過激な性描写はいらない、批判上等 『ザ・ボーイズ』はただのヤバいドラマではない

大好評のまま最終回を迎えたAmazon Prime Videoの『ザ・ボーイズ』シーズン2。『プライム・リワインド: インサイド・ザ・ボーイズ』と題したトーク番組でドラマの裏側やキャラクター創造秘話などが明かされている。

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『クリミナル・マインド FBI 行動分析課』『24 -TWENTYFOUR-』『CSI:科学捜査班』等のヒットテレビドラマシリーズで知られる女優のアイシャ・タイラーをホストに迎え、ブッチャーを演じたカール・アーバン、ホームランダーを演じたアントニー・スター、スターライトを演じたエリン・モリアーティ、Aトレインを演じたジェシー・T・アッシャー、そして企画・製作総指揮にしてショーランナーを務めるエリック・クリプキが登場し、テレビでは絶対に放送できない過激なトークが繰り広げられた。

「『ザ・ボーイズ』は最高に気の利いた、全く不遜で悪びれない悪党達を描いたショーのひとつ」と、同シリーズのファンであることを宣言したアイシャ・タイラーだが、シリーズの舞台裏に迫るべく突っ込んだトークを仕掛けると、トピックはブッチャーの代名詞である放送禁止用語やタブー語について、また各キャラクターを演じる上での役作りや、シリーズ配信開始後の反響についてなどに及んだ。

終始笑いが絶えない和気あいあいとした雰囲気で進むトークだったが、製作のエリック・クリプキや女性出演陣が真剣に語ったテーマがあった。それはTwitterに女性ファンが寄せた「『ザ・ボーイズ』におけるセックスや性暴力の描写はなるべく画面に出さずに描かれている。女性をモノとして扱うこともない。それが可能なの」というコメントについての見解を求められたとき。

エリック・クリプキ
「とてもうれしいよ。それは我々が意識してやっていることだ。原作コミックはかなりどぎつい性描写がある。原作者のガース・エニスはかなりショッキングに描いている。ただ少しやり過ぎだと思う。ドラマは男女ともに見られるようにした。制作にあたり大事にしたことは、性的な描写が物語の進行に必要かどうかということ。視聴者にショックを与え続けると、複雑なストーリーが薄いものになってしまう。だから意識して不要な性描写は削っている。気付いてくれてうれしいね」

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続いて、ドラマの中でセクハラ被害を受けるスターライト役のエリン・モリアーティも次のように発言。

エリン・モリアーティ
「同感ね。私がうれしく思っているのは、原作よりもドラマの方が女性キャラクターを力強く、繊細に描いていること」

2人の発言を受けて、ホストのアイシャ・タイラーがコミック作品に対する自身の思いを展開する。

アイシャ・タイラー
「私はコミックを読むのが大好きなんだけど、コミックには昔から弱い部分があるの。すなわち、少女の模範になる女性が描かれていない。せいぜい下着同然のワンダーウーマンくらい。男たちはみんなヒーロースーツにマント。多少お腹が出ていても隠せるけど、女性はたいがい下着姿。ドラマではそんな問題もうまく取り上げていると思う」

この一連のトピックは、「ザ・ボーイズ」シーズン1で“セブン”に加入したスターライトが、ビジネス的な理由から露出度の高いヒーローコスチュームを着るよう強要される場面を引き合いに出したもの。男性同様に激しい戦いを繰り広げる女性キャラクターたちに、防衛機能からは程遠い衣装を着させがちなコミック界を揶揄しているようだった。

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またアイシャ・タイラーがエリン・モリアーティに対し、「スターライトが<#MeToo>の当事者になってどう思う?」と質問すると、エリンは次のように気持ちを語った。

「第1話の台本のパイロット版が送られてきたときは、セクハラシーンは含まれていなかったの。既に原作コミックを読んでいて原作にはセクハラシーンが含まれていたから、『やらなくてすむ、よかった』と思った。数週間後第2稿が送られてきて、大きな変更が加えられていた。それを読んで思ったのは、演じることへの戸惑いと恐れね。でも読み進めていくとスターライトが進む道が分かってきたの。それは興味深くて力強いものだった。おかげで役に入り込めたわ。皮肉なことだけどスターライトは自身が受けた苦難を通じて、腐敗した世間を正すという目的を達成するの。そういう役を演じられたことを誇りに思う」

更にアイシャ・タイラーがエリック・クリプキに、シーズン1の第1話冒頭で衝撃的に描かれたロビンの死について、「批判はなかったか」との質問を飛ばす。するとクリプキは「6カ月を費やしてフルCGで制作したシーン」だと説明しつつ、「映画やドラマにおいて、女性が無駄死にさせられるのは、力強い男性の主人公に動機を与えるための常套手段になっている」と認め、女性主人公の作品が十分に作られていないという問題点を指摘した。

またクリプキはシーズン2で、原作コミックでは男性キャラクターだったストームフロントを、ドラマでは女性のキャラクターに変更したことについて、「かなりの物議があった。ファンが怒り狂った」と説明。そして一部のファンから「お前ら社会正義戦士かよ」「ふざけんな、もう見ねぇ」との声が聞かれたことを紹介しつつ、クリプキは「さよなら、お前らなんか知ったこっちゃない」と斬り捨てた。するとタイラーも、「疲れる議論でしょうが、避けては通れない道ね」と同調、真剣な議論を笑いに変えてまとめていた。

ブッ飛んだストーリーや過激なバイオレンス描写で話題が先行している「ザ・ボーイズ」だが、原作の面白さを生かしながら、その問題点にもうまく向き合って作っていることがうかがえる。またシーズン2以降も、“#Me Too”を始め、鋭い社会風刺を盛り込んだドラマだという点にも注目してほしい。

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