なぜ、最終話はラブソングだったのか 『ブレイキング・バッド』使用曲リスト

しがない化学教師、ウォルター・ホワイトがある日肺癌宣告をされ、家族にお金を残すため知識をフル稼働して高純度のドラッグを製造し麻薬ビジネスに手を染める。そんなウォルター・ホワイトが、人殺しさえもいとわぬような裏社会の住人へと変貌していく姿を描いた大ヒットドラマ『ブレイキング・バッド』(2008年〜2013年)。秀逸なストーリーはもちろんのこと、魅力あふれる楽曲が挿入歌として多数使用されていることでも知られている。ドラマのなかで使用されているイカした音楽をいくつか紹介したいと思う。

Knife Party「Bonfire」

Knife Party/YouTube

まず最初に紹介するのは、【シーズン5 エピソード4】で使用されたダブステップユニット、Knife Partyの「Bonfire」。
この楽曲は、ウォルターの妻であるスカイラーが子供たちを夫から遠ざけようと思うなかで、当のウォルターは息子とともにノリノリで新車を買って帰宅するというシーンで使われている。
ちなみにKnife Partyの人気曲「Internet Friends」は、Facebookでブロックされた女がブロックした男をボコりに行くというなかなか強烈な作品。「Bonfire」はもちろんのこと、それを歌うKnife Partyが、『ブレイキング・バッド』にマッチしているといえるかもしれない。

Danger Mouse&Daniele Luppi「Black(feat.Norah Jones)」

Danger Mouse/YouTube

続いてご紹介するのは、【シーズン4】で登場するDanger Mouse&Daniele Luppiの「Black(feat.Norah Jones)」。
ウォルターの相棒であるジェシー・ピンクマンの交際相手、アンドレアの息子ブロックがスズランの毒を盛られて病院送りにされるときに使われた楽曲だ。独特な哀愁と絶望感を感じさせる歌詞とメロディが、同エピソードにドンピシャであった。

America「Horse with no Name」

America/YouTube

この楽曲は【シーズン3 エピソード2】で登場。
ウォルターが妻のスカイラーに離婚を迫られたり、麻薬カルテルの元幹部ヘクターが殺し屋にウォルターの名を告げるなど、なにやら穏やかでない展開となったが、この曲はそうした状況のなかで、ウォルターが車で荒野を走りながら、流れる曲にあわせて口ずさんでいたもの。しかしそのツラ構えはかつての平凡な教師ではなく、なかなかの悪人ヅラになっていたのが実に印象的だった。

Apollo Sunshine「We Are Born When We Die」

Apollo Sunshine/YouTube

【シーズン4 エピソード12】で使用されているのがこの楽曲。
ジェシーの恋人、アンドレアの息子ブロックが毒を盛られて病院送りとなり、その犯人がウォルターではないかとジェシーが疑いの目を向けることとなったこの回で同曲が流れるのは、カルテルに命を狙われていることにされた義弟ハンクの家のプールサイドにウォルターが座るシーンで流れている。どこか禍々しい雰囲気が漂うこの楽曲は、その後に起きる不吉な出来事を暗示しているかのようで実に興味深い。

Alex Ebert「Truth」

Alex Ebert/YouTube

こちらは、ビジネスパートナーとして比較的良好な関係にあった南西部の麻薬市場を牛耳るマフィアのボスであるガスが、手下のゲイルを失ったことで激怒し、ウォルターとジェシーに麻薬密造を続行するよう迫る【シーズン4のエピソード1】で使用された。
物語終盤、エピソード象徴するような印象的なシーンで流れるため、多くの視聴者の心に刻まれることとなったといえるだろう。

Apparat「Goodbye」

Apparat/YouTube

【シーズン4 エピソード13】で登場するのがこの楽曲。
このエピソードでは、ガスとの決別を決めたウォルター&ジェシーが身体の不自由な元カルテルの老人ヘクターをそそのかし、彼の暮らす老人ホームにガスを誘い出して爆殺しようと画策するのだが、この楽曲はそんな計画があるとは知らずにガスが老人ホームへと向かうシーンで流れる。その後に彼を待ち受けている運命を暗示しているかのような同曲だけに、そのハマリ度はかなりのものといえそうだ。

Rodrigo Y Gabriela「Tamacun」

Rodrigo y Gabriela/YouTube

ファンには「ジェシーの登場曲」として知られる同曲は、記念すべき【シーズン1 エピソード1】で使用されている。
同エピソードでは、主人公であるウォルターが麻薬密造を思い立つ様子が描かれているが、同曲が流れるのはかつての教え子で、麻薬の密売で生計を立てているジェシーが、突如として襲撃してきたDEA(アメリカ麻薬取締局)の追っ手から逃れる場面。のちにウォルターと強力なタッグを組むこととなる彼の登場シーンであり、同時にウォルターとの再会になった場面でもあるだけに、多くのファンにとっては実に印象深いものであるといえるだろう。
また、どこかコミカルで陽気で明るい曲調が、憎めないジェシーの人柄を象徴しているともいえる。

Tommy James&The Shondells「Crystal Blue Persuasion」

Tommy James/YouTube

この楽曲は【シーズン5 エピソード8】で使用された。
同エピソードでは、ウォルターがジェシーに代わる新たな助手となったトッドに指示して、刑務所に服役するガスの手下たちの暗殺を狙う様子が描かれているが、元はしがない教師であったにもかかわらず、凶行を重ねるうちにマフィア的な動きを平然と行うようになったウォルターの変貌ぶりと、同曲の明るい曲調が絶妙なコントラストを生み出すこととなった。

TV On The Radio「DLZ」

tvontheradiovideos/YouTube

ウォルターの言動に少しずつ狂気が表れはじめる【シーズン2 エピソード5】で登場した楽曲。
彼がホームセンターの駐車場で「私のシマから出ていけ!」と凄むシーンで流れるのがこの曲なのだが、この頃はウォルターも持病のガンが好転したことで裏稼業から足を洗うことを考えはじめ、相棒であるジェシーも転がり込んだアパートの管理人ジェーンと恋仲になるなど、明るい兆しも見えていた時期。今にして思えば、ここで引き返してさえいれば、その後の悲劇は起きずに終わったと考えられるが、そうはならないのが同ドラマの魅力。ジェシー&ウォルターにとって、人生の分岐点ともいうべき時期に流れた曲であるだけに印象深い。

Badfinger「Baby Blue」

thesmallaxe5/YouTube

そして最終話「Felina(フェリーナ)」で流れる楽曲。
この曲は、イギリスのロックバンド・Badfinger(バッドフィンガー)が1972年リリースしたアルバム「Straight Up」に収録されているラブソング。リリースから40年以上も経った『ブレイキング・バッド』最終話放送(2013年9月29日)直後に大きな反響を呼び、iTunesやSpotifyでアクセスが殺到したという。

『ブレイキング・バッド』の製作総指揮を務めたヴィンス・ギリガンは、最後にこのラブソングを選んだ理由について、この曲で歌われている“愛”は、ウォルターの“ブルーメスへの愛”を表現していると話している。

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『ブレイキング・バッド』の続編を描くファン待望の映画『エルカミーノ: ブレイキング・バッド THE MOVIE』は、2019年10月11日(金)よりNetflixにて独占配信。

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