ストリートスケートボードのリアルを知る最後の世代が出した答え、池田幸太 #4

どんな媒体でも、プロスケーターのインタビューと言えば大概はスケートボードに関することばかりだ。だが、ファンというものはその人のプライベートな一面やライフスタイルも含めて生まれてくる。それにファンはプロとしての地位を確立していればしているほど、よりそのライダーのプライベートが気になるものだ。

そこで、全4部にわたってお送りしてきた池田幸太のインタビューのラストテーマは、スケートボードと離れた彼の一面に触れることで、なかなか表には出て来ない人間性にフォーカスしていきたい。

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何気ない会話が意外とアイデアソースになったりするんですよ

スケートボード以外の普段の生活ってどんなことをしていますか?

最近はひたすら映像の編集をしてたんですけど、今はJASON RODMANが編集を担当してくれるようになったので、バイトしてるかYouTubeの撮影をしてるか、M’s Ramp(最寄りのスケートパーク)で友達と喋ってるかって感じですね。そういう何気ない会話が意外と企画のアイデアソースになったりするんですよ。それ以外は格闘技見てるか、車に関することを調べていじってるか洗車してるって感じです。車好きとしては洗車機なんて1回も入れたことないですよ。

ーでもその割には割と扱いが乱雑なところもあったりしますよね(笑)

確かに(笑)。その辺はなんて言うのかな、車はスゴい好きでいろんなこだわりはあるんですけど、言っちゃえば乗り物だし、乗ってれば傷つくものじゃないですか。だからブツけたりとかブツけられたりしてちょっと傷がついたくらいじゃ直さないんですよね。その辺は性格と言うか、スケボーもいくらグラフィックがカッコよくても結局乗ってれば傷つくし、それをいちいち直すなんてことはないし、それと一緒ですかね」

お酒もほとんど飲まないため普段の移動はほとんどが車

カッコいいプロスケーターは皆カッコいい車に乗ってた

ー池田さんは本当にどこに行くにしても車ですよね。それだけ好きになったきっかけは何だったんですか?

単純に電車が好きじゃなかったってのもあるんですけど、一番の理由は俺が見てきたカッコいいプロスケーターは皆カッコいい車に乗ってたからですね。それこそ淳之介(米坂)くんも浦(友和)くんもそうだし、今はBMWの1シリーズに乗ってるんですけど、これもCliché時代にフランスに行った時、チームメイトだったプロスケーターのJB・ジレットが乗ってて「カッコイイな」って思ったのが、買った理由の1つなんですよ。そういうのもあって、便利だし乗っているうちにどんどんハマっていっちゃった感じですね。

現在の愛車はこのBMWの1シリーズ

ーじゃあ今までも結構な数の車に乗ってきたんですか?

今のでちょうど5台目ですかね。1台目は黒いステーションワゴンで、免許とってすぐ買ったんですよ。俺は中学校すら途中で行かなくなったくらいの世間知らずだから、スケボーでお金がもらえるようになってからは、「免許ってそんな簡単に取れるの!? そんな安いの!?」みたいな感じで取りに行って、車も「中古車ってそんな安いの!?」みたいな感じだったんです。だからその場でポンってキャッシュで一括で買っちゃったんですよ。

ーそんな流れで買っちゃう人なんてなかなかいないですよ(笑)

でもそこまでイイのじゃなかったから、乗ってるうちにもっと速いのがイイとか、カッコイイのが良いとかが分かってくるんですよ。そういう欲が出てきた時に買ったのがTOYOTAの白のマークXで、3~4年は乗ったかな。新古車だったし、まだ全然乗れたんですけど、ちょうどadidasに入りたての時に事故られて廃車になっちゃったんです。

思いっきり突っ込まれて運転席のフレームが逝っちゃったから、修理してもダメだったんですよね。ただ自分が大ケガをしなかったのが不幸中の幸いでしたね。

『Kota Ikeda – Roll Call』

YouTube

トランスワールドの特集に合わせて制作されたパート。最初に出てくる車が長らく愛用していたマークX

呪われてる以外の何者でもないですよね(笑)

ープロスケーターが交通事故で大ケガなんて言ったら大ニュースですしね。

そう、だから安すぎる車やボディが弱い車には乗らないようにしてます。この時は大変でしたよ。事故って廃車になったらいきなり自分の車がなくなるし、保険金もすぐには入らないから、今持ってるお金でなんとか変わりの車をゲットしないといけなくなりましたからね。それでお世話になってた車屋からのお勧めで次に買ったのが古めのベンツだったんです。そしたらもう日本車とは全然違って別格でしたね。「こんなに古いのにこんなに良いの!?」って。そこからさらにいろんな国の車にも興味を持ち始めたんですよ。

ーでも呪いの車だったんですよね!?

