井上尚弥は“刺身” 日本ボクシング史上最強の男はどのように育ったのか?

ボクシングのWBA、IBF世界バンタム級王者・井上尚弥。いまや「怪物」の名を欲しいままにし、階級を超えたボクサーのランキング「パウンド・フォー・パウンド」では現在3位に君臨しており、もはやその実力を疑う者はいない。
そんな井上が世界王座を獲得した2014年に出版された自著『真っすぐに生きる。』(扶桑社)では、“親子鷹”で尚弥を支えてきた父・慎吾氏による記述も多くあり、息子をどのように育ててきたのかが詳しく描かれている。

書籍の冒頭で慎吾氏は「俺たちにとって普通。それが怪物と言われようが、そうでなかろうが、勝ったらそれに自信を持つ。負けたらそれを見つめ直す。その繰り返しでいいじゃないか」と、あくまで尚弥は「普通の人」だとして、地に足をつけるように語り掛けている。

また慎吾氏は、ボクシングは尚弥だけでなく家族一体型で取り組んでいると説明。尚弥もこれを認めており「井上尚弥というボクサーは僕自身の肉体だけではなく、家族の役割分担も必要不可欠なのだ。何か一つが崩れたら、僕はスランプに陥るかもしれない。だから、プロに転向しても父に教わることにこだわった」とまで綴っている。

子育ての方針として慎吾氏は、状況に応じて子どもにも謙虚に向き合うことにしているそうで「『するな!』ではなく『よくないよね!』(と言う)だけでも全然違います」と解説。ときには厳しく一喝するときもあるが、常に尚弥に寄り添い、その人生を支えているエピソードが『真っすぐに生きる。』ではいくつも確認できる。

本著のあとがきでは、尚弥が自著のまとめ方に迷っていると、慎吾氏が「井上家はこれ」と晩酌のつまみにしていた刺身を指さす。「ナオや(弟の)タクが刺身で、お父さんがワサビ。どっちも大切な存在。で、母や姉という醤油があって、全部が成立する。でもお前にとって、本当に大事なのは醤油だからな」とコメント。支えてくれる家族を尊重する父の言葉に尚弥は「父には当分、かないそうにない」と、率直な感想を述べている。

家族で取り組む「怪物」の行く末に、これからも注目が集まる。

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