONE WAY LOVE』で歌ってたのって、もしかしてbay4Kじゃなかったの?」って(笑)

ー SD JUNKSTAにハマったきっかけは?

たくみ:やっぱり「人間交差点」ですね。本当によく聴いた曲です。

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ー2009年にリリースされた曲で、 SD JUNKSTAの1stアルバム「GO ACROSS THA GAMI RIVER」にも収録されています。

たくみ:当時、大学2年生ぐらいだったかなあ。まずトラックが良かった。すごく哀愁が漂っているんですよね。ただ、この曲に関してはラップの印象が強かった。
OJIBAHさんから始めるんですけど、「ひ!さしぶりの、ひ!かり射した、く!もの隙間、日!差しの下、ひ!さしぶりに(以下略)」というラインを聴いて、マジで驚きました。

ーリリックを暗記してるんですね(笑)

たくみ:これは覚えちゃいますよ!初めて聴いたときは、本当にビックリしちゃって。今なら「頭韻」を意識してるって分かるんですけど、当時の僕にとってラップの韻は語尾で踏むものでしたから。こういう踏み方もあるのか!って驚いたの覚えてます。

ー前回も言ってましたけど、やはり大人数のラッパーが参加してる曲がお好きなんですね。

たくみ:そうなんですよね。 OJIBAHさんの後には、BRON-Kさんのフックが来て、NORIKIYOさんのラップが来る。そして最後のWaxさんもすごく渋い。全員がカッコイイんです。この曲でSD JUNKSTAを知った後は、どんどん掘り下げていきましたね。

ー具体的にはどんなところを?

たくみ:最初はメンバーのソロアルバムからですよね。フックが気になったので、まずはBRON-Kさんのアルバム『奇妙頂来相模富士』から。「歌だけじゃなくラップも上手い!」と驚いた記憶があります。

ー2008年にリリースされたソロ1stアルバムですね。好きな曲は?

たくみ:まずは「寒空」 。そして「何ひとつうしなわず」も最高。「何ひとつうっしなわずっ全て手に入れたいと思うことはわがままか〜い♪」と。

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とにかくBRON-Kさんは、フックを歌うのが異常に上手い。ヴァースに関してもあの人にしか出来ないラップをしてますよね。ものすごくスタイルがある。と、いいつつSDはクルーとして好きなんですよ。

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SD JUNKSTAの魅力は「クリエイティブなところ 」

ークルーとしての魅力はどうですか?

たくみ:一言で言うと「クリエイティブ」です(即答)。 もちろんクリエイティブじゃないアーティストなんていないと思いますけど、SD JUNKSTAの場合 はクリエイティブ の範囲が広くて、深い。ラップとDJだけじゃなく、ダンスとかグラフィティもやってる人も周辺に多いですよね。つまりヒップホップの四大要素(=DJ、MC,Breakin’、Graffiti)をちゃんとやっている。で、そういうクルーって、オールドスクール色が強かったりするじゃないですか?ところがSDは、当時の最新スタイルでやっていたんです。

ーなぜそうなったと思いますか?

たくみ:個人的な意見ですけど、クリエイティブの核にいるのは NORIKIYOさんなんじゃないかと。BRON-Kさんの『奇妙頂来相模富士』の後に、NORIKIYOさんの1stアルバム『Exit』を聴いたんですが、このアルバムに収録されてる「DO MY THING」のミュージックビデオを観れば、 NORIKIYOさんとSD JUNKSTAの世界観が良くわかると思います。ラップとDJだけじゃなく、グラフフィティやダンスを含めた「Hip Hop」をやろうとしてる。

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ーNORIKIYOさんのラップの魅力は?

たくみ:とにかく上手い。ものすごく器用。しかも未だにリリースのペースが落ちないし、進化も続けている気がします。一昨年ぐらいに出した曲で「What Do You Want?」という曲があるんですが、こんな内容のラップもできるのかと感心しました。

ー田我流主演の映画『サウダーヂ』で知られる富田克也監督がMVを手がけたことで話題になりました。

たくみ:初めて見たNORIKIYOさんはストリートの人でした。けど、そこから秘めていた才能をどんどん開花させていった。今や日本のHIPHOPシーンを代表するラッパーであるだけでなく「日本の音楽家」でもあるようにも見えます。と、 NORIKIYO さんの事ばかり褒めてしまいましたが、 基本的に SD JUNKSTAって、才能の塊みたいな人たちの集団なんじゃないかなと思っています。

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「ヒップホップとは四大要素である」って意識させられた

ー SD JUNKSTAから、なにか影響を受けてますか?

