谷垣健治、『スネークアイズ』は「るろ剣のイメージを話すことは多かった」

我らが谷垣健治が、ハリウッド大作で実力を見せつけた。映画『G.I.ジョー』シリーズ最新作にして、コミックでも最人気キャラの一人である“スネークアイズ”の誕生秘話を描く『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』は日本でも大々的なロケを行った、過去最大規模の“忍者”アクション映画だ。

ハリウッドからヘンリー・ゴールディングやサマラ・ウィーヴィング、日本から平岳大らが参戦し大きな話題を読んでいた本作について話を伺うべく、中国の谷垣アクション監督にオンラインインタビューを敢行。谷垣アクション監督が明かす撮影秘話を頭に入れておけば、この映画を何倍も楽しく鑑賞できるはずだ。

本人たちも“アメリカ人が考える日本”と分かってやっている」

―今回はアクション監督として、初のハリウッド大作になりますか?

ずっと昔にスタントマンとして『モータルコンバット2』(1997年)とか、マーシャルアーツコーディネーターとして『ブレイド2』(2002年)とかはやってましたけど、2ndユニット監督としてやるのは初めてですね。

―撮影現場では、本作の製作スタッフから谷垣さんを絶賛する声が上がっていたそうです。今回のオファーの経緯は?

2019年の2月ぐらいに、急にプロデューサーのジェニファー(・メドロフ)から電話があって、「5月ぐらいから空いてるか?」って言われたんですよ。でも、そのときは『るろ剣』の最終章を撮ってたので、「ちょっと空いてない」ってことで一回断ったんです。その後、3月くらいになってから「一度東京にロケハンに行くから会わないか」って話になって。そこで監督のロバート(ロベルト・シュヴェンケ)や他のプロデューサーたちと初めてミーティングしたんですよ。

その時点で脚本はいただいていて、単純にその感想だとか僕が思った疑問だとかを伝えました。それにロバートが一つ一つ答えてくれて、その上で彼がやりたいことや好きな日本映画の話とかを聞かせてもらったり。そういう中で「なんか面白そうだな」と思ったんですよね。結局、その時は夏に中国映画を一つ撮る予定があったので、「(2020年の)1月からの日本パートだったら参加できそう」っていうことで、最初のカナダパートには日本のスタントマンとかを派遣してトレーニング~撮影をやってもらうことになるかも、みたいな話をしたことを覚えています。

その後、やる予定だった中国映画が延期になって空きができたので、8月からのバンクーバーにも行けることになって、基本的には頭から終わりまで全部参加しました。だから当初はオファーを2回断ってたんですよね。生意気ですよね(笑)。

―他の作品の撮影との調整が多々あったとのことですが、『るろ剣』組やドニー・イェン組といった他作品と、本作の撮影現場との一番大きな違いはなんでしょうか? 規模感や段取りなど含めて、大きく「ここが違う」と感じた部分は?

やっぱりハリウッド映画のシステムですよね。システマチックだけれども、結局、最後は彼らも力技でやるんだなって感じでしたね(笑)。つまり、ちゃんと色々構築した上で、最後は“軍隊”ですよ。無理くりでもミッションを遂行する。今回特に思ったのは、アメリカの助監督、1stのADとかっていうのは、軍隊の司令官みたいだなあって。日本だと、1stの助監督って現場には行かずにスケジュールを切ったりしていて、現場を回すのは2ndだったりする。で、3rdは衣装、4thは小道具……みたいな感じで各パートごとに担当が分かれるんだけれども、向こうではとにかく1stのADがガンガンに働いて、ガンガンに現場を動かすから。

日本ロケとかでも普通にやってたら本来やりたかったことを、色々な事情で諦めなきゃいけなかったりするじゃないですか。交通規制があったりして「ここは撮れなくなりました」とか、スケジュール的に無理があるとか。そこが日本だと、みんな暗黙の了解で「まあ、しょうがないよね」っていう感じになるところが、彼らは「とにかく撮るんだ!」と、とりあえず撮れそうなものはなんでも撮って帰る。
それを見ていて、2ndユニットの撮影監督をやってくれてた石坂(拓郎)さんと「たくましいよね、この人たちは」みたいな話をしてました(笑)。

―どこがどう優れてるというよりは、やり方が根本的に違いますか?

そうですね。やっぱり、この規模の映画である程度のものを任される人は、それぞれが優秀だなと思いました。それは撮影効率とか労働時間とか、そういうところもあるんだけれども、プロデューサーやADもバリバリに働きますね、ずっと。だから現場での労働時間というのは、もちろんみんなを守るために作られているんだけど、上の人は常になんか働いてるなって感じですね。すごくパワフルだなと思いました。

―労働環境としての安全性は守りつつ、やらなきゃいけない人はやることをすごくやる、と。

すごくメリハリが効いてるなと思います。その辺がちゃんと守られているから、いわゆる“やりがい搾取”とか、そういうものがなくていいなぁと思いました。カナダのスタントマンとか、いろんな手当がついて1日で30〜40万円くらい支払われたりするのを見るとちょっとね(笑)。そういう意味では、恵まれてるなぁとも思いました。

『るろ剣』のイメージを話すことはすごく多かった

―『るろ剣』やドニー組から取り入れたアクションなどはありますか?

みんな『るろ剣』とかドニーとやった作品は観てくれているし、今回は刀のアクションが多かったので、『るろ剣』のイメージを話すことはすごく多かったですね。「これを撮影した時はこんな感じだった」とか。特に、今回の日本ロケでは『るろ剣』の「京都大火編」と「伝説の最期編」でも使ったワープステーション江戸でも撮影したので。

最初のロケハンで来た時に僕はまだ合流してなかったんですが、プロダクション・デザイナーのアレックが「日本にすごくいい場所がある。ワープステーションっていうんだ」って(笑)。日本の旧跡とかで撮ると思ってたら、「ワープステーションって、撮影所じゃねえか!」と。だから「『るろ剣』も実はここで撮ったんだよ」って言って、ワープステーションで撮ったパートを全部まとめて彼に渡したんですよね。だから、そういう点では参考になったんじゃないですかね。

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本編では使われていませんが、主演のヘンリー・ゴールディングが走った屋根は、実は(佐藤)健さんが『るろ剣』でも走っている屋根と同じ。それも別にパクっているわけじゃなくて、実際にワープステーション行ったら「まぁ、ここは走るよね」って思わせる場所なんですよね。だから「京都大火編」で健さんや江口洋介さんが戦っていた橋も、すごくシンボリックに使える場所なので「橋を挟んで両軍が戦う場所になるよね、そりゃ」っていう(笑)。そういう意味では『るろ剣』全体のアクションだけじゃなく、各スポットでのステージングも意識してるというか。でも、どんな作品でも自ずとそうなる場所だとは思いますけどね。

―勝手知ったる場所ということで、イメージの共有もしやすかったですか?

しやすかったですね。彼らもすごく勉強してるし色々とリサーチしてるんですが、日本人の僕らが「すげー!」って言うことが、彼らにとっては一つ安心できる部分でもあったんじゃないですかね。僕らもそうじゃないですか。アメリカ人がちゃんと「これいいね!」って言ってくれたら、これは海外でも大丈夫だと思える。そういうところはあったかもしれないです。

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『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』は2021年10月22日(金)全国ロードショー

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