谷垣健治、『スネークアイズ』は「日本が舞台のアクション映画としてちゃんと楽しめる」

我らが谷垣健治が、ハリウッド大作で実力を見せつけた。映画『G.I.ジョー』シリーズ最新作にして、コミックでも最人気キャラの一人である“スネークアイズ”の誕生秘話を描く『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』は日本でも大々的なロケを行った、過去最大規模の“忍者”アクション映画だ。

ハリウッドからヘンリー・ゴールディングやサマラ・ウィーヴィング、日本から平岳大らが参戦し大きな話題を読んでいた本作について話を伺うべく、中国の谷垣アクション監督にオンラインインタビューを敢行。谷垣アクション監督が明かす撮影秘話を頭に入れておけば、この映画を何倍も楽しく鑑賞できるはずだ。

『るろ剣』から引き継がれた“急所”を打ちにいくリアルな殺陣

―本作の殺陣は、『るろ剣』の“叩く”殺陣とは大きな違いはありますか?

今回は“斬る”アクションだから“叩く”というのとは違いますが、型の使い方とかは似てるところがあると思いますよ。同じ形状の刀ですから。いずれにしても最初は、本当に打ち込む、という練習をひたすらするわけです。ここの目標に向かって、打ちこむ、叩く、当てるっていうね。パンチとかの打撃でも同じなんですけど、「当たったら危ないから(はずして逸して)ここを斬る」とかじゃなく、「ここに頭があるから斬る」とか「喉を狙う」とかっていう、「打点の狭い戦い方」というのは一貫して僕らがやってることです。 「ちゃんと狙いすました戦い方をしてね」っていうのは、すごく口を酸っぱくして言ってました。そういう点では『るろ剣』と共通してるかもしれないです。

―ヘンリー・ゴールディングは『るろ剣』ファンだそうですね。谷垣さん自らトレーニングも担当されたということですが、そういった殺陣なども一から叩き込んだのでしょうか?

彼は元からうまかったから、叩き込んだっていうとこっちが一方的にものを教えたみたいな感じでイヤなんですが、一緒に「スネークアイズとしての戦い方」を模索していったということです。

2019年の8月6日に僕がカナダに行って、ヘンリーに決まったのが8月末くらいだったかな。そこから彼がバンクーバーに来て、そのあとは毎日一緒にやってましたね。日本だと俳優さんはみんないろんな仕事を縫うから「今週はこの日とこの日が空いてるので練習に行きます」とかなんだけども、アメリカのプロダクションは基本その期間は完全に拘束するじゃないですか。ヘンリーもずっとバンクーバーにいて、毎日プロダクションに来て、午前中は3時間くらい監督と芝居のリハーサルやって、そこから僕らのところ来て4時間くらいアクションの練習やって、そのあと筋トレみたいなことをやって……もう、ずーっとやってましたね。

しかも彼は途中で他の作品の宣伝のためにニューヨークやロンドンに行ったりすることがあったんだけれども、「そこでも練習させたい」ってプロダクションが言うので、僕が87eleven(※『ジョン・ウィック』シリーズのチャド・スタエルスキ率いるスタントチーム)の人に頼んで現地で練習を見てもらったりとか。とにかく1回このプロダクションに入れた人間は毎日、何があっても練習させるっていう感じで、その辺の徹底ぶりはすごいなと思いました。

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アクションという共通言語を持つイコ・ウワイスとの仕事

―今回イコ・ウワイスもかなり重要な役で出演していますが、撮影中のエピソードがあったら教えて下さい。

イコはバンクーバーパートから参加していたので、よく一緒にご飯を食べに行ったりしました。日本の撮影でも同じホテルだったし。東宝のスタジオで日本パートの準備をしていたときも、他の役者はクリスマス休暇を取ってもらったんですが、イコだけインドネシアから来日してもらいました。なぜかというと、イコのアクションはイコにしかできないものだから、僕らが作ったアクションをイコがやったらどんな感じになるのか、試してみたかったんですよね。