たくみ:まず「ヒップホップとは四大要素である」ってことを意識させられましたよね。特にグラフィティについて知ることが出来たのは良かった。MVにグラフィティが出てくるのはもちろんなんですけど、NORIKIYO さんなんかは、リリックにも「ボム(※グラフィティを描くこと)」とか「Going Over(※他人のグラフィティを上書きすること)」みたいなグラフィティ用語を入れてくる。

ー「FAT CAPと黄スコ(※いずれもスプレー缶につけるノズルの名称)」とか、かなりマニアックなワードも入ってますよね。

たくみ:どんな意味かを調べるのも楽しかったですね。で、少しグラフィティのこと知るうちに、海外製のスプレー缶に興味が出てくるんです。理由は簡単で、とりあえず見た目がカッコイイんですよ。

―日本のホームセンターで売ってるものと比べるとデザイン性が高いですよね。グラフィティに特化した製品もある。

たくみ:どうしても欲しくなったので、渋谷のシスコ坂にあったお店で、ちょっとドキドキしながら、何本か買ったことを覚えています。 実はまなぶの家にちょっと書いたんですけど(笑)。もちろん許可はもらって。

ーSD JUNKSTAをきっかけに「ヒップホップは、ラップ、DJ、ブレイキン、グラフィティの4大要素で成り立っている」って知った感じですか?

たくみ:それ以前から知識として知ってはいたんですが、実際に全部やっているSD JUNKSTAを目の当たりにして驚きましたよ。当時の僕は「四大要素のうちの一つくらいはやろう」と思ったんですが、当時まなぶがテクニクスのターンテーブルを親に買ってもらったばかりだったので、DJ担当はあいつ。で、うちの兄ちゃんはブレイクダンスをやっていた。だったら僕はラップかグラフィティだなって思ったんです。

ーたくみさんはラップを選んだわけですが、始めてみてどうでした?

たくみ:僕が好きなラッパーって、犯罪について歌ってる方が多いんですよね(笑)。でも僕は本当に悪いことができないタイプで、そういうラップのネタになるような体験をしてこなかった。それでもストリート・ラッパーみたいなスタイルでやりたかったので、結局リリックが嘘だらけになっていきました(笑)。でも、ある時に一緒にラップをやってた奴に「やってもない事をラップするな」と注意されたんです。
メンバーで話し合った結果「だったら本当にやった悪いことだけラップしよう」という話になって、みんなで一番の悪事を言い合ってみたんですよ。でも僕は「遅刻」、まなぶは「サッカーの試合中にしたファール」。ラップにするのは無理ですよね(笑)

「自分の地元もカッコ良く見せられるんじゃないか」と思わせてくれた

たくみ:誤解してる人も多いと思うんですけど、SD JUNKSTAのラップって、ワル自慢をしてるわけでは無いんです。ただ等身大の生活を歌っているだけ。もちろんリリックには多少悪いことも入ってくるんですが、それも生活の一部なんですよ。そこに気付いて「自分たちも無理をせずに地元についてラップすればいいじゃないか」って思えるようになった。で、僕らは地元である茨城県鉾田市を歩き回って、ヒップホップっぽい物、ストリートっぽい場所を探し始めたんですよ。

ーなにか見つかりましたか?

たくみ:正直言って、あまりなかったですね(笑)。唯一、駅前にスケート・パークみたいな場所があったんで、早速ムラサキスポーツでコンプリート・デッキを買ってきて、ちょっと滑ってみたり。あと僕の家はメロン農家なんですけど、箱詰めする場所にダンボールを敷いて兄ちゃんがブレイクダンスの練習をしてたんですよ。それを僕とまなぶが見てたり。結局そんな感じでしたね。

ー何もない場所で、自分たちで工夫して楽しんでいるという点で、すごくヒップホップっぽいですよね。

たくみ:ただ残念なことに、なんでもない風景をラップするところまでは行かなかったんですよね(苦笑)。今にして思えば、リリックにすれば面白かった。でも当時の僕らでは、そこまでは思いつかなかったんです。

ーSD JUNKSTAには地元を大事にする感覚を教えられた?

たくみ:ですね。 SD JUNKSTAの地元(※相模原市相武台)だって、何もかもが揃ってるタイプの街ではないと思うんです。そういう街を自分たちの才能やセンスを使って、カッコ良く見せてたのが良かった。ラップだけじゃなく仲間たちと色んなことをして地元を盛り上げていく姿勢にも惹かれましたね。「もしかしたら自分の地元だって、努力次第でカッコ良く見せられるんじゃないか」と思わせてくれました。僕にとってのSD JUNKSTAって、そういうグループなんです。

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