アートは「作品の力が全て」は誤解 日本人がゴッホを好きな理由

ビジネスにおいて顧客を動かすためには、「物語(ストーリー)」が欠かせない時代となっている現在。人間は感情で動く動物であり、因果関係の網の目であるストーリーを紡ぐことで記憶に残り、理解も促されるというセオリーだ。

転じて、「物語力」はアートの世界でも幅を利かせていると、銀座の画廊オーナーの髙橋芳郎氏は自著『アートに学ぶ6つの「ビジネス法則」』(サンライズパブリッシング)の中で述べている。

曰く、「アートには言葉が必要なく、見て感じる作品の力が全て」という考え方には誤解があるという。

日本で一番の人気を誇る画家として挙げられるゴッホ。彼の場合、作品の力もさることながら、人々を強く惹きつけているのは、悲哀に満ちた数々のエピソードからなる悲劇的な人生のストーリーにもあるという。実際、ゴッホの生涯を描いた劇場用長編映画が多数公開されていることも、それを裏打ちする事実だろう。

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他にも画家の人生は映画の題材としてよく使われており、35歳で病没したモディリアーニ、幼少期の怪我で障害者となったロートレック、南国タヒチに逃避し自殺を図ったゴーギャン、ヘロインの過剰摂取により27歳で亡くなったバスキア……これまでに複数の伝記映画が製作された画家の多さには驚かされる。

だが、アートにおけるストーリーとは、画家の生涯という壮大な視点のものだけではない。展示会を偶然通りかかった某スーパーモデルが作品に一目惚れし、一気に世間の注目を集めたという画家のメタ的なストーリーや、17世紀に亡くなってから19世紀にとある批評家から再評価されるまで忘れ去られていたというフェルメールのシンデレラ・ストーリー。その後の画家の評価に大きく影響するオークションの落札価格を、手を組んで釣り上げようと画策する美術商たちの存在といったものまである。

絵に限らず、モノはただそこにあるだけではただのモノ。そこにストーリーが1つ加わることで、お客様の見方を大きく変えることに繋がる。銀座で30年にもわたり画廊を経営してきた高橋氏の経験や知見に基づく言葉からは、「物語力」をビジネスで有用化させるためのヒントを得られるはずだ。

永遠の門 ゴッホの見た未来 ©︎Walk Home Productions LLC 2018

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