なんせ納車されてすぐに撮影で頭を強打して記憶をなくしてますからね(笑)。そこから退院しても半年間は良いことが全く起きなかったし、細かな悪いことばかりが重なったんです。

本当にこの車に乗り出してから良いことがないなって思って売る決意をしたんです。そうしたらちょうどClichéの頃からお世話になってた代理店のアドバンスマーケティングの社長が、車が余ってるからってエクストレイルをくれたんですよね。それで手放す手続きもして、ベンツを引き渡す日の数日前に左足を骨折するっていう。もうそこで完全に「トドメを刺された!」って感じでしたね。アドバンスまでエクストレイルを引き取りに行くのに松葉杖で苦労したのをすごく覚えてます(笑)

松葉杖姿の後ろには呪いの車だったと話す当時の愛車、メルセデスベンツ

ーそういうのってあるんですね。

実際エクストレイルに乗り出したら、特に悪いことも起きなかったですからね。ただその後お世話になってる車屋の社長が、自分が乗ってたベンツを代車にするって言って仕事で使ってたんですけど、仕事中にそのベンツで自転車をひいちゃったんですよ。もうここまできたら呪われてる以外の何者でもないですよね。

車ってオンナのコみたいな感じなんですよ(笑)

ー車は人を表すって言いますしね。そういう意味ではゲン担ぎみたいなことも必要なのかもしれないですね。

そういう経験をしたから、最近は何かあったら車は買い替えるようにしていますね。

それでしばらくエクストレイルに乗ってたんですけど、車高も高いし今までとはタイプが違ったんですよね。

ファミリーカーとまでは言わないけど、独身の自分の用途には合ってなかったんです。荷物も人も乗せられるしすごい便利なんですけど、スピードも出ないし、安定もしないから走りが面白くなかったんですね。それにもらった時も「コレに乗ってるのは何が乗りたいか決まるまで」と決めていたので乗り換えた感じですね。

ーそれで今のBMW1シリーズに落ち着いたと。

もともとあの形が好きだったんですよ。小さいんだけどBMWだからデザインもカッコイイし、何より速い。それに小さいのも乗ったことがなかったし、人を乗せる機会もあまりないから、都内の運転も便利なコンパクトカーに決めましたね。それに一度ベンツに乗ったんだったら、ライバル社のBMWにも乗らないとなってのもあったんです。

ーいろいろ試したいタイプなんですね。

なんかこういうとチャラいって思われるかもしれないですけど、車って自分からしたらオンナのコみたいな感じなんですよね(笑)

すごい期待してずっと欲しい車だからって買ったのがマークXだったんですけど、納車して実際に乗ってみたら「なんか思ってたのと違うな」みたいな。例えばずっとタイプだったオンナのコがいて、やっと付き合えたとするじゃないですか。そうしたら期待値が高すぎたせいか、なんか思ったのと違うなと言うか。

そのまた逆も然りで、タイプじゃなかったけど以外と良いじゃんみたいなのもあって、自分だったらベンツがそうなんですけど、同じようにオンナのコでも最初は全然タイプなじゃなかったけど、付き合ったらすごい居心地が良かったみたいなことってあると思うんですよね。

だからこれからも車は色々なのに乗ってみたいなって思ってます。でもこう言うと、オンナのコもコロコロ変えるんだなって、チャラいイメージになっちゃいますかね!? そんなことはないんだけど、勘違いされちゃいそうなんでやっぱりやめときますか(笑)

車好きとしては今後も色々な車種に乗りたいと話す

この人たち超ヤベエ!!

ーいや、バッチリ使わせてもらいます(笑)。その辺も含めてプロスケーターは憧れの存在なんだってことで。

ってところで次の話題にいきたいんですけど、池田さんって言ったら昔から格闘技が好きですけど、ハマったきっかけって何だったんですか?

最初に興味を持ったのは小学生、90年代後半のK-1全盛期ですね。当時はコロコロコミックでK-1の選手が漫画になってて、キャラクターみたいな感じでアンディ・フグとかマイク・ベルナルド、ピーター・アーツやアーネスト・ホースト、日本からは武蔵なんかが出てたんです。実際TVでもやってたし、アンディ・フグなんて強麺とかのCMにも出てたから、それからもうずっと見てますね。あの時代はボクシングも辰吉丈一郎とか畑山隆則がいて、スターが揃ってたなと思いますね。

Andy Hug vs Mike Bernardo – K-1 GP 96 FINAL

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現在はこの世にいない2人の3度目の試合。今までベルナルドがKO勝ちだだったところをアンディ渾身のリベンジを達成

