“小さな巨人”アレン・アイバーソンは、NBAに新たなカルチャーをもたらした

2022年のオールスターゲームのハーフタイムに、NBA創設75周年を記念した「NBA75周年記念チーム」に選ばれた75人のベストプレイヤーが発表された。NBAはそのレジェンドたちを紹介する『75 Stories』という動画シリーズをYouTubeで配信し、選手たちのハイライトシーンやインタビューをまとめた映像を公開した。その中でも特に人気を集めている動画の一つがアレン・アイバーソンだ。

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NBAに新たなカルチャーをもたらした小さな巨人は、バスケにかける熱い思いを一つ一つのプレイに込めた。ルーキー・オブ・ザ・イヤーに選ばれ一気にスターダムに上り詰め、独自のセンスでバスケの枠を超える世界的なトレンドセッターとなった。身長が182センチしかないのにもかかわらず4度のスコアリングチャンプに輝き、いつしか“The Answer”というニックネームでファンに親しまれた。“The Answer”はサイズを理由にデビュー時に本当にNBAで通用するのか疑問視されたが、それをあっさり払拭したことから生まれた愛称だ。

1996年にアイバーソンをドラフトしたパット・クローチェは「彼のテープを見た時にウォリアーのメンタリティを感じたんだ。戦う男は大好きさ。ステフォン・マーブリーやマーカス・キャンビーも指名候補だったけど、AIのワークアウトは誰よりも迫力があったよ。コートを駆け回る姿、そして会場を沸かせるプレイ。このフランチャイズを改革するのに彼が必要だと確信したんだ」と当時の思い出を話す。

ジョージタウン大学でアイバーソンの監督を務めた名将ジョン・トンプソンは「彼ほど競争心の強い選手はいなかった。みんな彼の得点力に目を向けていたけど、勝利への執念に僕は心を打たれたんだ。試合で40点取ろうと、試合に負けると誰よりも悔しがっていたのがアイバーソンだったよ。その姿にいつも感動していたんだ」とアイバーソンのプレイよりも勝者のメンタリティである闘争心を称えた。

アイバーソンに憧れて背番号3を選んだというドウェイン・ウェイドも彼の魅力を語っている。「僕がNBAに入って初めてのプリシーズンゲームはプエルトリコで76ersと対戦したんだ。ホテルのカジノでアイバーソンを見かけてヤバいほど興奮したよ。試合で一緒にプレイするのがとにかく怖かった。そしてレギュラーシーズンゲームの開幕戦も76ersのホームゲームでアイバーソンと対戦したんだ。ずっと憧れていたアイドルが目の前でプレイしてるんだから興奮したよ。誰も履いてなかったようなスニーカー、派手なタトゥー、ヒップなファッション。彼は僕たちの青春だったんだ。どんな格好をして批判されようと、アイバーソンはそれを試合で払拭させた。同じ背番号を付けていたから、いつも『もっとお前ならできる!』って声をかけてくれたんだ」

素早いドリブルからのカットインやレイアップなど、彼にしか出せない独特のリズムとプレイスタイルが味わえる映像だが、切ない恋愛ソングで一世風靡したR&BグループBOYZ II MENのショーン・ストックマンもインタビューに答えている。「僕の印象にもっとも残っているのは彼がジョーダン率いるブルズと初めて対戦した日さ。みんな待ち侘びていたジョーダンとアイバーソンのマッチアップ。そしてあのクロスオーバーが生まれたんだ。会場は興奮の渦に包まれたよ!」

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2001年のファイナルでアイバーソンと対戦したシャキール・オニールは「レイカーズは無敗優勝の可能性があったんだ。監督のフィル・ジャクソンが俺たちにアイバーソンをダブルチームするか聞いてきたからみんな『そんなことは必要ない』と答えたんだ。ファイナルまで無敗で勝ち上がったんだから、自信があったんだ。そうしたらアイバーソンは攻守で活躍して誰にも止められなかったんだ。オーバータイムで彼らに負けたけど、全勝優勝の夢を絶たれて全員が悔しがったさ」と楽しげに語った。

『75 Stories』アイバーソン編は「大事な試合で本領発揮できないなんて自分に問題がある。試合中に全てを出し切れば、終わった後のロッカールームで鏡に映った自分の姿を見て後悔を感じることなんてまったくないんだ」と雄弁な本人のインタビューも聞ける貴重な映像だ。

底知れぬ身体能力を持っていたアイバーソンは、高校時代アメフトでもスーパースターだった。NBAがまだフィジカルだった時代で活躍できたのも、アメフトで学んだ強い意志と精神力があってこそかもしれない。

「体のサイズでプレイしているんじゃない、俺はハートでプレイしているんだ」と語る彼のような選手が現れることは後にも先にもないだろう。

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