イコは普段の作品だと武術指導もやってるから、自分でアクションを作ろうと思ったら作れるし、撮れてしまうわけです。でも今回は僕がアクション監督で入っているということで、一回ちゃんと身を委ねてくれたというか。だから彼も「好きなように作ってみて」という感じで任せてくれたので、僕らも「こちらで一回アクションのベースのようなものを作るので、そこから一緒に作ろう」って感じでの共同作業でした。

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イコは僕らと同じくずっとアジアでアクション映画を作ってきた、どちらかというと僕ら側の人間というか、「アクション」という共通言語を持ってるんですよね。例えば、違う国のミュージシャンどうしが初対面でもセッションしながら微調整していくような、それのアクション版という感覚でした。

「イコ、ここはこういうつもりで作ったから、こんな感じで」って言うと、イコはイコで「ここはこういう感じでやってみたいから、ちょっと変えていい?」みたいなことがあったり。それはすごく愉快なやり取りだったというか、僕からすると「イコがやったら、これがこういうニュアンスになるのか」とか「なるほど、これをやるからイコっぽさが出るのか」みたいなことが分かったりもしたので。すごく楽しい経験でした。

実はイコとは過去にも2回ぐらい仕事する機会があったんですが、スケジュールが合わなかったり企画自体がなくなったりしてたので、今回はいい機会だったと思います。僕は今回は2ndユニット監督とファイトコーディネーターをやったんですけど、スタントコーディネーターがキマーニ(・レイ・スミス)という人だったんですよ。彼はイコが主演の『五行の刺客』というNetflixのドラマでのスタント・コーディネーターでもあったので、イコのことも僕のこともよくわかっている。僕らがちゃんとやれるようにキマーニがすごく円滑に進めてくれたというか。キマーニ、いいやつなんですよ(笑)。そういうところの組み合わせもすごく良かったですね。

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いま忍者を描くならフィジカルな方向で

―中盤で『悪女/AKUJO』や『ジョン・ウィック』を思い起こさせるバイクチェイスとチャンバラをミックスした非常に激しいアクションシーンがありますが、どこまで実際に撮影されたのでしょうか?

高速道路のアクションシーンはバンクーバーで撮りました。ちゃんと右ハンドルの日本車を用意して、タクシーの外観、ナンバープレート、右側通行など全て日本仕様にしてにして、ちゃんと(道路で)撮ってます。車上でのフィジカルなアクションなんかはスタジオで撮ったりしてますけどね。実際に高速道路で撮ることもできるし撮る案もあったんですけど、僕としては実際の道路で役者がビビりながら演じても意味はないと判断したので、スタジオでちゃんと撮りたいって言って。ヘンリーがキャリアカーの上で戦うシーンとかは、スタジオで安全な状態で撮ってます。

―実際に道路で撮るとなると、足枷が多くて逆にモタつきそうですよね。

そうなんですよ。ちゃんと道路で爆破させたり、カークラッシュさせたりするのはすごく大事だと思うんですけども、道路の上で十数人の人間が、落ちても大丈夫なように安全な仕組みの中で恐々アクションをやるということに、何の得もないと僕は思った。スタジオパートは僕が撮ったんですけど、それは「リアルだけど危ないだけのシチュエーション」より「ブルーバックだけど、安心して芝居ができるシチュエーション」の方が大事だと考えたからです。

―『スネークアイズ』は忍者アクションということで、最初に制作側から「殺陣の中に忍者的な要素を入れたい」といった要望はあったんでしょうか??

(ストームシャドー/トミー役の)アンドリュー(・小路)とかは結構提案してくれましたね。でも忍者も「忍術」とか「忍法」の方向にいくと、むっちゃ微妙じゃないですか(苦笑)。

たとえばアンドリューが言った「俺がこうやってパッと消えて、向こうに現れるんだ!」とかってアイデアが、僕にはどう考えても面白くなると思えなかった(笑)。それが忍者というとてもフィジカルに優れた集団ということだったらアリだと思うんですけど、忍法の“ドロン”の方向だったから、「それはちょっとないと思う」と。

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―ではリアルというよりも、現実的な忍者像にすり合わせるような作業は発生した?

