快進撃のUSハードコアヒップホップシーンに注目

今年8月にJay-Zが代表を務めるRoc Nationとマネージメント契約を結んだ事でも話題となったWestside GunnとBenny The Butcher。

これに続き彼らと同じGriselda Recordsに所属するConway The MachineもRoc Nationと契約間近と噂されている。
ディストリビューション契約を結んでいるEminem率いるShady Recordsからは待望のGriseldaのクルーとしてのデビューアルバムがリリース間近ということで世界中のコアなヒップホップヘッズ達が心待ちにしていることだろう。

今やUSのハードコアヒップホップシーンを牽引するGriseldaの面々。
主要メンバーはWestside Gunn/ Conway The Machine/ Benny The Butcherの3人であり、Westside GunnとConwayは腹違いの兄弟でBennyは彼らの従兄弟という本当の意味でもファミリーで結成されているレーベルである。
ニューヨークのバッファローという全米でもデトロイトに次ぎ2番目に貧困な都市で生まれ育った彼らは、リリックの内容からもわかるように過酷な人生を歩んできている。

あまり知られていないが実は彼らのキャリアは長く2000年代前半からラッパーとして活動をしている。ただ当時は音楽よりもストリートライフに重きを置いていたが故に様々なトラブルに直面し音楽に集中することができずにいた。当時のクルーのメンバーでBennyの実の兄弟でもあったMachine Gun Blackが殺され、続けざまにWestside GunnとBennyは刑務所に服役をした。Westside Gunnが出所した直後にはConwayが何者かに背後から後頭部を撃たれて重体に。一命は取り留めたものの銃撃の影響で神経の一部を損傷し右の顔面に麻痺が残ることになる。

これらの出来事を受けてWestside Gunnは真剣に音楽で生きていく道を考え始めたという。
出所後に同郷のプロデューサーDaringerとリリースした『Hitler Wears Hermes Vol.1』で周囲の反響を呼んだ事で自身のスタイルに確信を持ち、続いてリリースした『Hitler Wears Hermes Vol.2』でアンダーグラウンドシーンにてその名が広まるようになる。2016年にリリースしたファーストアルバム『FLYGOD』は多方面で高評価を得てヒップホップシーンの大御所達からも注目の的になる。

ConwayやBennyもWestside Gunnに続き、精力的な作品のリリースやラジオステーションでのフリースタイルが話題を呼びGriseldaの名がアンダーグラウンド枠を飛び越えシーンを席巻していった。

Griseldaのサウンドはハードな環境での生活の中にあったグライミーな要素が根本にあり、そこにそれぞれのオリジナルのスタイルが混ざることで唯一無二のハードコアヒップホップを生み出している。

Westside Gunnは特徴的な声とフロウ、自らの経験に基づいたリアルなリリックはもちろんGriselda RecordsのCEOとしての圧倒的なカリスマ性がそのスタイルに現れている。自身でデザインするクロージングラインでも見て取れるようにファッションやアートにも強く精通しており、ドープなセンスの塊であることがわかるだろう。彼らがコアでハードな音楽を追求しながらもアンダーグラウンドの枠を越えて支持されているのは時代に取り残されないアップデートされたファッションやライフスタイルも大きく影響しているのであろう。

Conwayに関しては前述の通り銃撃による顔面麻痺というハンデを追いながらも、逆にその怪我のお陰でラップに箔が付きサウンドも内容もドープになったと本人も語るようにハンデを武器にハードな環境をサバイブした生き様をラップで表現し多くのコアラップファンを魅了している。
2017年に他界したMobb DeepのProdigyもConwayのラップに惚れ、自らファンであり一緒にレコーディングしたいと直接伝えたというエピソードもある。
Shady Recordsからリリース間近のGriseldaのデビューアルバムに加えConway自身のセカンドアルバム『God Don’t Make Mistakes」も同レーベルからリリース予定で今後の更なる活躍が期待されている。

Benny The Butcherはまたの名をthe Griselda Shooterという。
その名の通り数々のラジオステーションで殺人的なフリースタイルを披露しシーンに衝撃を与えた。Griseldaの第3の刺客でありながら常に最前線に立ってマシンガンの如くラップを吐くまさにShooterだ。

フリースタイルだけではなく作品も評価されており、その証拠に昨年のJay-Zが選ぶTidalのお気に入りプレイリストにはWestside Gunn & Benny The Butcherの「Brutus」がピックされていた。また、2019年のXXL Freshmanの表紙へのオファーを断るようJay-ZがBennyへアドバイスしたというエピソードもある。XXL Freshmanに選ばれることがもはやドープなことではなくなり、Bennyのブランディングをそこまで気にするほどJay-ZがGriseldaを気に入っているという証であろう。
8人兄弟で母親はドラッグ中毒、14歳でヘロインを売り捌き、服役中に兄弟を殺される。そんな過酷な人生歩んできた経験が彼のラップに色濃く繁栄され今や音楽業界の頂点に立つ男までも魅了しているのだ。

彼らの弟分であるElcaminoも着実にラッパーとしてのキャリアを積み上げており、クルーの若手として今後が期待されている。
そして共にバッファロー出身であるDaringerやCamoflauge Monkといったプロデューサー陣が相性抜群のGriseldaサウンドをデリバリーすることで唯一無二のスタイルが完成されるのだ。

Griseldaの存在は彼ら自身のプレゼンスだけでなくシーンにおけるハードコアヒップホップの存在意義を再定義する後押しとなり、彼らを取り巻く多くのアーティストたちもこの波に乗ってシーン全体で盛り上がりを見せている。
彼らが口癖のように使う「Culture」という言葉の通り、ステージが変わっても本物のスタイルを追求し続ける姿が昨今ヒップホップカルチャーの繁栄の原動力になっているのは間違いないだろう。

Griseldaを始めとする現在進行形ハードコアヒップホップの快進撃に今後も目が離せない。

Payday Records/YouTube

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