全世界のヴァンダ民が開脚しながら待っていた… ヴァン・ダム版『そして父になる』

日本の夏!ヴァン・ダムの夏!
Netflixを通じて、ヴァン・ダムからの暑中お見舞いが届いた!それが『ザ・ラスト・マーセナリー』だ!

Netflix Japan/YouTube

全世界のヴァンダ民(みん)が開脚しながら待ち望んでいたであろう本作。
伝説のスパイ…通称『ザ・ミスト』が、長年会ってなかった息子の危機を救うべく奮闘する、ヴァン・ダム版『そして父になる』の様相を呈している。
始まって数分で、開脚しながらテロリストを見下ろすヴァン・ダムの影!という衝撃の幕開けを本作は披露!ファンにとっては150点、知らない人にとっては「何これ!?」と我が目を疑うツカミである。

思えばAmazonプライムで配信された『ジャン=クロード・ヴァン・ジョンソン』もシーズン1で打ち切り決定するなど、ヴァン・ダムは憂き目にあってきた。
だが、捨てるサブスクあれば拾うサブスクあり。まさかのサブスク文化の疾風一号生であるNetflixへヴァン・ダムが殴り込み!と聞いた時は、耳を疑ったのは言うまでもない。

最近は『ザ・バウンサー』『ネバー・ダイ 決意の弾丸』など哀愁溢れる演技で心に開脚キックをヴァン・ダムはキメてきた。
はしゃぐヴァン・ダムを観ずに久しかったが、本作は違う。
踊る!蹴る!女装する!開脚する!…と、まさにポップなヴァン・ダム詰め合わせ!
彼のサービス精神が「これでもか!?」と炸裂している。
老若男女問わず、お茶の間で安心して観られる親切仕様だ。
初期中期の作品では、ラブシーンを披露しては気まずい瞬間を与えていた、あのヴァン・ダムが!と思うと実に感慨深い作品である。

Netflix Film Club/YouTube

なんなら当時ヒロインより尻を出していたのがヴァンダムだ。
振り返ると、親の顔より彼の尻を観てきた気がする。
普通に考えれば体を張った演技なわけだが、悲しいかなヴァン・ダムは尻を出せば出すほど世間の評価は下がっていった。
その一方で恥ずかしい部分、カッコ悪い部分を堂々と惜しげもなくさらけ出す勇気を我々に教えてくれたのも確かだ。
なにせ尻を出すなんて、我々一般人としては泥酔でもしない限り、かなり勇気のいる話である。
だがキャリア絶頂期にヴァン・ダムはやってのけた。シラフで。

そして、現在。
今でこそ物理的に尻を出す機会は減っていたが、彼の尻を出すメソッドは別な形で生き続けてきた。落ち目、時代遅れ、隆盛を過ぎたアクションスター、はぐれ者…実生活での世間に認められない哀しさをオーバーラップさせて役にぶつけ続けてきた。
言うなれば、心の尻。それを俺たちに自ら晒し続けてきたといえなくもない。だが、本作では満を辞して自らが歩んできたキャリアを、自虐を挟まずに役にぶつけている。

Netflix Film Club/YouTube

かつてジョン・ウーやツイ・ハークを招聘し、ハリウッドへいち早く香港映画文化を輸入したものの、その恩恵を十分に得られなかったヴァン・ダムだったが、本作では『大福星』や『五福星』など80年代の香港アクションコメディ映画の風を感じさせてくれるのも見逃せないポイントだ。
この作風も時代の波に乗り切れなかった彼の過去を知っているコアなファンによっては目頭が熱くなるだろう。

そして、「俺が!俺が!」と出ずっぱりにならず、若手や他のキャストに胸を貸すヴァン・ダムを観てると『大人になったなあ…』と改めて勝手に親のような気分になって目を細めてしまう。
いわば『その男ヴァン・ダム』を陰とするなら、本作『ザ・ラスト・マーセナリー』は陽。久しぶりに肩の力を抜いたヴァンダムの演技は必見だ。

俺もヴァン・ダム映画の見過ぎでおかしくなっているかもしれんが、あるシーンで放つ「大事な時は、いつもそばにいる」という彼が息子に向けて送るセリフは、まるで自分に放たれていると思わせてくれた。
「ヴァン・ダムも頑張っているんだから俺も頑張ろう」と、自分の心のどこかにヴァン・ダムがスタンドバイミーしてきた人間にとってはグッとくるセリフとスマイルを見せてくれる。

今回のNetflix殴り込みもさることながら、役や設定においても革新的な作品を演じてきたヴァン・ダム。
だが、まだまだアクションバカとして見られるバイアスをかけられ正当な評価が下されていないと言わざるおえない。
劇場で上映されても期間限定一週間一日一回、なんなら劇場上映してる間にDVDのみ販売されるなど、時代がヴァン・ダムに追いついていなかった感があった。
だが、配信となれば別だ。時も場所も選ばずに、誰もがヴァンダム民(みん)になれる機会が平等にある。もし本作をキッカケにヴァン・ダムに触れた方は、是非山あり谷ありな彼の主演作品を追ってほしい。

過去のオマージュシーンを見つければ、更に本作を楽しめるだろう。とはいえ、作品によってはガッカリしたり、ブチ上がったりとあるかもしれん。
だがねえ、人生は何事も上手くいくなんてことはないじゃないですか!?むしろ失敗ばっかじゃん!と。
なんつーか、そういうことですよ!映画もリアルも!
リアルで波乱万丈な過去がある人ほど、ヴァン・ダムという俳優の作品と生き方は沁みるんです!

…というわけで、本作をキッカケに駄作とか名作とかいう、洒落くさい二元論に留まらない彼の人間味を是非感じてほしい。

Netflix Film Club/YouTube

文・DIEsuke(@eroerorocknroll)/ステイサムの悩み相談bot狂犬映画ライター・映画タッグ:ビーパワーハードボイルド

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