ドニー・イェンがドラゴンの意思を継ぐのならば、スコット・アドキンスはヴァン・ダムの意思を受け継ぐ

皆さん叩いてますか?

何を?と言われたら、決まってるじゃないですか。

木人ですよ!

…という訳で、拳の一代記・最終章である『イップ・マン 完結』が遂に7月3日(金)に公開された。

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ブルース・リーの師匠にして 詠春拳の達人として知られるイップ・マン。そんな彼が動乱の時代の中、自らの『武』を貫く姿を描いてきたシリーズの最終作とあっては長年追いかけてきたファンとしては感慨深い作品なのではないだろうか。

これまで本作含め4本、更には作中人物チョン・ティンチの外伝『マスターZ』まで製作され、ユニバース展開。

ヨソでも主演は違えど数多のイップマンを描いた作品が雨後のタケノコのように発表されるなど、一大ムーブメントを築くキッカケとなった。

劇中の言葉を借りるとするなら『詠春正宗』なのが本作である。

主演はイケイケの香港俳優、御存じ『ドニーさん』ことドニー・イェン。屈指のブルース・リー大好きっ子として知られ、自らの作品でもリーっぽいムーブをチョイチョイ挟んでいた彼だったが、本作ではリーを飛び越えて彼の師匠役イップ・マンを好演!
一作目から数え、かれこれ10年以上も演じる当たり役となった。

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それまでのドニーさん主演作品と言えば良くも悪くもギラギラした俺様節がつきものであったが、本シリーズでは落ち着いた演技を披露。

「こういう演技も出来るのか!」と長年追っていたドニーファンを感心させたが、やはり功夫シーンの凄みはドニーさん印。

立ち技のみならず、集団戦、グラウンドにも対応する実戦型の詠春拳を本作にて披露!ある時は芋の為、ある時はサモハンの為、ある時は愛する奥様の為…
日本のカラテ馬鹿軍人、イギリスのボクシングモンスター、 同門である詠春拳の使い手、不動産屋のタイソン(!?)…と、富や名声の為ではなく、強敵相手に周囲の人々の思いを乗せ、拳を振るってきた。

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そんな功夫大河ドラマの様相を呈していたシリーズも本作で遂に完結を迎える。

前作にて奥さんとの切ない別れを迎えたイップマン。今まで通り武術を教えつつ、息子と二人暮らしの日々を送っていた。…とはいえ息子は反抗期真っただ中なおかげで、ぎこちない親子関係なイップマンであったが、ある日ガンの宣告を受けてしまう。
自らの天命を悟るイップマンであったが、同じタイミングで弟子である李小龍(ブルース・リー)からアメリカへの招待を受ける。最初は行く気ゼロのイップマンであったが息子の将来を思い、彼の転校先を探すために渡米を決意!
早速海を渡るイップマンであったが、自由の国アメリカにおいてもアジア人が思いっきり舐められている現実を思い知らされてしまうのだった。
やがて、アメリカ軍所属の空手ガチ勢がチャイナタウンへ殴り込み!功夫撲滅の為、人権をガン無視した乱暴狼藉の限りを尽くすキャンペーンを開始する。
だが、これを黙って見過ごしては武術家ではない。アジアの誇りを守る為、イップマンは異国の地で自らの拳を解き放つのであった。

今までシリーズにてチョイチョイ顔を出していたブルース・リーだが、本作では満を持してジークンドーを披露!戦闘の際の独特のステップ、カウンターの際に放つ裏拳、ワンインチパンチなどの技が画面に炸裂する。
トドメに『ドラゴンへの道』ばりに路地裏でヌンチャクを振り回すなど、完結編なのも相まってかリー・ファンへのサービス精神も全開!

