アディダスは “悲劇の天才”デリック・ローズを10年間信じ続けた

NBAにキラ星のごとく存在するスーパースターのなかでも、自分の名前を冠したシグネチャーシューズを持てる選手はわずか一握り。デトロイト・ピストンズでプレイするデリック・ローズは、その数少ない選手の1人である。しかも、スポンサーと複数年契約を結び、シリーズでシグネチャーシューズを提供してもらえる選手はさらに限られる。そんな厳しい世界において、ローズは実にシグネチャーモデルを14作も発表するという、ものすごい実績を持つ。

ちなみに、NBAの歴史において連続してシグネチャーモデルを発売しているのはわずか8選手。マイケル・ジョーダン、コービー・ブライアント、レブロン・ジェームズ、カーメロ・アンソニー、クリス・ポール、カイリー・アービング、ケビン・デュラント、そしてデリック・ローズのみである。

普段は寡黙なイメージのあるデリック・ローズが、自身のシグネチャーシューズについてのアツい想いを語った。

ESPN/YouTube

メンフィス大学在学中からスターの頭角を現していたローズは、在学中にすでにナイキとアディダスの大手2社とスポンサードの交渉を開始。そしてより多くのオプションや好条件を出してくれたアディダスと現役生涯契約を2.6億ドルで結んだそうだ。そして誕生するのが『ADIZERO ROSE』や『D ROSE』といったシグネチャーシューズである。

『ADIZERO ROSE 1』
2010年、デリックのNBA3シーズン目に発表された。シカゴ・ブルズ期待の星だったデリックはさらなる活躍を期待され、彼自身ももっと完璧に近づいてブルズのOBであるマイケル・ジョーダンのようにならなければと思っていた時期だそうだ。初めてシグネチャーシューズを履いてコートに立った感想を聞かれると「さらなる自信を得られた。誰にでも与えられるものではないから信じられなかったけど、とにかく嬉しかった」と語る。

『ADIZERO ROSE 1.5』
2011年のオールスターゲームで初めてお披露目した。「大勢のスター選手の前で、シグネチャーシューズを履けるなんて感激だった」と当時の感動を振り返った。

『ADIZERO ROSE 2』
「ファッション性もかねそなえたシューズにしたかった。コートの外でも履けるシューズにね。だってみんながあれもこれも買えるわけではないから」

『ADIZERO ROSE 2.5』
2012年のオールスターゲームのタイミングで発表。ブルズとの契約延長がかかる大事な時期だったそうだ。「前作より断然軽くて、より速く走れるんだ。コートでのパフォーマンスを重視して、クッション性、安定感、通気性など、とにかく機能性を重視した」

『D ROSE 3』
デリックにとって特別なシューズ。アディダスが主催した同モデルのメディア発表会にはローズの母親や家族も同席していたという。「俺はとにかくカメラや人前に出るのが苦手でね……。心配した家族が会場に駆けつけて励ましてくれたんだ。試合でもないのにね」なお、『D ROSE 3』には母の名前“ブレンダ”が刻印され、赤いカラーリングも母親へのオマージュなのだという。「母は決してスポーツ好きではなかったけど、俺の試合をいつも見に来てくれるんだ。ほかの兄弟はそれに嫉妬しているよ。とにかく母にはとても感謝している。自分も親になって、よりありがたみを感じるようになった」

『D ROSE 3.5』『D ROSE 4』
蛍光グリーンのシューズをはじめ、個性的なデザインを発表した時期。「この頃からちょっとクレイジーなデザインになってくるんだよね(笑)」「アディダスのチームが、俺には二面性があるって言うんだ。普段はおとなしくて静かだけど、いざコートに立つとまるで暗殺者のように攻撃的だとね。それをシューズにも反映しようとしたのさ」

『D ROSE 5 BOOST』『D ROSE 6 BOOST』
アディダスの新素材「BOOST(ブースト)」を搭載したシリーズ。「“Everybody eats”っていう、俺が信じてるスローガンを細部にしたためてるんだ。みんな平等、上も下もない。だからみんなで支え合わなくてはいけない、って意味が込められてる」。一方で「ブーストのせいでほかのシューズより重いんだ」と、このモデルの難点も指摘している。

『D ROSE 7』
ブルズからニューヨーク・ニックスに移籍した2016年。左膝半月板断裂という大ケガを負い不振で終わってしまった年にもかかわらず発表されたモデル。デリック本人はほとんど使用する機会がなく、おそらく苦い思い出の詰まったモデルだと思われるが、「今でもオクラホマシティ・サンダーのスティーブン・アダムスをはじめ多くの選手が愛用してくれている」と誇らしげに語っている。

『D ROSE 8』
クリーブランド・キャバリアーズで過ごした2017-18シーズン中に発表された、シンプルさを追求したシューズ。「バスケットボールに限らず、自分自身と深く向き合っていた時期。自分は何者で、どんなタイプのプレイヤーなのかってことをずっと考えていた。とにかく我慢のシーズン。暗闇に引きずり込まれないよう、そして自分自身を保っていられるよう必死に耐えた」と、トレード・契約問題で不本意なシーズンを過ごすなかで発売されたモデルだったと振り返った。

『D ROSE 9』
2018年、ケガや契約問題で不遇の数年間を過ごしたデリックがいよいよ復活。ミネソタ・ティンバーウルブズに移籍しキャリアハイの50得点を上げたハロウィンの日は、もちろん『D ROSE 9』を履いていた。「生涯最高のハロウィンになった。最高の夜だった」と、その時の喜びを隠さない。いつもその最高の瞬間と感動を思い出させてくれるシューズだそうだ。

『D ROSE 10』
そして最新モデル。感動の復活後に愛用している相棒だ。「シンプルなローカットにしたかった。ソールの衝撃吸収にこだわって安定性を高めた」

NBA/YouTube

最後にこれまでの競技人生を振り返り、「とても恵まれていた。アディダスとの出会いが人生とキャリアのすべてを変えてくれた。こんなにケガに悩まされるとは想像していなかったけど、自分を信じ続けることで復活できた」と感慨深そうに語っている。大ケガからの奇跡的な復活を遂げ感動を呼んだデリック。

その後の快進撃の裏には、ただならぬ努力と我慢の日々があったのだろう。彼の人となりもさることながら、ケガでなかなか活躍できない時期でもシグネチャーモデルを毎年発表し続けたアディダスも、愛のある会社といえるだろう。今後、新作のシグネチャーモデルも発売される予定とのこと。デリックの活躍を見守るとともに発売を期待して待ちたい。

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