Peter Aerts vs Jerome Le Banner – K-1 GP ’99 FINAL

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何年か後にこの二人は同じジムで練習をする仲になると言うストーリーがある、それを知ってから見るのも面白い試合

ーその流れで2000年代はPRIDEの人気も高まりましたし、格闘技が大晦日のTV番組を独占してましたよね。

2000年代後半くらいまでの盛り上がりはすごかったですよね。自分の世代だとアンディ・フグから始まって、ミルコ・クロコップとかヒョードルが出てきて、日本人なら魔娑斗と山本KIDがいて、そこに五味隆典がいてとか、そういうのは全てオンタイムで見てきましたよ。

それで彼らの試合前の煽り映像からの、試合でボコボコにしていくところとか「この人たち超ヤベエ!!」みたいな感じですごく影響を受けましたね。それから今までずっと見続けてますよ。

HERO’S 05′ 所英男 vs アレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラ

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闘うフリーター初の地上波。一夜にしてシンデレラボーイとして世に名前が知れ渡った衝撃の試合。何度見ても泣けるとは池田幸太談。

ずっと人生の参考にしてる

ー自分は池田さんの活動は若い頃からずっと見てきたので、それを聞くとファイターの生き様というか気概みたいなものに通ずる部分があるようにも思えます。

確かに自分の生き方に近いかもしれないですね。というより、ファイターたちにはドキュメンタリービデオからも影響を受けてきたし、自分が出た『LOSS TIME WITH NIXON』もそうですけど、俺がよく見てる格闘技団体のRIZINも、試合後にRIZIN CONFESSIONSって言って控え室の感じから煽りの映像とか、このパンチが痛かったとか、そういう試合以外の部分にもフィーチャーした映像があるんですよ。

格闘界のそういった試合だけでは見えない演出とかも、自分はスケート業界に置き換えて自らの活動を考えてみたりとか、ずっと人生の参考にしてるじゃないですけど、そんな感じかもしれないです。

格闘技はエンターテインメント性もあって華もあるから、盛り上げ方とかそういうところもひっくるめて、ジャンルは違えど多大にリスペクトしてますね。

『【番組】RIZIN CONFESSIONS #47』

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絶対王者の堀口恭司に朝倉海が秒殺KOの大番狂わせ。その裏側、地から這い上がった朝倉の喜びと、チャンピオンとしてい続ける難しさを改めて知った堀口のなんとも言えないリアルさにグッときた。(池田幸太談)

ーファイターは負けたら終わりの世界だから、煽りの時点から勝負は始まってますよね。

そう。だから例えハッタリでもいいから言い続けて、それを実現させたら夢があるみたいなところにビビッとくるんですよね。まあそこはスポーツ全般に言える部分でもありますけど、自分が育った足立区はそういうのが身近な世界だったんですよ。それこそ漫画の『クローズ』みたいな世界で、ケンカとかも日常茶飯事だったと言うか。

だからその延長線上でケンカが強かったヤツらは格闘技に行くみたいな感じで、自分はたまたまスケボーが得意だったから、スケボーに行っただけなんです。実際に地元でむちゃくちゃケンカが強かったヤツとかは、地下格闘技に出てたりしましたからね。そういうのもあるから格闘技はより身近に感じるし、本当に参考にもなるし良い影響にもなるから、すごく尊敬しているんです。

何をやっても思い通りにならない可能性がある

ーではどんなところにスケートボードとの違いを感じますか?

スケートボードって、結局は個人競技なんですよ。だからコンテストも結局は誰がどれだけ練習したかが結果に出るだけと言うか、「どうせ練習している奴が勝つんでしょ」みたいなところも否定できないと思うんですよね。もちろんそれで全てが決まる訳ではないですけど。

でも格闘技の場合は相手がいるから、自分がこういう練習をしてこれを出そうと思っても、相手がその裏を読んで違うことを出してきたら負けちゃう訳じゃないですか!?

そこでやってるのって本当にヤバいなって思うんですよね。何をやっても思い通りにならない可能性があるってすごく大変な世界だと思っているし、そういう世界だからこそ尊敬もあるし、ずっと好きであって、影響を受け続けているものなんですよね。

ーそれだけ好きなら、JASON RODMANは格闘技が好きな媒体なわけですが、今後の格闘家と絡む企画とか業界をクロスオーバーする動きをしていったら可能性はさらに広がっていくんじゃないですか!?