かつて少林サッカーのGK役だったチャン・コックワンが演じているのだが、本作でも「もう本人じゃん!」と言いたくなるリーへの見事なイタコっぷりは必見だ。

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そしてシリーズを締めくくる最終決戦の相手は、軍隊格闘技の猛者スコット・アドキンス!
本作では口も出すだけならまだしも、ついでに手も足も出る鬼軍曹バートンを熱演。見た目が思いっきりフルメタルジャケットのハートマン軍曹を思わせるが、微笑みデブに黙って撃ち殺されるようなキャラでは当然ない。
クレームをつけるべくチャイナタウンのお偉方が集まる集会所にジープで一人乗り付けたかと思うと、到着即回し蹴り!一人治外法権といわんばかりの暴れはっちゃくぶりを披露してくれる。

更にパワハラ・暴言・差別丸出しという、もう何処を切っても言い訳出来ないヒールっぷりが実に素晴らしい。

ファイトスタイルは空手をベースにした軍隊格闘技なのだが、「誰が教えたんだ?」という多彩過ぎる蹴り技で完膚なきまでにタイマンで相手を叩きのめす。それだけに留まらず倒れた相手を罵倒、躊躇なくサッカーボールキックを放つなどダーティ極まりない。

もうタイマンを見せつける為に深夜に叩き起こされた軍の部下たちもドン引きするのだが、ダメ押しのように「おい、拍手はどうした?」と煽るアドキンスなのだった。

まさにシリーズ最強にして最凶の敵だ。相手にとって不足はない。

おかげさまで人望はゼロに等しいキャラクターなのだが、実はこの憎らしい彼の挙動こそが俺を泣かせてくれた。

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イップマンとの最終決戦時、互いに満身創痍になりつつカウンター気味にソバットを放つのだが、その際に見せる表情が黄金期のヴァン・ダムのソレを彷彿とさせ、「おお!!」と思わず声が出てしまった。

時間としては数秒だが、個人的に必見のシーンだ。

以前からヴァン・ダムとの共演も多く『次世代ヴァン・ダム』と言われてきたアドキンス。

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子供の頃から部屋にヴァン・ダムのポスターやらブロマイドを貼ってきた、いわばヴァンダム・ガチ勢である。

そんな彼が本作にて一瞬だけ見せた、ヴァン・ダムリスペクト。

ドニーさんがドラゴンの意思を継いでいるとするならば、アドキンスはヴァン・ダムの意思を受け継いでいると言っても過言ではない。

そっちがドラゴンなら、こっちはヴァン・ダムだ!というアドキンスの心意気を感じた(勝手に)。

ともあれ外伝作品「マスターZ」でもマックス・チャン扮するチョンティンチも更生していたので、可能であればアドキンス扮するバートンにも「マスターB(バートン)」を製作して更生する機会を与えて欲しい。

本作にて老い先短い予感を感じさせるイップマンだが、それはそれとして技のキレは全く衰え知らず。

太極拳の大家とのアグレッシブなお茶の勧め合いから始まり、流麗に相手の攻撃をさばき、怒涛のような連打を繰り出すなど技が冴えまくっている。

劇中の「不正に立ち向かう為に武術を学んだ」というセリフからも分かる通り、本作でも過去作同様、拳で世の不条理に立ち向かっていく。

…とはいえ、親としては百点とは言えず、異国の地にて太極拳の大家と娘の親子関係を見て自らの父としての立場を見直すなど、実に人間臭い。

そしてラスト、次の世代の為に木人を打つイップマンと共にシリーズのコラージュ映像が流され、今までにイップマンが交流した人々が映し出される。

自分だけの為ではなく、あくまで虐げられた者の為に詠春拳を極めたイップマン。最初から最後まで苦しむ誰かの為に戦い続けてきたからこそ、負けなしだったのが伺える実に感慨深いシーンだ。

なかなか弱い人間が生きづらい今だからこそ、イップマンの精神を見ているコチラも少しだけでも継ぎたいものです。

とりあえず形から入る俺なので、鑑賞直後、木人を買いたくなったのは言うまでもない。もちろん給付金でな!

いずれにせよイップマン最後の戦い、見逃す手はないですよ!

文・DIEsuke(@eroerorocknroll)/ステイサムの悩み相談bot狂犬映画ライター・映画タッグ:ビーパワーハードボイルド

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