誰も正体を知らない“天才” 謎だらけのビットコイン創造主

映画『ソーシャル・ネットワーク』の原作として知られる『facebook 世界最大のSNSでビル・ゲイツに迫る男』の著者ベン・メズリック。彼の待望の新著『世紀の大博打 仮想通貨に賭けた怪人たち』(文藝春秋)では、『ソーシャル・ネットワーク』のストーリーとはかなり違った視点を与えることに成功している。

ビットコインは仮想ゆえトランスファー(輸送)、決済にコストがかからず、現物がないので時間を必要としない。だがそれ以上に、仮想通貨には銀行など取引のための機関が必要なく、ユーザー同士で直接トランザクション(取引)が行える点(Peer To Peer)、そして権威/権力による監視が必要ない、という点が「革命的」だと言われる理由だ。

これらを可能にするのが、2008年にサトシ・ナカモトが発明したとされる“ブロックチェーン”という技術である。ブロックチェーンは平たくいうと暗号技術のことだが、デジタル通貨の取引を行う際の暗号それ自体が“台帳”であり、その記録は複数のコンピューターに分散されるので、中央集権的な管理が必要なく、世界中の誰にとっても平等な通貨となりうる。つまり共有、管理、監視がオープンで、それゆえ改ざんが不可能。例えばデジタル通貨なら簡単に起こりそうな(仕組めそうな)二重取引も回避できるシステムだ。そのため「暗号通貨」とも呼ばれている。

詳しくない者からすれば謎めいているし、ほとんど夢というか、SFの世界にすら思えるが、ブロックチェーンは“インターネット以来の革命”とも言われ、セキュリティの堅牢さ、汎用性など、とにかく可能性をもった技術なのである。言うまでもなくセキュリティは最重要事項だ。途中、ウィンクルボス兄弟が“妄想狂”的なまでにセキュリティを追求するエピソードがあるが、『ミッション・インポッシブル』を『テネット』のように“インバージョン”させて一気見するかのような描写は、今作の読みどころの1つだ。

ところで発案者のサトシ・ナカモトなる人物は一体何者なのだろうか。実はいまだに実態が不明な存在なのだそう。個人なのか、あるいは集団なのか。学者かハッカー集団か。国籍性別年齢不明で、日本人の名前だが当然偽名だろう。数学、経済学、ハッキングなど多岐に亘るエキスパートであることは間違いなく、本著では“紛れもない天才”と評され、あたかも想像主のように実体なく存在している。

サトシ・ナカモトとは、その正体を誰も知らないビットコインの想像主。それでも実は物語の登場人物の1人で、著者ですら気づいていないだけなのかもしれない。そんなミステリー要素も本著『世紀の大博打 仮想通貨に賭けた怪人たち』の魅力の1つなのだ。

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