“殺人マシーンだって人間だもの” 人が死ぬ橋田寿賀子ドラマ『AVA/エヴァ』

皆さん、公開されましたね。シンエヴァンゲリオンが。

各々エヴァにさよならした人もいるかもしれんが、余韻が冷めやらない内に新しいエヴァがこんにちわする!
それが現在公開中のジェシカ・チャスティンが汎用人型決戦兵器と化す映画、『AVA/エヴァ』だ!

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ストリートで札付きのワルとしてブイブイ言わせていたエヴァ(ジェシカ・チャステイン)。そんな彼女も今では国家機関の立派な人型決戦兵器として圧倒的成長。各国の要人を始末する裏稼業をこなしていた。

…しかし、エヴァも人の子である。
いつしかトップダウンで指示される仕事へ疑問を抱き始めていた。
「あんた何やったのよ?つきましては何故私が殺すか理由を教えてくれ。」とターゲットに質問を繰り出し始めるエヴァであったが、まあ大体相手が答えないか、そもそも知らんので答えは得られない。

何せ殺伐とした仕事の連続なので無理もないが、人としての感情は命取りと考える組織の面々。
果たして、その予想は的中した。
お構いなしに止めろと言われていたエヴァ問答を再び現場で繰り出した結果、とんでもない修羅場に発展してしまうのだった。

だが、彼女は百戦錬磨の人型決戦兵器だ。
ドレスに裸足という殺意多めのシンデレラと化し、近接格闘を披露!
何とか身バレせずに現場から逃亡を果たす。
組織内の誰かにチクられた可能性を疑うエヴァであったが、師匠であるデューク(ジョン・マルコビッチ)から有給を取るよう促されるのであった。

…というわけで、有給消化で実家に帰るのを決意するエヴァ。
旧交を温めたいところであったが、人に話せない裏稼業のおかげで実家との付き合いも疎遠だったのもあり、何とも言えない居心地の無さを感じてしまう。
更に輪をかけて妹が元カレ(コモン)と付き合っているなど実にややこしい事情を抱えていた。

実に気マズい帰省を果たし、家族との微妙な距離感はそのままのエヴァ。
一方、もう一つの家族である組織も「これ以上仕事で不安要素があるなら、いっそ消そう!」と早すぎる判断を下していた。
帰省中のタイミングを狙い、エヴァを消すべく刺客を差し向ける組織。
持ち前の殺人スキルで危機を察知、なんとか刺客を退けるエヴァであったが、組織が自らを消そうとしている疑惑が確信へと変わるのであった。

思い当たる相手は、組織の角刈りタートルネックの男サイモン(コリン・ファレル)!
こうして『組織』と『身内』という違った意味での二つの家族にケジメをつけるべく、たった一人でエヴァは反旗を翻すのであった。

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「殺人マシーンだって人間だもの」という、相田みつを精神を描く本作。
殺人裏稼業を取り扱うジャンルだと生活感がゼロな場合が多いが、本作は違う。暗殺者映画というジャンルながら、実家との付き合い方を教えてくれる異色作だ。まさに人が死ぬ橋田寿賀子ドラマの様相を呈している。

俺も帰省するたび、久しぶり過ぎて身内との距離を感じるのがザラだが、人に言えない仕事をしている方にはビシバシ響く内容だろう。日本のエヴァも超雑に言えば周りの人間との付き合い方を一貫して描いていたが、それは本作も同様だ。

結果、色々と病んじゃうエヴァであったが、そこら辺の展開もシンジ君と共通するもんがある。
とはいえ、こちらは殺人マシーンなので殺ることは殺る!
一人人類補完計画で迫りくる刺客を消しまくっていくのであった。
いずれにせよ殺人マシーンが主人公の映画でありながら、生活感あふれるパーソナルな部分が描かれる作品は珍しい。

主演はアカデミーやゴールデングローブノミネートの実績を持つ稀代の演技派、ジェシカ・チャステイン。
『ゼロ・ダーク・サーティ』『モリーズ・ゲーム』『女神の見えざる手』など、割と現場を管理するホワイトカラーな役柄が多かったが、本作ではゴリゴリの現場の人間としてフラストレーションを晴らすかの如く大暴れ!
まさかミスフィッツのバンドTシャツを着てヤサグレたジェシカ・チャスティンを観れるとは思わなかった。
戦闘力はアホほど高いが、意外とメンタルはブレている複雑な主人公像に説得力を持たせている。

そんな彼女と相対するのが角刈りタートルネックの使徒と化したコリン・ファレルだ。
組織の人間ながら、物量で押すのではなく最終的にはタイマンを挑んでくるなど悪役としては満点!暴走モードのエヴァと角刈りタートルネック使徒の血を地で争うバトルは必見だ。

違うとは思うが、どこかビジュアルおよびタイマン精神に『太陽を盗んだ男』の菅原文太リスペクトを勝手に感じてしまう。
そしてマジどうでもよいかもしれんが、タートルネック率が9割という驚異の打率なのもチェックして欲しい。

更にエヴァの母親として、超絶傑作『ロング・キス・グッドナイト』で女殺人マシーンを演じたジーナ・デイヴィスも顔を出しているのも見逃せない。
新世代の女殺人マシーン映画で彼女が母親役というのが、何だか感慨深くなってしまう。
思えば『ロング・キス・グッドナイト』で娘に「生きるのは痛みに耐えることよ」と説教していたが、奇しくも本作にて娘であるエヴァもフィジカルもメンタルも痛みに耐えまくってサバイヴしている。

古くは『ニキータ』、最近だと『ソルト』『アトミック・ブロンド』『ANNA/アナ』などなど…タフな女仕事人を描いた映画を挙げると暇がない。
そのジャンルに変化球を投じている本作。
男だろうが女だろうが関係ない。
主人公エヴァの生き様とケジメの付け方を実生活でも見習いたくなる映画ですよ。

文・DIEsuke(@eroerorocknroll)/ステイサムの悩み相談bot狂犬映画ライター・映画タッグ:ビーパワーハードボイルド

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