チェス馬鹿一代 『クイーンズ・ギャンビット』 ロッキーばりに“トラの目”を取り戻す熱さがある

チェス…それは頭脳を使った格闘技!!
まあ俺自身はチェスをしたことはないけども!今まで!ゴリゴリのチェス貧乏な俺でも、そう知ったかぶりさせるドラマシリーズがNetflixで配信された。
それが『クイーンズ・ギャンビット』だ!

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天性のチェス・サイボーグと化した少女の数奇な運命をクールに描く本作。主役のベス・ハーモンを演じるは、アニャ・テイラー=ジョイ。神秘的なビジュアルに鼻を伸ばしてしまう諸兄がいるかもしれんが、そんな甘い見積りをしたら彼女の修羅の演技にブッ飛ばされるであろう。
ぶっちゃけチェスのルールは最後までよく分からんが、心理戦の緊張感をビシバシ見るもんに伝えてくれる。更に誤解を恐れずに言えば、チェスを題材にしてはいるが、前半は『あしたのジョー』、後半は『ロッキー3』的な展開に雪崩れこんでいく意味でも必見な作品だ。

なにせ主人公のベスは始まって早々母親と不幸な別離、返す刀でみなしごハウスに放り込まれる所からスタート!
普通のみなしごハウスであれば、まだマシな話ではあったが、ゴリゴリに管理する為か、いきなりアッパーなネタとダウナーなネタをチャンポンで飲まされるなど、馴染めなさ100%の生活…早い話がムショのような生活を送るハードモードっぷり。もし外に放し飼いの豚がいたら、少年院の矢吹ジョーばりに乗って脱獄しかねないほど悶々としていたのは言うまでもない。

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…という訳で静かなる反骨精神のおかげで、授業および集団生活を絶賛サボるベスであったが、ひょんなことから地下室で用務員のオッサンと遭遇!互いに愛想はゼロ。気まずい遭遇であったが、通じ合うものがあったのだろう。この丹下段平ポジションのおっさんから、チェスの手ほどきを受ける日々が始まる。虚無の日々から一転、来る日も来る日もチェスを指している内にのめり込んでいくのだった。

鼻持ちならん地区のチャンピオン、野良の勝負師、ベス同様に天才のチビッ子プレイヤー… 最初は男社会のチェス業界で舐められていたベスであったが、あれよあれよと話が進むにつれ、成り上がり!
世界の強豪と対局していく姿に目を見張ってしまうだろう。特にベスが対極相手の顔をジッと見ながら頬杖をつく仕草を見せた時は、いわば確変の入った必勝パターン。無言の圧を見る者にビシバシ感じさせてくれる。

だが、チェスプレイヤーとしては天才だが、人生のプレイヤーとしてはままならない。チェス馬鹿一代な生き方しか知らないのもあって、他人との心のソーシャルディスタンスは開きっぱなしになっていく。とりあえず女子会に参加してみたり、男とも興味本位でガンガン寝るわけだが、どうにもグダグダに終わってしまうのであった。

結果、彼女は名声と裏腹に酒やクスリに依存していくベス。盤上の駒は迷いなく進められるが、人生という名の駒を進められないベスなのであった。チェスには定跡はあるが、人生には定跡はない。そんな皮肉な彼女の運命も見所の一つだ。

おかげさまで「アタイにはコレしかないんや!」とばかりに、ひたすらストイックかつヤケクソにチェスを指すベスであったが、決定的な『その時』が遂に来る。
チェス大国=ソ連最強のチェスプレイヤー、ボルコフとの対局でぐうの音も出ないほどの敗北を喫してしまうのだ。自らの唯一のアイデンティティであったチェスの敗北により、完全に心が折れたベス。チェスは元より、プライベートの荒廃にも拍車が掛かっていくのであった。

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こののまま人生の迷子になるかと思いきや、ここで漢気を発揮するのがみなしごハウス時代のバディ、ジョリーンだ。いわば、ロッキーで言うアポロ、クイーンズ・ギャンビットにおけるジョリーン。持ち前のブラザー精神を発揮し、陰ながらベスを応援していた人々の想いをジョリーンはベスに気づかせる。こうして、一旦自分を見失ったものの人々の想いを受け、『自分は一人じゃない』と、再びガチな自分見出すベス。

ここからストーリーは更にヒートアップ!一旦チェスで殴り合ったらダチ公精神とでもいおうか。かつてのライバル、穴兄弟たち(!?)も一丸となってベスを応援!
いよいよアウェイ戦でボルコフとのリベンジマッチに挑むラストの大一番はチェスでありながら、『ロッキー(しかも3)』のクラバー・ラング戦を彷彿とさせる。チェスとボクシングで違いがあるかもしれん。だが本作にはロッキー同様、『トラの目(eye of the tiger)』を取り戻す熱さが確かにある。

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今の御時世、自由に過ごせず「なかなか最近燃えてねえなあ…」とボンヤリ自宅で過ごしている人…ていうか、まあ俺なんですが、そんなダルダルになった人には打って手つけのドラマシリーズ。

是非、本作のベスのように己の心で静かに燃える炎を見つけて欲しい。

文・DIEsuke(@eroerorocknroll)/ステイサムの悩み相談bot狂犬映画ライター・映画タッグ:ビーパワーハードボイルド

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