“天才” ビル・ゲイツ、経営の次は「世界規模の難題」に挑む

マイクロソフト社の創業者であり、史上最年少の億万長者として莫大な富を得たのち、経営から退いた現在では慈善事業家として世界を飛び回るビル・ゲイツ。非凡なる人生を歩んできた彼の思考に迫るべく制作されたドキュメンタリー『天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する』がNetflixで配信中だ。

監督は『不都合な真実』でアカデミー賞を受賞したデイビス・グッゲンハイム。幼少期の貴重な映像やエピソードをはじめ、ビルへの密着取材や関係者へのインタビューなどを通じ、彼の“内面”にフォーカスしながら63年の半生をたどる。

3部構成からなるパート1では、ビル&メリンダ・ゲイツ財団が積極的に取り組んでいる発展途上国の“トイレ不足問題”を軸に展開していく。

マイクロソフトからの膨大な資産を社会に還元するため財団を立ち上げたゲイツ夫妻は、PCをアフリカに寄贈するなどしてきたが、効果を実感できないことにもどかしさを感じていた。そんな折、夫妻は「ニジェールでは下水が水に混入し、下痢を引き起こしている」というNYタイムスの記事を目にする。予防できる病気で数多くの子どもたちが命を落としている事実を前に、彼らは「世界の健康に自分たちが貢献できることはないのか」という考えへシフトしていった。

だが、配管を持たないスラム街に下水処理施設を建設しようとすれば、街一つで数百億ドルがかかる。コストが1/10で済むやり方で、数百万人の命が救える解決方法はないか。彼らは初期段階の研究に資金を提供する財団主催の発明大会を企画し、水や電気・配管を使用しないトイレ、マイクロ波で排泄物から発電するシステムなど、極めて斬新な多数のアイデアを集めることに成功した。

それでも試作段階でかかるコストはどれも高く、普及させるためのボーダーラインである1台500ドル未満とはかけ離れたものだ。量産することでコストを下げられる製造業者を見つけなくてはならない。2018年11月、北京で開催された「Reinvented Toilet Expo(新世代厠所博覧会)」に登壇したビルは、人糞が詰まったガラス瓶を手にスピーチし聴衆を驚かせた。

現在、彼が斬新な視点から解決しようと模索しているのは、エネルギー問題や気候変動、疾病の根絶など、世界規模の大きな難題である。自らの頭脳と時間を費やし、懸命に立ち向かう姿は、かつての「横柄」「強欲」「捕食的」「野蛮な秀才」といった彼に対する世間のイメージとはかけ離れている。

本作はビル・ゲイツの過去と現在、そして未来を紐解く貴重なドキュメンタリーだ。彼の人生そのものに多大なる影響を及ぼした母の存在や、妻メリンダ・ゲイツから見た夫婦の関係性など、意外な側面には親近感を抱くかもしれない。

同時に、“世界を変えた天才”でありながら、学ぶことを決してやめない姿勢や、今なお追い続ける壮大かつ大胆な目標、それを達成するために積み上げていくプロセスなど、あらゆるに人に刺激をもたらす良質な映像作品でもある。

Netflix Japan/YouTube

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