いわゆる日本の“忍びの者”的なもの作品を、監督のロバートはすごくよく見ていて。嵐影一族って、忍者なのに屋敷にハイテク設備があったりとか、ちょっと変わってるじゃないですか。

だからハイテクなのかアナログなのかよく分からないけれども、ロバートは「それこそが今の日本っぽい」ということは言ってましたね。やっぱり忍者は武器を持っている集団でもあるわけだから、そこで“ドロン”だと、やっぱりちょっとおかしい。“忍者っぽさ”っていうことについては、すごく話し合った記憶がありますね。でもロバートと僕の考え方としては忍法のほうではなく、あくまでフィジカルで魅せるっていう。

アクションシーンは全部、僕が繋げたものを渡してます

―アンドリューのアイデア出しの話が出ましたが、現場で他のキャストやスタッフなど、印象的なやりとりはありましたか?

みんな言いたいこと言いますからね、面白かったですよ(笑)。本編で使われているか分からないんですが、ウルスラ(・コルベロ:バロネス役)とかは眼鏡が印象的なキャラですよね。ウルスラが「アクションシーンで1回メガネを落として、最後にメガネをかけなおしたい。そうすれば私のメガネをかけてる顔と、メガネをかけてない顔の両方が売れるから」って(笑)。でも、それをすごくストレートに言ってくるから、こっちも「それいいね!」とか「それはあんまり……」ってことを濁さず答えられる。この時はいいな、と思ったので採用させてもらいました(笑)。

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―やりとりの風通しがいい感じですか?

もちろん、彼らにはエージェントとかパブリシティの人がいるんだろうけど、現場レベルでは一人で来て一人で帰る人たちなので、そういう意味ではすごく風通しが良いというか、意図がダイレクトに伝わりやすい。基本的に面倒くさい人はいないですよ。というか、すごくいい人ばかりだったですね。みんなでゴールデン街に行って、劇中のゴールデン街(っぽいセット)と見比べたりね。「オー、ホンモノだ!」って(笑)。日本で羽を伸ばして遊んでましたね(笑)。

―サムライや忍者など、オトコノコ的な共通項もありますね。

ヘンリーもアンドリューも刀とかアクションがすごく好きで。撮影中は住んでるところも同じだったから一緒にご飯に行ったり、ヘンリーがすごく美味いラーメン屋さん見つけてきたり(笑)。バンクーバーの「ラーメンマン」っていうお店なんですけど(笑)。

―谷垣さんが手掛けるアクション映画のファンの皆さんに、『スネークアイズ』のここに特に注目してみると面白いかも、という部分を教えて下さい。

まだ僕も完成版を観てないんですが、アクションシーンは全部、僕が編集したものを渡してます。それがどういう風に分解されているのかわからないですが、ロバートは最初に会った時から「自分はすごく三隅研次(『座頭市』シリーズほか)などの映画が好きで、こういうサムライ的な映画がやりたかったんだ」ということを言ってたんです。
その一方で、例えばオープニングのL.A.での集団バトルのシーンなんかは、彼は深作欣二の大ファンでもあるから「ここはヤクザの抗争みたいな感じで撮りたい」とか。それぞれのシーンによって、彼がモデルとした作品が違ったりするわけです。それこそ終盤のカーキャリアのシーンは『ジョン・ウィック』っぽいイメージもあるでしょうし。

そういう意味では、いろんなシーンに違ったテイストが入っているんですよね。だから『G.I.ジョー』映画として観なくても楽しめるんじゃないかなと。もちろん『G.I.ジョー』として観る人はスカーレットやバロネスの登場の仕方とか、「こうやってストームシャドーになったのか!」というふうに楽しめるだろうし、全く予備知識がない人でも日本を舞台にしたアクション映画として、ちゃんと楽しめると思うんですよ。『スネークアイズ』は“誕生”の話、つまりゼロから観られるので、そういう意味では頭を空っぽにして観てくれたらいいかなと思います。

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『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』は2021年10月22日(金)全国ロードショー

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