謎のアーティスト「Pejac」は刑務所の壁に何を描く

1907年、スペイン北部に建設されたエル・ドゥエソ刑務所。高い塀に囲まれた無数の独房、そして、塀の上に仕掛けられた有刺鉄線には、囚人たちの想いを表すかのように、外の世界へと飛び出すことができずに放置されたままのバスケットボールの姿があった。

カードゲームに興じる者や、体を鍛える者、監視カメラが睨みを利かせるこの“塀の中の世界”では、囚人たちがその有り余る時間を潰す方法は限られている。昨日までと変わらぬ時間と行為を、今日も明日も続けていくのだろう。

そうしたなか、フラリと現れた1人の男。彼は、数多の囚人たちがここで過ごした歳月を記録するかのように、何もない塀に記を描きはじめる。すると、それに協力する者たちも加わり、彼らはひたすらにその印を描き続け、いつしかそれは緑ゆたかな1本の大木を描いた壁面アートへと姿を変えていく。

来る日も来る日も無心で筆をとり続け、冷たい塀に緑の大木を描き続ける男たち。彼らはさらに、空いたスペースや、味気ないバスケットゴールを使って、トリックアートを施した。やがて、これらの作品は、無味乾燥な空間で暮らす者たちに、独特な癒しを与えるものとなっていった。

これは、謎のアーティストとして知られるPejac氏が手がけた“Gold Mineプロジェクト”の様子を記録したプロモーション・ビデオ。彼はここに収監されている者たちの境遇に想いを馳せ、「人間の状態の価値」「逆境への抵抗」「創造する必要性」をテーマに、こうしたプロジェクトを思い立ったのだという。日本でも話題となったイギリス出身のストリートアーティスト・バンクシーと同様、素性こそは謎ではあるものの、その志が示すものは明確であるといえそうだ。

Pejac/YouTube

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