先が読めない展開、全編に漂う緊張感『ブレイキング・バッド』の“凄さ”を徹底解剖

「とにかく超面白い」という一点だけでも全世界のTVドラマ史に名を残す『ブレイキング・バッド』ですが、ついに! もうまもなく! 映画版『エルカミーノ:ブレイキング・バッド THE MOVIE』がNetflixで配信される!

……のですが、『ブレイキングバッド』自体をまだ観ていないって人のためにまずはプレゼン!

『ブレイキング・バッド』は、2008年から2013年にかけて放送されたドラマ。50歳になる化学の教師ウォルター・ホワイトが、ある日肺癌宣告をされ、家族のためにお金を残すため化学の知識をフル稼働して高純度のドラッグを製造。それを売りさばき、麻薬王となっていくという、とんでもなくピカレスクなストーリー。

緻密で無駄のない会話と、一寸先が読めない展開を繰り広げる脚本はお手本でありながらもクレイジー。そして全編に漂う緊張感、こだわりのフィルム撮影(途中から)、自由でドキドキさせるカメラワーク、リアリティを重視して有名俳優を一切使わないというこだわりの姿勢! そのすべてが絶妙にブレンドされた史上最高のドラマ、というか5シーズン全62話の長編作品だったわけです。

なので、エミー賞やゴールデングローブ賞など主要な賞をバンバン獲得してたのはもちろん、著名人のファンも多数。有名なところだと、映画監督のギレルモ・デル・トロやスティーヴン・ソダーバーグも夢中になり、俳優のアンソニー・ホプキンス、そして急死する前のフィリップ・シーモア・ホフマンなんかは「出演したい!」と直々にラブレターを出すほど。日本でも村上春樹やおぎやはぎなど各界にファンだらけ!

映画やドラマに与えた影響も凄まじく、『ブレイキング・バッド』以降はメキシコの麻薬カルテルを題材にした作品が激増。神回と大絶賛されたシーズン5の第14話「Ozymandias」を監督したライアン・ジョンソンは、その力量を買われて「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」の監督に大抜擢。これから公開される予定のマーベル映画「ブラックウィドウ」は、マーベル・スタジオの社長ケヴィン・ファイギが「『ブレイキング・バッド』とその前日譚シリーズ『ベター・コール・ソウル』から影響を受け、要素を取り入れて作る」と公言。

これでちょっとでも凄まじさが伝わりましたでしょうか。でもですね、まだ観てない方に対して「あなたは損をしてます!」とは言いません。むしろ、かける言葉は「羨ましい」。一時的に記憶を失える装置があるなら、すぐに起動して何度でも見返したい! そんなことを本気で思えるドラマなのは『ブレイキング・バッド』だけ!

で、話をようやく元に戻すと『ブレイキング・バッド』の映画版が配信されるんですよ。今のところ予想されている今回のお話は、ドラマ版直後、囚われの身から解放されたジェシー・ピンクマンのその後が描かれる模様。

ジェシー・ピンクマンとは主人公ウォルター・ホワイトの元教え子で、なんとウォルターのドラッグビジネスのパートナーとなる少々ヤンチャな男。当初はシーズン1で死ぬ予定だったのが、第1話の撮影後にウォルターとジェシーの関係性を気に入った製作陣が急遽変更しレギュラー化。ウォルターとジェシーが手を組んでからは、人生上がったり下がったりのジェットコースター。単純なバディ物ではない複雑な感情を5シーズンに渡ってバチバチにぶつけ合ってきたのでした。

Netflix Japan/YouTube

そんなピンクマンを主人公に据え置いているはずの映画版ですが、すでに公開されている予告編第1弾では、ピンクマンの旧友として度々ドラッグを売るのを手伝ったりしていたスキニー・ピートのみ登場。スキニー・ピートがピンクマンの所在について取り調べを受けているだけというなんとも思わせぶりな予告編なのですが、すでに全話観ていた人も、「あれこの人誰だっけ?」となりそうな絶妙すぎる人選がまた『ブレイキング・バッド』らしくてニクいんですよね。

Netflix Japan/YouTube

そして新たに公開された第2弾予告編では、ついにジェシー・ピンクマン本人が登場。真っ暗闇の荒野にポツンと止められた車の中、ラジオから流れるジェシーとウォルターが起こした虐殺事件の速報をひっそり聞くピンクマン……。ちなみにタイトルの「エルカミーノ(EL CAMINO)」 とはスペイン語で「道」。その「道」を意味するのは、ピンクマンがこれまで盛大に踏み外してきた「道」なのか、それともこれからの人生を意味する「道」なのか……。

というわけですが、『ブレイキング・バッド』のクリエイターであるヴィンス・ギリガンはインタビューで、これまでのドラマ版を説明、復習するような野暮なことは一切しないことを断っております。なので映画版を観る前にドラマ版を観ることは必須。絶対に細かいネタをドラマ版から引っ張ってくるだろうから、ファンもまた観返す必要がありそう。そしてまだドラマ版を観ていない人は、「たった1本の映画のために全5シーズン? 無理だよ」という人がほとんどのはず。でも、断言しちゃいます。『ブレイキング・バッド』のためだけに有給取ってでも観る価値、あり。

文・市川力夫

TAGS