飾りじゃないのよ涙は 「アジョシ」の監督が贈る怒涛のハードボイルドアクション『泣く男』

「飾りじゃないのよ涙は」を描いた怒涛のハードボイルドアクション映画ーーーそれが『泣く男』だ!

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アメリカの裏社会に生きるイケイケの殺し屋ゴン。

今日も今日とて宴もたけなわの取引現場へ突撃!居合わせターゲット達を皆殺しにする確かな仕事ぶりを見せた…かと思いきや、その場に居合わせた幼女ユミを誤って射殺してしまう。

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いくら情け無用の殺し屋であっても罪のない幼女を殺したのは相当に応えたらしい。

完全にやらかしモードになってしまうゴン。罪悪感を消す為、意識を失うまで酒をあおる無断欠勤の確変ルートへ突入してしまうのであった。

とはいえ優しい職場ではない。見兼ねた殺し屋フレンズのチャオズ達は寝ゲロを吐くまで痛飲していたであろうゴンを部屋から連れ出す。だが、二日酔いであろうが凄腕の殺し屋だ。舐めた同僚の手にハシをブッ刺すなど、景気いい寝起きを披露するゴンであった。

そんな訳で殺しのスキルは全く衰えていない彼に新たな仕事が舞い込んでくる。

『故郷の韓国でバリキャリの女取締役モギョンを仕留める』というゴンにとっては赤子の手をひねるような内容だ。

しかし、よくよく話を聞いてみると、何と彼女が自らが殺めた幼女ユミの母親だという事実を聞かされてしまう。他に任せる人間はいなかったのか!?という話ではあるが、組織はゴンの気持ちをガン無視!パワハラ気味に押し切られたゴンは、最後の仕事と割り切り、生まれ故郷である韓国へ渡る。

早速ゴンはモギョンの身辺調査を開始。パッと見、仕事の為に娘を捨てた薄情な女と思いきや、調べれば調べるほどモギョンの母としてのユミへの思いを知り、欽ちゃんの仮装大賞の採点ばりに殺りづらさがウナギ上りの状況に陥ってしまうのであった。

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いつしか過去に自分を捨てて自殺した母親の姿を思い出すゴン。

ダメ押しのようにユミの学芸会ビデオを鑑賞して号泣するモギョンを目撃し「こりゃあ無理だな!」と殺しを断念!

人間としては正解だが、殺し屋としては不正解だ。

おかげさまで業を煮やした組織からチャオズを筆頭にした殺し屋チームを差し向けられてしまう。

全てを敵に回しながら、自らの正体を明かさずモギョンを守る決意をするゴン。

果たしてゴンは泣くのか?泣かないのか?こうしてゴンのケジメをつける為の壮絶な死闘が幕を開けるのであった。

『主人公が寝ゲロを吐いている映画に駄作はない』というジンクスがあるが(俺の中で)本作も御多分に漏れない。

野良犬のような瞳でヤサグレ感満点の殺し屋ゴンを演じているのはチャン・ドンゴン。

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開始5分で心はブルーのままだが、戦闘力はエクストリーム。

タイトルは『泣く男』だが、「いつ泣くんだ、こいつはと!」いわんばかりにゴンが泣く気配は皆無だ。

むしろ作中では相手を泣かす・・・というか悲鳴をあげさせる機会が多い。

歩きながら即席爆弾作成、ナイフでヤクザをナマス切り、玄関開けたら5秒で膝蹴り、爆発音を電話口でアナウンスなどなど、情け無用で血の雨を降らせていく。

特にマンションの一室を舞台にナイフ一本でヤクザの悲鳴のコーラスを奏でるシーンは必見だ。ナイフを振るうチャン・ドンゴンだが、ちょっとブルース・リー師父を思わせる。

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この韓国映画得意の地獄絵図だけで腹一杯なのに、更に同僚の殺し屋さんチームが合流。血の海を作ったゴンとは対照的に、殺し屋達はフルオート掃射で死体の山を築く!

あれイントロだったの⁉と思うコチラをお構いなしに本番が始まるのだった。

団地越しのアサルトライフルvsショットガン、車のホイールで体を隠し掃射を回避、殺し屋の一人が負傷した腕を使わずに行う銃の股挟みマガジンチェンジなど、ミリオタなら痺れるであろう模写が連発!

このサービス精神はどうだ!?殺伐とした団地バトルの迫力に息を呑んでしまうだろう。 

最終ラウンドは高層ビルを舞台にした1vs3の殺し屋ハンディキャップマッチ。

こうしたラストバトルだと十把一絡げにバイトのようなモブキャラが数に物を言わせて大量に襲ってくるのが定番だが、本作は安易な道に逃げない。
プロ同士の殺すか殺されるかの命のやり取りがストイックに描かれ、実に痺れる。 

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だが何といっても本作で一番泣けるのがチャオズとゴンの関係性だ。

劇中、言葉の少ないやりとりのみで、どうやら腐れ縁だったのが分かるチャオズとゴン。

特にラストは、さっきまでお互いゴリゴリに殺し合いをしていたにも関わらず乾いた友情を感じさせてくれる。

全てにケジメをつけたゴンの手を黙って握るチャオズの男気。

結局、最後まで側にいてくれたのが自分の命を狙った敵にして戦友という、この構図。

本当の男同士に言葉なんかいらないという名シーンだ。

これに泣かずにはいられるか! 

彼氏/彼女と別れた、仕事が辛い、金がない…理由は色々あれど、性別問わず、泣きたくなる時というのがあるもんです。

俺もいつぞや渋谷駅の山手線ホームで女の子相手に人目をはばからずに号泣しているメンズを見かけた経験がある。

性別問わず悲しければ泣こうが喚こうが自由だ。だが他人に見せびらかすように泣くのはどうなのよ?と。

最初から最後まで自らの存在をモギョンに明かさず、誰もいない汚い銭湯の廃墟で泣きまくっていたゴンを見習え!と思ったのは言うまでもない。

かくいう俺もねえ、最近は泣きたい時しかねえ!

むしろ年中泣きっぱなしだ!

何なら、『今日のわんこ』とか見ただけで泣けてきますからね。

朝っぱらから。

家で一人で。

個人的には本作をリスペクトしているつもりなのだが、「ただオマエの涙腺の安全装置がブッ壊れてるだけじゃねえか」「まず自分のツラを見てから言え」「チャンドンゴンに謝れ」と言われ、ますます泣きたくなったのであった。

監督は『アジョシ』でも知られるイ・ジョンボム。

『アジョシ』も救いようのない展開、手加減なしの暴力、ウォンビンの陰のあるイケメンぶりが炸裂する文句をつけようがない傑作だ。

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『アジョシ』の次に監督したのが本作なのだが、演出やアクション的にも被る面があり、比較したら片手落ちじゃないのと見る傾向がある。

だが、切なさという点では本作の方がグッとくるのは確かだ。

いずれにせよ「正しい男の泣き方」を学べる映画ですよ。

文・DIEsuke(@eroerorocknroll)/ステイサムの悩み相談bot狂犬映画ライター・映画タッグ:ビーパワーハードボイルド

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