傭兵たちの過酷な残業デスマーチ 『PMC:ザ・バンカー』

「早く帰りてえなあ!」
仕事をしていて何を考えてるかと言えば、これに尽きる。

いわば定時で退勤するのは全人類の夢と言っても過言ではない訳ですが、そうはいかないのが世の中だ。よりによって外せない用事がある時に限って、退勤間際5分前に仕事が雪崩れ込むもんです。

そのたびに「Fxxk!!」と心がシャウトしてしまう訳ですが、文句を言っても始まらない。怒りを奥歯で噛みしめながらヤケクソになって残業してしまうのが社会のソルジャーの悲しい所だ。多かれ少なかれ、そうした『怒りの残業経験』が皆さんにもあるんじゃかなろうか。

例えば、これが傭兵だったらどうだろう?
そんな武骨な男たちの過酷な残業デスマーチを描いたのが『PMC:ザ・バンカー』だ!

株式会社ツイン/YouTube

エイハブは生粋のPMC(傭兵)の中間管理職。
今日も今日と軍事境界線の地下要塞30mで息をひそめ任務に備えていた。
今回の任務は北のVIPの拉致。

お得意さんであるアメリカから請けた肝いりの作戦だ。
とはいえ、百戦錬磨の彼らにとっては朝飯前の任務であった。
なにより妻が出産を控えるエイハブ的にも定時で帰らなきゃならん。
定時退社モードで作戦を決行となった時、予想外の人物が現れる。

あ!将軍様じゃん!
なんと、現場に超VIPの最高指導者が姿を現したのだ。
ちょっと難易度は上がるが、これを拉致すりゃあ金一封じゃないの!
早速シノギの匂いを感じたエイハブは賃金アップの交渉と作戦遂行の許可をアメリカさんから取りつける。

こうして気合の入ったエイハブも現場へ直行、ナイスな采配により見事将軍様の拉致に成功するのであった。

ホクホクのエイハブであったが、将軍様の付き添い主治医から「何やってんの!お前らハメられたんだよ!」という言葉をぶつけられる。
その予想は果たして当たった。
完全に退勤したつもりになっていたエイハブ達のもとへ、ゴリゴリに課金した別会社のPMCが殴りこみをかけてきたのだ!
「話が違うじゃねえか!おい!」と思うエイハブをガン無視で、飛び交う銃弾。
熾烈な残業が始まりを告げるのであった。

果たしてエイハブ他12人のPMCは残業を乗り越え、退勤できるのか?
そして妻の出産に立ち会えるのか?
今、退勤(生き残り)をかけた地獄のサービス残業が幕を開けるのだった。

簡単に終わるはずの案件が気がつけば大炎上!の様相を呈する本作。
アッチが燃えてればコッチが燃えてる!と燃えてない所を探すのが至難の業だ。

止まらない攻撃。
指示を仰ぎたくても繋がらないwifi。
来る気配のない援軍。
経験は無いけどやるしかない仕事。
「あれは嘘だ」といわんばかりの手のひら返し。
あれよあれよと脱落者が続出する仲間たち。

残業が深まれば深まるほど泥試合になっていく、この地獄絵図。
考えうる限り最悪の事態がつるべ打ち!の展開は実に韓国映画らしい。

この事態を何とかしようとするのがハ・ジョンウ扮するエイハブだ。
本作では英語7割・韓国語3割で通すバイリンガルぶりも披露。
色んな映画で何かと修羅場に巻き込まれる役柄が多い気がするハ・ジョンウだが、今回も銃撃戦!指揮!手術!脱出! と無茶ぶりに答えていく。

まさに地獄のマルチタスク。
のっけから「俺、この戦いが終わったら子供の出産に立ち会うんだ。」と分かりやすいフラグを立てつつ、傷だらけ泥だらけになりながらもド根性と判断力で修羅場を乗り切っていくのは流石だ。

話が進むにつれ「人としてどうなのよ」という状況でも現場レベルでビシバシと判断を下していく姿は実に頭が下がる。
映画で修羅場を踏んだのは伊達じゃない!と見る者に思わせてくれるだろう。
このように、サバイバルアクションであるのと同時に中間管理職の辛さも描いているのが本作だ。

形は違えど、お上の都合で振り回されまくる地獄絵図に遭遇した経験が俺にもある。
そうはいっても一緒に働く同僚の手前、逃げ出すわけにもいかない。
本作のように「これは…もうアカン!」という自らの心の声をガン無視、周りのモチベーションアップを図った俺自身の過去も思い起こさせてくれたのだった。
実に身に詰まされる映画だ。

そして、今になって改めて思う。
やっぱ大事!定時退社!!
というわけで、社会という戦場で傭兵気分で働く人は定時退社の後に見に行って欲しい、手汗率150%のデスマーチ退勤アクションですよ。

文・DIEsuke(@eroerorocknroll)/ステイサムの悩み相談bot狂犬映画ライター・映画タッグ:ビーパワーハードボイルド

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