“ジャングルの決闘” モハメド・アリに負けたフォアマンが語る真実

“ジャングルの決闘”と呼ばれたモハメド・アリvsジョージ・フォアマンの伝説的マッチ。25歳の圧倒的王者フォアマンに、32歳のアリが奇跡的な逆転劇を演じたこのマッチを知らないボクシングファンはいないだろう。1974年10月30日、ザイール共和国(現・コンゴ共和国)の首都キンシャサで行われたことから“キンシャサの奇跡”とも呼ばれるその試合を、人気コメンテーターのマックス・ケラーマンとフォアマン本人が振り返った。

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「うちのプロデューサー曰く、“ジョージはずっと『あの試合はズル勝ちされたんだ!』って主張してたってことなんだけど、それは本当ですかジョージ?」とマックスがのっけから核心を付く。するとジョージからは意外な答えが。
「わっはっは! “不当な負け方だった”とでも言って食い下がらなければ、もうカムバックする気がないと思われるからね。あの頃は大変な時代だったんだよ。そして大変な試合だった。敗北を認めるのは簡単なことじゃなかったのさ」

フォアマンが最も熱く若く、青春の真っ只中に行われたこの試合、年齢的にもフォアマンの圧勝と誰もが思っていたが、結果はまさかの敗北だった。

「人によっては『スリップだった』とも言われていますが、映像ではアリからなかなか良いのを頭にもらってるように見えます。実際どうだったんです?」と冗談っぽく尋ねられると、ジョージも「いやあ、バナナや氷やバターやら床に撒かれててね!(笑) まあでも、あのときは立とうとしてもどういうわけかスリップし続けちゃったんだよ」とジョークで返すフォアマン。

「あの頃、私はずっと戦っていて、家からも遠く離れて久しかった。だから早く試合が終わってほしかったし、チャンピオンの私にとってアリはすぐ終わらせられる楽な相手なはずだったんだ。だから選んだんだし、タフな試合になるなんて予想もしてなかったんだよ。だからあの敗北は恥ずかしかったし、人間をも否定されるほどの出来事だったし、暑さがどうのとかも、全部ただの言い訳でしかなかったんだ。痛かったよ、傷ついた。そしてその後も新しいことに挑戦したりした」

フォアマンは言葉を一つずつ、噛み締めるように語る。

「それでも」と一呼吸置き、「戻れるものなら、いつだって25歳のあの時、アフリカに戻りたい、あの素晴らしい時間を再び楽しみたい、そう思える時間だったよ。悪い思い出なんかじゃない」

そう言うと、「あの試合を振り返るとこの曲を歌いたくなるんだ(笑)」とフランク・シナトラの「Young at Heart」の一節を口ずさむ。“心が若ければ、おとぎ話のようなことだって訪れる”という冒頭で始まる歌だ。

「特にスポーツ選手はね、たった1つの勝利で評されることなどない。そしてたった1度の敗北がその選手の最後だなんてことも決してない。次の相手との試合のために自分を磨きつづければいいんだよ」

ジョージ・フォアマンは、45歳で20年ぶりにヘビー級タイトルを奪還するという驚異的な記録を持っている。その最年長ヘビー級チャンピオンの記録は当然まだ破られていない。「その偉業だけでも、ジョージ・フォアマンは史上最も偉大なファイターの1人だと私は思います」。ケラーマンがそう締めくくると、サービス精神旺盛なフォアマンはシャドーボクシングを見せ、笑顔で別れの挨拶をした。

栄光も挫折も全てを味わってきた偉大なボクサー、ジョージ・フォアマンは現在テキサスで牧師として活動している。かつてファイターだったとは思えないほど穏やかな表情が印象的だ。

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