殴る方が話が早い 「7割暴力・3割推理」で殺人鬼を追い詰める デリヘル店長vsサイコパス『チェイサー』

年に一回はサイコ野郎をブン殴る映画が観たくなる!

殴られるサイコ野郎がヘラヘラと笑ってくれていたら更に最高だ!
そんな方にオススメしたいのが韓国映画『チェイサー』。

元刑事のデリヘル店長。
風俗嬢をターゲットにした連続殺人鬼。
そんな二人がバチバチにしのぎを削る本作。
裏社会のアウトローvsサイコパスというのが実に嬉しい組み合わせだ。
いわば追うのも鬼!追われるのも鬼!
鬼しかいない鬼ごっこの様相を呈している。

Klockworx VOD/YouTube

容赦なしの展開は激辛!
予定調和なんてもんはない。
話が進むにつれ絶望という名の闇が濃くなっていく。
観客をドン引きさせるのを恐れていない作品である。

元刑事のデリヘル店長ジュンホを演じるのがキム・ユンソク。
消えた女たちの行方を追う為、基本的に『殴るほうが話が早い』と即断即決。

劇中、主に犯人や証人を含めシバキ倒す、ストリートスタイルの捜査を披露!
特にパイプ椅子の正しい使い方は必見だ。 まさに1人だけの殴る大捜査線。

方法はどうかと思うが、7割暴力・3割推理で徐々に殺人鬼を追い詰めていく。
それなりに現役の頃はデカとして有能だったのが伺えるが、いかんせん今は女を食い物にするデリヘルの店長だ。
正義の味方とは到底いえないヤサグレ感がジュンホにはある。
おかげさまで話が進むにつれバイオレンス捜査もヒートアップ。

「いくらなんでも殴りすぎだろ!」と古巣である警察からストップが入るも、かつての同僚すら殴り倒し、たった一人で捜査を続行するのだから、まさに追跡の鬼としかいいようがない。

こう聞くと頭からシッポまで100%粗暴で自分勝手な男なのかといえば、案外そうでもない。
のっけから駐禁を取られてボヤく、売上不振で詰められる、ジュンホの携帯が『ゴミ』で登録されている、厄介客に制裁を加えると思いきや金で速攻解決…等々、いまいち冴えないのだった。
やっていることは間違いなくロクデナシなのだが、どうにも憎めない人間臭さがある。

特に注目したいのが、そんなジュンホの人間臭さがもたらす追跡する動機の変化だ。
最初こそ女たちに払った契約金という己の損得勘定のみで動いていたが、監禁され、まだ生きていると聞かされたミジンの娘と行動を共にする羽目に陥ってしまうジュンホ。
ぶっきら棒に付き合うものの、いつしか感情を突き動かされ、母の帰りを待つ娘の為にミジンの行方をなりふり構わず追っていくのであった。

例え周りから、「どうせ殺されてるよ!」と言われようが「あいつが死ぬわけねーだろうが!」と吠え、追跡の手を緩めないジュンホの姿は、どこか『刑事物語2~りんごの歌~』の武田鉄矢を思わせてくれる。

冷静に考えれば中年のオッサンが息を切らせながら汗だくで走りまくっているだけなのかもしれんが、ミジンの生存を信じるからこそ終盤に見せるジュンホの奔走は心を打つ。

誰からも期待されていない野郎が頼まれもしないのに黙って連続殺人犯を追う、この構図。口で正義を振りかざさないだけに実にグッと来てしまう。まあ拳は思いっきり振りかざしてるとしてもだ!

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一方、見てるコチラをドン引きさせてくれる殺人鬼ヨンミンを演じるのがハ・ジョンウ。  
主人公であれ脇役であれ、パンイチのサイコ野郎が出る映画に駄作はないと思っているのだが、本作も御多分に漏れずだ。
例え殴られようが蹴られようが、他人を舐め切った態度を崩さない。
「好きなことで生きていく」とでも言わんばかりに即断即殺!
自らの本能にのみに忠実な殺りたい放題の鬼畜ぶりを披露!
見た目はトッぽい兄ちゃんだが、息をするように老若男女問わず平然と人殺しを行っていく、この大胆さに度肝を抜かれて頂きたい。
だが、大胆不敵ぶりは殺しだけで留まらない。
一度は警察にしょっぴかれるも「あ、はい。殺りました。」とアッサリ殺人を自白。
更には9人殺害という常識をフライングした数字に「え?」と二度見する署の面々であった。

とはいえ自白だけで物的証拠はない。
「いや、クロだろ!どう考えても!」と誰もが思う中、いけしゃあしゃあと釈放されてしまうヨンミンなのだった。
韓国映画お約束といえる警察のアバウトさが、結果的に彼の無軌道な凶行に拍車をかけてしまう。この皮肉な展開に「そんな…」と言葉を失ってしまうだろう。

…とまあ、最初のあらすじだけ見ると痛快丸かじりに思えるが、ラストはコチラの胸に何とも言えない寂寥感を残してくれるのが本作だ。
実際に韓国であった連続殺人事件から着想を得たらしいが、その数、何と20人。劇中のように別件で逮捕されたものの、2日後に釈放された事実にも戦慄してしまう。

本作の監督はナ・ホンジン。他にも「哀しき獣」「哭声~コクソン~」など嫌がらせみたいな展開に定評のある監督さんです。
「哀しき獣」に関しては立場や状況は違うものの、同じキャストで追うもの・追われるものを疾走感満点で描いているので、こちらも暇があるなら是非チェックして欲しい。

Klockworx VOD/YouTube

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ともあれ本作には猟奇的な模写が盛りだくさん!の映画なので、中には目を背けたくなる人もいるだろうが、何も心が温かくなったり泣くだけが感動体験ではない。不条理と理不尽な展開に感情を揺さぶられるのも、ある意味で立派な感動体験であろう。
口当たりばかり良いもんだけを食うのも悪くはないが、ふとケツが痛くなるのを覚悟で辛いもんも食べたくなるもんです。

それは映画も同じじゃなかろうか。

最近だと「パラサイト~半地下の家族~」がアカデミー賞を多数受賞したのが記憶に新しい韓国映画だが、本作全体に充満する野蛮さ、緊張感、疾走感、何よりスパイシーな展開は負けずとも劣らない。

公開当時、ディカプリオが本作のリメイク権を買って話題になり(その後すっかりド忘れされたものの)韓国映画の勢いをハリウッドに伝えた意味でも無縁じゃないであろう必見の映画ですよ。

文・DIEsuke(@eroerorocknroll)/ステイサムの悩み相談bot狂犬映画ライター・映画タッグ:ビーパワーハードボイルド

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