「俺には俺のオスカーがある」 スタローンは、心の中のエンジンに火をつける

にわかに世間を騒がせた先日のアカデミー賞発表。
韓国映画「パラサイト~半地下の家族~」が各賞を総舐めし、急にポンジュノの親戚ヅラをする人が続出したのが記憶に新しい。

一方、俺の古くからの親戚シルベスター・スタローンである。

アカデミーと同じタイミングで 最低な映画に送られるラジー賞において「ランボー:ラストブラッド」が各部門を総ナメしたのであった。
ラジー賞審査員全員の奥歯をガタガタ言わせたろうか?と思ったのは言うまでもない。

話をアカデミーに戻そう。
他にもNetflix「アイリッシュマン」、アメコミ映画「ジョーカー」などなど…
今までの慣例をブチ破るアカデミーノミネートに色めきたつのは無理のない話であった。

だが例年に比べ異色尽くめの話題作がノミネートしている中、目を引いたのが「フォードVSフェラーリ」だ。
なにせ久しぶりのレース映画でのアカデミーノミネートである。
こちらも今までのノミネートとしては異例の作品であった。

という訳で今回は「フォードVSフェラーリ」を紹介……すると思ったか?
ちょっと待ってくれ!

「フォードVSフェラーリ」がOKなら、「ドリヴン」だってOKだったんじゃないの!と。

また話がスタローンになってるじゃねえか!という意見は、この際無視!
「先にフォードVSフェラーリのレビューをしろよ!」と言われるかもしれんが、そんなもんねえ、他のサイトで見てくれ!
まずはスタローンだろ!
というわけで、今回は「フォードVSフェラーリ」にかこつけてシルベスター・スタローン主演のカーレース映画『ドリヴン』を御紹介させて頂きます。
強引に!

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最高時速400kmでトップを競うモーターレースの世界。
引退したベテランレーサーのスタローンがスランプの天才ルーキーを指導するために現場復帰!
挫折と焦燥にイモるルーキーに、スタローンが走りと生き様を叩き込むのが主なあらすじである。

走るか死ぬかという選択に、走るを選んだ男たち。
そんな彼らの魂の輝きを描いた群像カーレース映画だ。
ともすれば「カー・レース版ロッキーじゃねえか!おい!」と言われそうですが、そこらへんはアメコミ映画の体でスコセッシ・オマージュがあった「ジョーカー」もあるし、まあイーブンといこうや!

監督は傑作山登り映画「クリフハンガー」でもスタローンとタッグを組んだ (俺の中で) 天才のレニー・ハーリン。
果たして公開当時のランキングは全米一位の映画であったが、世界興行収入は劇中のように派手にクラッシュ!
追い打ちをかけるように本作はラジー賞の各部門を制覇、以降スタローン主演の映画の予算はグッと縮小したのであった。

本作を、いわゆる時代の…否、スタローンの仇花と捉える人もいるかもしれん。
だが、師匠役に徹したクリードが公開された今だと、逆に味わい深いもんがある。 本作においてスタローンは若手の師匠ポジションでありつつ、100%胸を貸すわけではない。
むしろ自らも現役としてレースに参加、若手と一緒にサーキット駆け抜ける。
そのスタイルはサーキットだけに留まらない。

例えばこうだ。
中盤、レースもプライベートも上手くいかず自暴自棄になり、盗んだフォーミュラカーで公道を爆走するグレッぷりを見せるルーキー。
普通であれば見なかったことにしたいもんだが、スタローンは違う。
なんと返す刀で同じようにフォーミュラカーで公道を爆走!
時速300kmでルーキーを追うスタローンなのだった。
かつて尾崎豊は「15の夜」で盗んだバイク走り出し大人の無理解を訴えた。
そしてスタローンは「若者が盗んだ車で走り出したなら、大人も一緒に走ればいいじゃない!」というアンサーを我々に叩きつけたのであった。

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結果、ルーキーを捕獲するのに成功(?)したスタローンは熱い説教をかます!
「 俺にはお前ほどの実力はない。だが信念はある! 例え負けだろうが、信念があれば自分を見失わない!走る喜びを思い出せ!」

普通、ゴリゴリにスピード違反を犯した直後、こんな熱い説教をかませるだろうか?

多分無理だ!
まさにスタローンにしか許せないであろうムーヴ。
ある意味でアカデミー賞級の説教だ(俺の中で)。

本作にはカークラッシュこそあれど、いつものスタローン映画のような殴打!爆発!銃撃!はない。
その代わりと言っては何だがスタローンがアクセル全開でマシンをブッ飛ばし、いつも以上にフルスロットルで男気を発揮するのが本作だ。

こう聞くとスタローン作品でも異色作と思われるかもしれんが、今までの主演作品で一貫して模写している「挫折を味わってこそ、男は輝く」というテーマがブレずに描かれている。

それが見事に炸裂するのがラストのレースである。
クビか優勝かを懸け、ライバルたちとシノギを削るスタローンとルーキーの師弟コンビ。
いよいよレースも佳境に差し掛かり、スタローンが披露する鼻歌シーンは本作でも思わず二度見してまう屈指の名シーンだ。

それに呼応するかのように何故かマシンも加速!
「え!?何で!?」という思いが一瞬頭をよぎるが、まあ、見てるコチラも納得するしかない!!
周りも「鼻歌だ!」と絶妙なリアクションをする中、スタローンは手加減なしでアクセル全開!
ルーキーに「ついてこれるか?」と煽り、更にはマリオカートのレインボーステージばりに掟破りのショートカットを敢行!
おかげさまでタイヤがバーストしているにも関わらずスピンしながらゴールを果たすのであった!

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まさに掟破りにも程がある荒技コンボだ。
結果、観客を沸かせたものの、優勝を逃したスタローン。
チームのオーナー=バート・レイノルズから「残念だったな」と声をかけられるも「勝ったさ!ありがとう!」と爽やかに告げるスタローンなのであった。
確かにレースには負けたであろうが、自分に勝ったスタローンの姿は「他人が言う勝ち負けがどれほどのもんじゃい!」と思わせてくれる。

どう周りに評価されるかが是とされる昨今。
他人の目を気にして自分を押し殺してしまう経験が俺含めあるんじゃなかろうか。
それこそ映画で言えば「アカデミー受賞しているなら傑作に違いない」と、顔も知らない大多数の評価だけを100%妄信してしまいがちだ。
それはそれで映画を観るキッカケとして決して間違っていないでしょう。
ていうかオマエもスタローンを妄信しているじゃねえか!と言われれば俺も黙るしかない。

だとしても、「俺には俺のオスカーがある!」というスタローンの姿勢から学ぶことは多いのではないだろうか。

今から19年前の映画だが全く色褪せてない本作。正直、何が悪かったのかズバリわからねえ。
もしかしたらスタローンがアクセルを全開にし過ぎたおかげで時代が追いついてなかったのかもしれん。

だが、アカデミーにもノミネートされず、ましてやラジー賞を総ナメしたものの「周りがどう思うかじゃなく、自分を貫いたかどうか」という本作の熱いスタローンメッセージは心の中のエンジンに火をつけてくれますよ。

文・DIEsuke(@eroerorocknroll)/ステイサムの悩み相談bot狂犬映画ライター・映画タッグ:ビーパワーハードボイルド

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