記憶が10分しかもたない、壮絶な騙し合い…ノーラン監督は“時間を操作する”

名作SF映画を世に送り出してきたクリストファー・ノーラン監督による最新作『TENET テネット』が、9月18日に日本公開される。

ワーナー ブラザース 公式チャンネル/YouTube

1970年イギリス生まれのノーラン監督は「ネットのせいでみんな本を読まなくなった」とし、ネット嫌いを公言。フィルムを愛し、CGなどの技術に頼ることを嫌い、大掛かりなセットを組むことでも知られる“アナログ”なフィルムメーカーである。そして“時間”の描き方に特別なこだわりがあり、映画の中で“時間を操作”しては観る人にも大きな衝撃を与えてきた。

新作『TENET テネット』を観る前に、ノーラン監督が手掛けてきた長編作品をおさらいしてみよう。

『フォロウィング』(1998年)

長編デビュー作。作家志望の男が、アイデア探しの為に街で見かけた男を尾行し始めたことから、ある事件に巻き込まれていくというスリラー。フィルム・ノワールの影響を強く受けた白黒映画で、制作費わずか6000ドル(約60万円)という低予算につき、ノーランが監督・脚本・製作・撮影・編集の5役をこなしているが、続く『メメント』や後にアカデミー賞を受賞する『インセプション』にも見られる、“時系列シャッフル”の手法が当時既に取り入れられているのが分かる。

『メメント』(2000年)

ノーラン監督の正真正銘“出世作”にして代表作の1つ。記憶が10分しかもたない男が、妻を殺害した犯人を突き止めようと自身のハンデを克服し、復讐を果たそうとするサスペンス作品。
ストーリーを終わりから始まりへと映し出していく、ノーラン監督独特の“時系列シャッフル”形式で描かれた。その斬新な手法、奇抜なアイデアが口コミで広がり興行的にも批評的にも高く評価され、アカデミー賞においては脚本賞、編集賞にノミネートされた。

『インソムニア』(2002年)

『メメント』で成功を収めた後、アル・パチーノ、ロビン・ウィリアムズ、そしてヒラリー・スワンクという名優たちを得て、同名スリラー映画のリメイク版に挑戦。大幅なキャリアアップを果たしつつ、すでに熟練の演出技巧を発揮して高い評価を得た。
脚本は担当しておらず、またリメイク作品ということで得意の“時系列シャッフル”が用いられた内容ではなかったが、時間をかけてじわじわと登場人物を追い詰めていく演出から、監督としての技量の高さが感じられる1本。

『バットマン ビギンズ』(2005年)

非大衆向け、観客にも頭脳ゲームを求めるような作品で知られていたノーラン監督が、初めて手掛けたエンターテイメント作品。
少年時代のブルース・ウェインが井戸に落ちたと思うと、突然15年以上は経過したであろう時期の刑務所から始まるという冒頭のシーン。その30分間に、深い人間ドラマを時間軸を入れ替えながら描くというノーラン節は健在。この冒頭の30分が効いて、作品全体が単なるヒーロー映画とは別物になっている。

『プレステージ』(2006年)

19世紀イギリスを舞台に、2人のマジシャンの騙し合いを描いたミステリー作品。数々の伏線とバラバラの時系列で語られるストーリーは相変わらず難解ではあるが、当時ノーラン監督の傑作とも言われ評価が高かった。
マジシャン2人が互いの邪魔をしながら最高のマジックを成功させようとするストーリーは、憎悪が行き過ぎた2人の行動によりお互いの不幸を招く結果に…。衝撃的なラストも話題となった。

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