そこまでいけたら光栄ですし、そこは目指すところの1つですよね。お互いのYouTubeチャンネルに出演したりっていう、違う業界とのコラボは是非やってみたいです。

格闘家も最近皆始めてるから、実は結構コアなところまで見てるんですよ。JASON RODMANがクリエイティブで入ってた武尊さんのチャンネルももともと見てたし、今回インタビューの話をもらった時もサイトには好きな格闘家しか出てなかったから、もうなんでも協力しますよって感じでしたね(笑)

でも仮にコラボするとなった場合、俺が格闘家の蹴りを受けてみたりって言うのは全然いいんですけど、自分のチャンネルでスケボーをしようってことになったら、俺は格闘家を本当にリスペクトしているから、ケガだけは本当に気をつけないとなって思いますね。本当に格闘技が好きだからこそ、本業に絶対迷惑はかけられないと言うか、そういう面では複雑な気持ちもありますね。

メディアを通したインタビューじゃないとありえない

ーけどそういう交流こそ、個人がメディアになれる今、メディアができる重要な役割だと思いますけどね。しかもそのメディアに自分の特大インタビューが掲載されるのって特別な思い入れがあるんじゃないですか?

YouTubeとは違って1人の力じゃ間違いなくできないですからね。こういうと失礼になっちゃいますけど、過去のスケートボード専門誌の表紙よりも嬉しいかもしれないです(笑)。まあそれは冗談だとしても、本当にアガりましたね。

やっぱり自分が好きな異業種の人と同じメディアに出れるのは嬉しくてしょうがないです。実は、昔山本KIDさんが表紙のOllieマガジンに出たことがあるんですけど、その1冊は未だに家にあるし、キレイに保管しているんですよ。

今までもスケートボード頑張ってきて良かったなって思ったことはありましたけど、間違いなくこれもその1つですね。こういう共演はメディアがないとできないので、自分はまだまだ必要だと思いますね。

こういうバイブスで仕事ができるのは、メディアを通したインタビューじゃないとありえないので。

ーそれに今回のインタビューだけじゃなくて、今後はYouTubeチャンネルも一緒にやっていく訳ですしね。ではベタですけど、次は好きな映画とか音楽について聞いかせてもらえますか?

映画は最近そこまでビビッときたのはないんですよ。ただ音楽に関して言うなら、好きというより影響を受けたのはラッパーのKOHHですね。ほぼ同い年で彼は王子の出身なので、自分の家から墨田川と荒川を挟んだ反対岸の出身なんですよ。

そういうのもあって、そのうち何かしらで繋がることもあるのかななんて思ってたら、5年前にトランスワールドのインタビュー録りで会社に行った時に、向こうもwarpの取材で偶然にも来ていたんですよね。そこで話したらKOHHのプロデューサーが足立区の人で、しかも元々スケーターだったから自分のことも知ってくれてたんです。そこで意気投合して、ライブのリハーサルが終わった後とかちょくちょくご飯に誘ってくれるようになったんですよね。

『KOHH – ”飛行機” Official Video(Dir Havit Art Studio)』

YouTube

数あるKOHHの曲の中でも幸太がもっとも好きなものの1つと語る「飛行機」

スケートボーダーとしての打ち出し方

ーまたそこでスケートボードが世界を広げましたね。

そうなんですけど、そこで聞いたKOHHのこだわりが本当に凄くて。例えばメディア出演に関しては、ダサいものには一切出ないし、武道館でライブがあったら、例えばその周辺の飲食店、それだけじゃなく、会場までの道のり、移動途中のコンビニなんかでも一切ファンはKOHHには会えないんですよね。

そういうレア感のようなものを大切にしているところには影響を受けたし、自分のスケートボーダーとしての演出とか打ち出し方の面で凄く勉強になりましたね。だから音楽では唯一KOHHに影響を受けたかな。

ー池田さんは数多いプロスケーターの中でもキャラクターが際立っていると思ってましたけど、そういう経験があったからなんですね。今回はプライベートな面も聞けたことで、よりリアルな一面を垣間見れた気がします。ではこの辺で4部にかけて行ったロングインタビューを締めたいんですが、最後に何かありますか?

今までいろんなメディアでインタビューを受けてきましたけど、今回が最も濃い内容になってると思うし、一番喋ったかな。ただ、それでもまだ自分の一部分しか表現できてないと思うんですよね。

このインタビューを読んで、もっと自分のことを知りたい、自分と絡みたいって思ったら、YouTubeページのコメントでもなんでもいいけど、今はいろんなツールがあるから、そういうのを活用して積極的に絡んできてほしいですね。

自分が若い頃は、とにかくそうしてがむしゃらに動いて結果を出してきたと思ってるから、そんな勢いのあるヤツがいたら会ってみたいし、何か面白いことができるんじゃないかなって思ってます。

次はYouTubeで会いましょう!

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