組織に生きる社畜に刺さる イ・ビョンホンの一人緊急事態宣言『KCIA南山の部長たち』

 「目を覚ましてください!」
かつて破壊王・故橋本真也にシュート(真剣)勝負を仕掛け、文字通りフルボッコにした小川直也が発したセリフだ。結果、セコンド陣同士でもガチな乱闘が生じ、プロレス史に残る不穏試合の一つとして今なお数えられている。

会社という組織の一員として生きていると、思わず実生活でも言いたくなるセリフおよびムーブの筆頭なわけですが、例えば、これが国の内政レベルで行われたら、どうなるのだろうか?

国の要人が小川直也ばりに「目を覚ましてください!」を実行した結果、歴史に残る大事件となった実録映画が1月22日(金)に公開された!

それが『KCIA南山の部長たち』である。

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韓国を揺るがした、まさかの側近による大統領暗殺に至るまでの40日を描く本作。

服従か、反逆か…。

組織内のパワーゲームに振り回されるKCIA(大韓民国情報部)のトップにして、暗殺犯をイ・ビョンホンが演じている。劇中、独裁っぷりが度を過ぎている大統領に手を焼きつつも忠誠を誓い、どうにか奮闘するビョンホンだが、あちらを立てればこちらが立たず。 
結果、関係各所から詰められ、孤立無援になり煮詰まっていく。まさにストレスフルな実録・板挟みサスペンスだ。胃がぶっ壊れそうな状況に目を見張ってしまうだろう。
それでも自らの心を殺し、組織のトップの意向に沿わざるおえない切なさと虚しさがジックリと描かれている。

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コロコロ変わる上の意向、掌返し、露骨な冷遇人事。個人的に絶賛社畜人生まっしぐらの俺も「いや、あんた前言ったじゃん!」という理不尽な経験を食らったのは一度や二度じゃない。
本作では同じような状況が国レベルで発生しているのだから、劇中のビョンホンからしたら、タマったもんではないだろう。

話が進むにつれビョンホンが口を真一文字に結び、沈黙。目の虚無っぷりに拍車がかかっていく。

しかも見た目が横分け、メガネというベタなサラリーマンぽいのも手伝ってか、どこか他人事には思えない演技を本作では披露!観る者に切実さをビシバシ伝えてくれる演技は、組織に生きる社畜(俺とか)なら心に刺さるだろう。

おかげさまで 組織の為と信じてきた仕事を散々否定されヤケクソになるビョンホン。かつて同じ大義の為に命を懸けてきたであろう男達の道が、決定的に分かれてしまう瞬間が遂に訪れてしまう。

それまでなるべく感情を出さずにいたクールな彼が、タメにタメた感情を爆発させる陳情シーンは必見だ。

いうなれば、ビョンホンの一人緊急事態宣言!

「目を覚ましてください!」とモノ申しているだけにも関わらず、派手なCGや爆発じゃ味わえない緊迫感がある。そこで終わるなら「yeah!」というもんだが、本作は優しくない。
勢いに任せて行動を起こしスッキリしたものの、「あれ…冷静に考えると俺ヤベエことしたんじゃねえか…」と取り返しがつかない自らの行動を理解し賢者モードへ突入!

エモからのダウナーな模写が、本作を更に味わい深くしている。

彼の国民を想っての行動が、将来どんな結果を韓国にもたらしたのか。

そこら辺を詳しく知りたい方には、本作の後に『タクシー運転手~約束は海を越えて~』→『1987ある闘いの真実』を連続して鑑賞するのをおススメしたい。

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当時の軍事政権のカオスっぷりをコンボで伺い知れるだろう。まあ、人によってはゴリゴリに気が重くなるかもしれんけど!

時代や国は違えど、身の回りに置き換えられる要素が盛りだくさんの本作。ただの社会派な実録作品で済ますのは勿体ない。

現在進行形で職場に居場所がない人には、駆けつけて欲しい映画ですよ。

文・DIEsuke(@eroerorocknroll)/ステイサムの悩み相談bot狂犬映画ライター・映画タッグ:ビーパワーハードボイルド

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