レペゼンとは何か? D.Oに衝撃を与えたある出来事

ヒップホップ用語に「レペゼン」という言葉がある。英語の動詞“represent”に由来し、「レペゼン◯◯」で「◯◯を代表する」といった意味となる。◯◯の部分には、地域、団体、あるいは何らかのクラスターを表す名称が入るのが一般的だ。

ヒップホップ文化において、自身が根をはる地域/集団を誇り、そこを代表する気持ちで発信をすることは、重要なスタイルの一つである。だが、その本質をしっかりと理解し、体現することは決して簡単なことではない。

今や言わずと知れた“レペゼン練馬”のギャングスタ・ラッパー、D.Oがそれを痛感した下積み時代のある出来事について、自著『悪党の詩』(彩図社)に綴っている。

当時、イベントに出演するRINOの付き人として、生まれて初めて九州の地に立ったD.O。教科書を一度もまともに読んだことがなかった彼は、九州には何県があるのかさえ知らなかったという。

そんなD.Oに対し、RINOの旧知の友人だというイベントのオーガナイザーの男性は、九州にはどういう城があり、どんな歴史があって、それがストリートの流れにどうつながっているのかなどを、丁寧に教えてくれた。普通の優しいお兄さんのような見た目のその人は、隣町の危なそうなヤツとツレだったりする一面もあった。

その後、男性の博識ぶりに驚いたことをRINOに報告すると、「例えば、お前に外国の恩人がいたとして、その人が自分の地元に来たとき、お前は何を紹介する?」と問われたD.O。その瞬間、九州で見せてもらったもの、教えてもらったもの、ご馳走になったもの、すべてが脳裏を駆け巡った。あの男性は、九州の歴史も、美味い店も、ストリートさえも把握していた。かたや、自分はどうだ。「東京だ」「練馬だ」と言いながら、地元について何も知らない無知と無力さをD.Oは恥じた。

自分がどういう場所にいて、その周りには何があって、どう立ち回るべきなのか。この一件以降、ダサいと思っていた教科書に載っている歴史や地理、世界情勢に関する情報は、D.Oにとってラッパーとしてのアティテュードに関わる重要なものに変わった。

月日は流れ、日本のヒップシーンにおいて唯一無二のスタイルを確立し、幅広い層からの人気を誇るラッパーとなったD.O。だからこそ、彼が綴る「僕がいろんな土地で“練馬”と言えば言うほど、練馬と向き合わなくてはいけない」という一文が、「レペゼンとは何か」の本質を的確に捉えた言葉として胸に響く。

Shinjyuku Tokyo/YouTube

TAGS